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-31時間

「で、明日から夏休みが始まるわけですが―――」


 終業式という名の退屈極まりない行事。

 話を聞く人などいないのに、どうして彼らは喋り続けるのだろうか。

 生徒を体育館に集めて説教とも授業にもならない話をする。これも一種の殺人ではなかろうか……。

 ……ん?待てよ……。

 校舎の一角に生徒を集める。

 学校内に不協和音を流す。それも微かに。超高音で、脳を揺さぶる。

 その旋律には、脳みそを溶かす効果があって……。


「シラリア?」


 ふふふ、中々良いかも。

 そして"私"は、どろどろに溶けた脳みそを啜るのが大好きで……。


「ちょっとシラリア!」


 生徒の口や耳から垂れた脳を、こうジュルジュル……っと。

 そうなると"私"は学校の先生かな?

 格好良くタクトなんて握らせちゃおうか!

 そうだ、段々とボリュームアップしていこう……!

 ああ、なんてことだ!今日はこんなにも頭が冴えわたっている!


「こら、変態!」


 む!何を言う!"私"は崇高なるアーティスト―――そこで初めて横から肩を突かれていることに気付いた。

 友人のアヤノだ。無視することもできないから、せっかくの構想も中断しなくては。


「何か用?」


 精一杯の不機嫌さを最小の声に変換して答える。


「……まずはその涎を拭きなさい。」


 そう言って黄色のハンカチを渡してくれた。このお団子ロリは、その容姿から想像することのできないくらいの世話焼きな性格をしている。私の性格を知っている彼女に悔しいことによくお世話になっていた。彼女は、私の趣味を知っている数少ない友人ということだ。


「全く、あんたはその欠点がなければねぇ……。」


 本当に残念そうに肩を竦めた。


「はいはい。で?私の思考を遮ってまでするような用件なのかしら?」


「いやさ、終業式終わったらどこかでお茶でもしないかなーって……」


この女は……本当にくだらない。別に今話す事ではない。


「悪いけどパス。今日は見たい映画があるから。」


「……あんたは、本当に、もう……。」


 と、深い溜め息をつかれてしまった。今日はよく溜め息を聞く日だ。


「その趣味さえなければ学校一のアイドルにもなれるってのに……。」


「……はいはい。」


 一応、世間体は考えているつもりだが、そういう話には一切興味がない。恋愛対象の道具にされることの楽しさが私にはまだわからなかった。


「この前だって、副会長と喧嘩したんだって?」


「あれは喧嘩じゃなくて、私の意見を伝えただけだよ。新入生を捕まえて、校則違反だと騒いでいるのがうるさくてさ。しかも、その上であんな短いスカート履いているほうがおかしいでしょう?それを指摘しただけ。」


「でも、相手は先輩なんだからさ……。あなた、あれからあの先輩グループに目をつけられてるんだよ?」


「わあ、それは光栄だね。」


「楽観的だなぁ……。」


「アヤノちゃんは、難しい言葉を知っているねー。」


 頭を撫でようとした途端、思いきり振り払われてしまった。相変わらず慎重に似合わず、子供扱いされるのが嫌いみたいで安心した。 


「でもなあ、どうしてこんなに人望があるのか。どうして私だけがシラリアの本性に気付いているのか……。こんな性格でも群がってくる男の気持ちが知りたいよ、本当に。」


「蟻に群がられる砂糖の気持ち、考えたことある?」


 そのまま何となくアヤノと雑談しているうちに先生方の有り難いお言葉も終わった。全くタメになった。おかげで新しい殺人鬼も浮かんだのだから。誰か映画化してくれないだろうか。


