終わりの音と始まりの光
僕はごく普通の中学3年生。
音楽が生き甲斐のただの陰キャだ
今日も部活帰り、アスファルトの地面に雨が波紋を作っていた。どちらかといえば田舎、夏の時期とはいえ辺りに街灯はない、雨雲も相まって暗かった。
そんな蒸した空気に、聞き慣れない音が振動していく
バンッ!
乾いた音が夕方の静寂を切り裂いた。
体の奥が焼けるほど熱い、いや…痛い?
アドレナリンが痛みを少し和らげたのだろうか、少しの間は立てたが意識が一時的に奪われ、次に瞬きをした瞬間には力の入らずに倒れた体の血を雨が必死こいて洗い流していた。
あぁ、自分、撃たれたのか…
でも誰が?海外みたいな銃社会からかけ離れた日本の田舎の道端で?
「嫌だ…死に、たくない…」
これが僕の発した最期の言葉。出血と痛みに耐えきれない体は体温を失い、鼓動が薄れてゆく…
霞んだ視界で必死に光景を捉える、だが秒針が進む毎にそれすらも叶わなくなる…
もう一度だけ、楽器吹きたかったな。
次にそれが叶う事を期待して目を閉じた_
意味深な後ろの影には銀髪の子供がクスクスと、肩を震わせて笑う様子が映されていた…
目を閉じているにも関わらず、網膜が焼けそうなほど眩い光が辺りを包み込む。もう終わったんだ、ゆっくり寝かせてくれないか?
そんな言葉を聞いたのか、光は徐々に薄れていく…
「……」
とある部屋の一室で目覚めた、体を起こそうとして気が付いた。手がちっちゃい、何事…
とりあえず周りを見回す、ここ何処だろ?
地球とは程遠そうだし…もしかしてこれが俗に言う異世界転生?面白そうじゃん
けど、不甲斐ない形で前世を終えた事は不満だった。
「けほっうぇぇ…」
喉の奥につっかえた感覚を覚え咳をする。
すると、口から何かが飛び出す。歯車…?何でこの子の体の中に…誤飲か?
少し鮮血で染められた金色の歯車を見てゾッとする
とりあえずじっとしてたら死にかねない、喉が渇いてきたし…
何でか重要な感じがして、吐き出した歯車を懐にしまった。そういえば、この子は幼女なんだな、本体である僕は違うのに。
まぁいいかと発見を振り切り、ドアノブに手をかける。
だが、一向にドアは開かない。鍵でも掛けられてるのか、非力すぎるだけか…
このままドアを引っ張ってるだけでは埒が明かない。
近くを見回して何か使えそうな物でも探す。
お、あった〜。何故か自分の横に放置されてた箱を汚れた手で分解する。薄い紙があれば施錠されてるドアでも開けられる事がある、あの時見た雑学役に立つなー
このドアは少なくとも日本と同じ構造みたい、助かったわ…
ガチャリと音を立てドアが開く、これは鉄製かな?幼児の体には重すぎる。そりゃ開かないか
外の光景は…城とかお屋敷かな、レンガ調のいかにも異世界風な壁が立ちはだかる。
とりあえず水を求めてぽてぽて歩みを進める
やっぱりお城かな、とても歩きやすい管理された石畳だ。
辺りには歯車が回るような原始的な音と、工場の不思議な匂いが充満していた。
ここがどんな場所なのか見当もつかない
てか、それ以上に喉が渇いた…水…どこ?
少し朦朧とし始めた体を何とか歩かせ、城の中をぽてぽてと進んでいく
あ、これは蛇口じゃないか!地球とまるっきり同じで少し懐かしい感じがした
捻ると、ちゃんと透明な水が出た。飲めるかどうかなんて分からないけど、飲むしかない、腹が壊れたらその時だ。そう覚悟を決め一飲みする
「うまぁ〜」
水でさえとっても美味しく感じる、持久走の後を思い出すなぁ。
これから、どうしよ。ふとそんな事を考える
無人島に流された時とか災害の時、人間が優先すべきは食べ物より水分、水が確保できた事は幸運だが次の食料がなければ飢えてしまう。
あと寝る場所とかもなぁ…
ここがどんな世界かも見当がつかない。
あの部屋は間違ったら閉じ込められる可能性もあるしな。
さっきから微かに食べ物の匂いがする、多分昼時。そろそろ何か食べたい…
匂いの方向に足を進める、燻製の様な匂いがする。美味しそうだな…
匂いが強くなると、人の声も聞こえる様になってきた。会食か賄いか、ボクも混ぜてくれって一瞬思った。けどこの子は汚れてて、喉に歯車が詰まってて…境遇がよく分からない。もしかしたら殺すつもりであの部屋に放置された、そう考えると周りの人を避けた方がいいのだろう。
部屋の埃の被った角っちょに体育座りした、とても美味しい匂いが鼻をくすぐる。これがダクト飯ってやつ?いやそれなら白米を用意しろって話だけど…
そんな事を考えつつ眠りについてしまった。
「幼子…?何で城の作業場に?」
「さぁ、誰か子持ちはいたか?」
「いや、いないっす。この子、汚れてるっぽいしまともな育児を受けてないんじゃないすか?」
誰かが話す声で、目を覚ました。体には毛布がかけられて、暖かかった。しかもドロドロになってた顔も手足も清拭されていた
「よぉ、おはよう」
気前の良いあいさつ、いい人そう。
「君はどういう子かな?」
僕に聞かれても困るんだけど…
だんまりとしてたら、腹の音が大音量で響き渡る
周りの人がクスッと笑っていた
「腹、減っただろ。飯食うか?」
机の上にはちょっとしたスープと燻製された肉?が用意されてた
それを見て、少ししんみりしてしまった。前世では家族は仲が悪く、ほぼ一人暮らしみたいな物だった。こうやってお腹が空いたらご飯を用意してもらったのは久しい話だった…
「たべる!」
スープを啜る、塩味だろうか。少し物足りない感じがするがそんな事を言っていたら生きていけない…
「おいしい」
いつも一人で食べてた味付けの凝った料理より、今の方がずっと美味しい。
肉にも齧りつき、飲み込む…が数日は食べてないような胃袋にはきつい、吐きそぉ…
必死に食べる幼子を見て、大人達は微笑んだ。
やった、第二問題の食料は解決!
あらかた食べ終わった所で一人の男性が聞く
「お前、どこから来た?」
さっきも同じ様な事、聞いたよね。
あ、でも答え返してないか
「ボクに聞かれても困ります」
…自分で見た感じは3歳か4歳か。そこで閃いた、さっきしまった歯車があるじゃないか
「コレ…」
瞬間、全員が凍りつく。金の歯車は高貴な家系の生まれや神娘にしか与えられない、特別な称号、名刺のような物。…だがこの幼子はそんな事はつゆ知らず。
凍りついた大人達を不思議そうに見つめていた
「……名前は…?」
恐れ多そうに聞かれる、そういや名前…何だろ…前世の名前が思い出せない…代償かな?まだ特典も貰えてないけど
「ないです」
幼児の受け答えではなくキッパリと言い切った。
思い出せないものは思い出せないからね
幼稚な滑舌が大人びた答えをかき消す
それを聞いて、周りの人がクスッとまた笑った_
自分の作風をガン無視しようシリーズです
この幼子の正体は?…一体何でしょうね
次の話でまた会いましょう