◆◇◆◇◆


「ねぇ~シラリアってば~。」


 仏様を拝むように懇願するアヤノ。帰り支度をしているときも勧誘は終わらなかった。そして、現在は下駄箱まで来てしまった。

 ここまで誘いたいほどの新しい喫茶店でもできたのだろうか……?改めて断ろうとしたとき、


「アヤノちゃ~ん。」


 という声が後ろから聞こえた。振り返ると、設楽が手を振りながら歩いてくるところだった。


「し、設楽くん!!」


 アヤノの声が1トーン上がる。


「ごめんね、部活のミーティングが長引いちゃってさ。待った?」


「ううん!全然!もっと待っていてもよかったかな!」


 その光景を見つめる私。なるほど……アヤノの狙いがわかった。

 設楽 シュン……バトミントン部の期待のエースで、成績優秀、父親は有名な映画監督(私も何度かテレビで見たことがある)。所謂、イケメンという部類……らしい。ファンクラブも存在している。しおかし、当然私にとってはただの女たらしという印象しかない。


「……うんうん、すっごく楽しみ!……はっ!」


 私の冷たい視線に気づいたのか、アヤノが秘密会議を迫ってきた。


「はぁ……。設楽くんからのお誘いってことね。」


「そういうこと!設楽くんから誘われたのよ!?あんただってたまには男と遊んだほうがいいのよ!」


「自分が遊びたいだけでしょうが!」


 言うまでもなく、アヤノもファンクラブの一員だ。そしてバトミントン部のマネージャーという争奪戦もいつの間にか勝ち取っていた。


「一人で行きなさいよ一人で!私がいたら邪魔になるでしょ!?」


「二人きりで何を話せばいいかわからないもん!」


 このロリはこういう場合、恥じらう乙女に成り下がる。こういうところが子供扱いされる原因なのに、未だこの子は気づかないのだろうか。


「アヤノちゃん、そろそろ行かないかい?」


 世話しなくそんなに長くもない髪をいじっていた設楽が話しかけてきた。


「はーい!今行くね!シラリアも興奮しちゃってるみたいで!」


「ちょっとこら……アヤノ!」


 ……聞いてないな。仕方ない。行くだけ行って、すぐに帰るとしよう。


「へぇ~君がアヤノちゃんの友達?俺のファンだってね、光栄だなぁ。」


 とっさにアヤノを睨む。この女は友達をなんだと思っているのだろうか。しかし、アヤノの手前、否定するわけにもいかないか……。


「……初めまして、設楽くん。今日はよろしくね。」


「ははっ、こちらこそよろしくね。えーと……」


 私の名前、アヤノは言ってないみたいだ。それに気付いたのか、アヤノが割って入ってきた。


「あっ、シラリアっていうの。な~んでか、本名で呼ばれるのが嫌いらしいんだよね。だからそう呼んであげてね。」


「ふーん……なるほど。それじゃあよろしく、シラリアちゃん。」


 そう言って設楽は歯を覗かせた。"ちゃん"は余計だった。ああ、今すぐ帰りたい……。


◆◇◆◇◆


「それで今はバルキスの定理ってのを解いてるんだよ。これがどうも難解でねぇ。」


「へぇ~外国のお土産が数式なんて……設楽くんのお家って博識なんだね~。」


 アイスココアに浮かんだホイップクリームをストローでいじる。

 ……そうか、数式で人を殺すってのはどうだろうか。ある数学者の定理が、実は殺害方法を数字で表しているものであって……みたいな。

 そう言えば、円周率の謎を解く映画があったような。む、ということは若干パクリになってしまうかな……残念。


「休日はお菓子作りしてるかな?これが意外と楽しくてさ~。」


「きゃー素敵っ!設楽くんならスイーツ職人も似合うよー。」


 クリームを口に運ぶ。

 人体でお菓子作りってのはどうかな。肉屋さんを経営してたりってのは聞いたことあるけど。そもそも人肉でケーキ作れるのかしら。……スイーツ・マーダー……。


「今度、親父の新作を手伝うことになったんだよ。」


「きゃーすごいすごい!私、設楽監督の作品すっごく好きなの!」


 お皿にきれいに盛られたワッフルを覗く。

 シンプルにスイーツを求めてお菓子職人たちを殺していくっていうのもいいかも……。無防備なワッフルにフォークを突き刺す。

 (そうだ、もっとワッフルを寄こせ!さもないと……!!)


「シラリア!」


 そう、お前の目玉をショートケーキにのせて……


「ちょっとシラリア!!」


 甘美なるスイーツ職人から、何もない”私”に戻される。現実世界では4つの目玉が私を見つめていた。


「あ、ごめんごめん。」


 また悪い癖がでてしまったようだ。


「もう!設楽くんの生活に興味ないの!?」


 ないです、これっぽっちも。


「まあまあ、アヤノちゃん。シラリアちゃんは興味ない?映画?」


 あります、私の映画だけ。

 そういえば……


「設楽くんのお父さんってどんな映画作ってるんだっけ?」


 何とか賞を受賞したというのはテレビで何度も見かけているが、それ以上はあまり覚えていなかった。

と、いうのも全くホラーなテイストではなかったからだ。

 アヤノが隣で、いかにも何か言いたそうな目を向けてくる。向かいの設楽も髪をいじる動作を止めていた。


「俺の親父はロマンチストだからね。この前に賞をとったのも"キスは罠"っていうラブロマンスで……。」


 あ~そうだ。思い出した。何だか恋人同士が甘ったるいだけの逃避行を繰り返す物語だ。タイトルとパッケージを見て、すぐに忘れたんだ。


「それって誰かが死んだりする?」


 不躾だとは思うが一応聞いてみる。


「それがさ!最後のシーンで主人公の友達がねぇ、これまた切ないんだけど……」


「通りすがりのチェーンソー男に殺されたり!?」


「……い、いや、友達のために自ら崖から身を投げるんだけど……。」


 つ、つまらない……。わざわざ映画で、しかも最後に殺害シーンを持ってくる必要があるのかが全くわからない。

 そんな私の空気を感じ取ったのか、アヤノが慌てて口を開く。


「すっごい良かったです!”隆司”が”由香里”のために身を引くのよね!もう~映画館で泣きっぱなしだったよう~。」


「そう言ってもらえるとうれしいな。実はあのシーン、俺が考えた案でさぁ……親父には話半分に聞いてもらったつもりなんだけど、やけに盛り上がっちゃってね。」


「えぇ!?すごいすごーい!もう感激っ!もしかして今度の新作は……」


 盛り上がる2人を置いて、またもや妄想に耽る。

 ……来るんじゃなかった。頭の中の殺人鬼たちは声を揃えて呟きだした。


◆◇◆◇◆


 私が開放されたのは、もう夕方のことだった。が、しかし、開放といっても喫茶店を出ただけだ。

 現在は人通りが少ない住宅街を3人で並んで歩いている。「送っていくよ」という設楽の誘いをアヤノが断るはずもなく、私も一緒に付き合う形にさせられてしまった。


「設楽くんの脚本なら絶対に売れるって~。私もう泣く準備できてるもん!」


「いやぁ、まだわからないってば~。」


 どうやらアヤノはすっかり設楽に慣れたらしい。やっぱり私がいなくても良かったんじゃないか。

 この時間帯、いつもならレンタルビデオ屋さんのワゴンのB級映画を漁っているというのに、どれだけ無駄な時間を過ごしていることか。


「……あれ?」


「どうかした?」


「あそこの人……何やってるのかしら?」


 アヤノの視線は公園に向いていた。今では全くといっていいほど、子供が遊んでいる姿なんて見ない、廃れた公園だ。

 その小さなジャングルジムの隣に、奇妙な光景があった。

 黒の上下のスーツに身を包み、ネクタイを締め、異様な笑顔をした仮面を被った人物。それがダンボール箱を並べて、パイプ椅子に座っていた。背中の古ぼけた旗には「movies」と書かれている。


「やだ……ホームレス?」


「……の露店みたいだな。moviesって……ビデオでも売ってるのか?」


 嫌悪の眼差しを向ける2人とは裏腹に、私は心を惹かれていた。

 あの風貌、しかもこんな場所でビデオなんて……B級の匂いがする!


「あ、シラリア!待ってよ!」


 自分の直感を信じて駆け出す。世間体など気にしていられるか!

 ―――案の定というか、ダンボール箱の中にはビデオテープがぎっしりと詰まっていた。

 よく見ると、旧作から新作までありとあらゆる作品があった。その中に私の眼には一際輝く光が見えた。これは……!


「これ、これ探してたぁ!」


 行きつけのレンタルビデオ屋には置いてなかったのに!

 あのだらけた店長に何度頼み込んだことか!いっその事アルバイトでもして仕入れてやろうかと思っていたのに!それがパッケージのまま!!今ここに!

 ―――と、うれしさからつい声を上げてしまった。

 待てよ。と、いうことは……


「す、すいません!」


「はいよ。」


 仮面の人物はカタカタと人形が動くように顔を向ける。その声は想像とは違って、意外と若い男のものだった。


「"殺人六法"ありますか!?」


「ん?"Redrum's Law"のことかい?」


「それです!ごめんなさい、邦題で言ってしまいました!」


「それなら……どこに行ったっけなぁ。」


 顔はこちらに向けたまま、箱に手を突っ込んで探す。そして、「あっ」と小さな声を上げて、


「あった、あったよ。」


 叫びだして、走り回りたいくらいの衝撃があった。

 手に取ると空に高々と掲げた。頭の中にはファンファーレが鳴り響く。私にとっては聖剣に等しいほどの価値があった。


「あはは、可憐なお嬢さんだってのに意外とコアな作品が好きなんだね。」


 それに驚く素振りも見せずに淡々と語る男。


「そりゃあもう!ずっと探してたものが2つも手に入るなんて!」


 私はまさに有頂天だった。これほど喜ばしいことはない。


「そういう作品がお好みなら……おや、いらっしゃい。」


 男の首がカタカタと動き、私の後方を見た。


「なんだぁ?全部ホラーばっかりじゃないか。」


 振り返ると、設楽と、その後ろに隠れたアヤノがいた。


「シラリアちゃん、俺の家に来ればもっと良い作品たちがあるよ。こんな危ない店で買うより、家に来ればいくらでも貸すからさ?」


「シラリア~、設楽くんの言うとおり、もう行こうよ~。」


 アヤノは小さい身体を更に小さくして言った。


「したら……?ひょっとして設楽監督の?」


 仮面の男が目を見開いて(そのように見えただけだが)尋ねる。設楽は少なからずその発言に気を良くした様子だ。


「そうさ。さすがに君みたいな人でも知ってるみたいだね。俺は何を隠そうその長男の……」


「あぁ、あの芸術性の欠片もない男の倅か。よくもまぁ、あんな恥ずかしい作品を世に出したもんだねぇ。」


「……へ?」


 設楽の口が止まった。一方、私は今にも笑いだしそうだった。


「ふ、ふん!これだから愛を知らない奴は困るよな!映画の本質ってものがわかってないんだから!!」


「あぁ……ごめんよ。どうもああいう恋愛モノは嫌いでね。最後のシーンなんかお笑い種もいいとこだよ……。何であんな死に方するかなぁ。どうせならみんな殺して自殺したほうが……。」


 その発言を聞いていくうち、設楽の髪をいじるスピードが増していく。ああ、とうとう顔が真っ赤になってる。


「……ば、馬鹿が!批評家にでもなったつもりか!行こう、アヤノちゃん!!」


「え、ちょっと、設楽くん!待ってよ!シ、シラリア、また後で連絡するからぁ~!!」


 余程、頭にきたのか競歩のスピードで去っていく設楽。そしてそれを健気に追いかけるロリっ子……。あれも一種の恋愛映画のワンシーンになるのかもしれない。


「ありゃりゃ。君のお友達だよね?悪いことをしてしまった……。」


 微塵ほどの謝罪を感じさせない声でそう語った瞬間、私は今日一番の笑い声をあげた。


◆◇◆◇◆


 数十分後、私は紙袋一杯にビデオとDVDを詰め込んでいた。


「あの、本当にお金はいいんですか?」


「ん?いいよいいよ。そんなマイナー作品、君みたいな子が持っているのが相応しいよ。」


 皮肉だろうか。しかし、嬉しくもあった。それじゃあ、と帰ろうとしたとき、男の後ろに、4つ目のダンボール箱を見つけた。何気なく、そちらを見つめていると、男はその視線に気づいたようだ。


「ああ、後ろのはレンタル専門なんだけど、良かったら見る?」


「あ、はい!ぜひとも!」


 私がそう言うと、男は椅子ごと後ろに向いてしまった。そちら側に来い、ってことだろうか。

 3つのダンボール箱を避けて男の前方に回り込む。すでに箱は開かれていて、またもや中にはビデオテープが詰まっていた。

 しかし、先ほどとは明らかに違っていたのは、ビデオにはパッケージもなければタイトルも記されていない。修正液のような白い文字で、[1]や、[2]といったナンバーが記されているだけだ。


「あの、これって……?」


「……。」


 饒舌だった男が急に黙った。一縷の不安が襲う。


「えっと……あの……。」


 どうやって会話を切り出そうとした瞬間、


「これはね、スターを集めた作品たちなんだ。」


 スター?ハリウッドとかの?


「いいや、ハリウッドスターにも負けないくらいのね。」


 急に心を読まれて、背筋が凍った。偶然だろうか。


「君は、どうやって殺人鬼が生まれるのかわかるかい?」


 ……私には質問の意図がわからなかった。何も言えないまま佇む。


「それを記録したのが、このビデオなんだ。」


「……あの、スナッフフィルム……ってことですか?」


 やっと絞り出した言葉がそれだ。我ながら馬鹿げた質問だ。そんなチャチなモノではないことは私自身が感じていた。


「僕は、君がその真理を知るに近い存在だと感じているよ。」


 そう言われて、思わず口に手を当てる。

 いつの間にか、私は口角を釣り上げて笑っていた。

 ちょうど、この男の仮面のような顔をしていることだろう。

 ”どうして犯罪が起きるのか?”ではない。

 ”どうやって殺人鬼が生まれるのか?”。

 何故そう問いかけたのか。意味不明の高揚が私を包んでいた。


「これ、借りてもいいんですよね?」


 ふっ、と軽く笑う声が聞こえた。


「どうぞ。君みたいな人は大歓迎だよ。」


 そう言って両手を広げる。手のひらは黒の分厚い皮のグローブで覆われていた。


「じゃあ、えっと、やっぱり順番通りに[1]から……?」


「あっ。1番は僕の初仕事だから勘弁してくれないかな?その、緊張しちゃってるもので。」


 初仕事って……。いや、深くは聞くまい。まずは見てから、ということだろう。


「そうだな、君は9番なんかがいい。」


 男が差し出した、[9]と書かれたビデオを受け取る。


「さあ、もう帰ったほうがいい。こんなに遅くなってしまった。」


 公園には街灯が点き始めていた。今は19時ごろだろうか。これ以上遅くなるもの困るので、設楽とアヤノが出て行った、公園の入り口へと向かう。


「そうそう。」


 男は背を向けたまま、声をかけてきた。


「寝るときは気をつけてね。奴は夢の中でもやりたい放題だからね。」


 ん……?夢の中……?ああ、なるほど。赤と緑の横縞のセーターの奴のことだな。


「大丈夫ですよ。恐竜のぬいぐるみが私を守ってくれますから。」


 仮面の男の反応を見ることなく、私は家に向かって歩き出していた。


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