プロローグ
この小説には暴力・残酷・グロテスクな描写がたくさんあります。
このような描写が苦手な方は閲覧をお控えください。
素人丸出しの文章を不快に感じる方もお控えください。
けたたましいドラムロールが響く。
生演奏とは違ったスピーカーから流れる音が、その場にはひどく似合っていた。
「今回の優勝者は……3番!長野県からお越しくださいました、”昼間のボマー”さんです!おめでとうございます!」
司会者の叫びに、激しい歓声が応えた。見物人である老若男女問わず全ての人間の声である。それは奇声にも似たものであった。
会場内は薄暗く、唯一の光源と言えばステージに立つ出場者たちが浴びているスポットライトのみ。その光も今は一人を照らすために小さくなっているため、観覧席はもはや暗闇と同化していた。
「いやぁ~お見事でしたね。」
“昼間のボマー”と呼ばれた男が司会者からマイクを向けられる。
「はっはっは。やっぱり最終ラウンドに残っただけあって、みなさん中々のものでしたよ。」
眼鏡をかけてスーツを着た痩せぎすの男。一見すると、ひ弱な商社マンにしか見えない彼は驚くほど饒舌であった。
「けれどやっぱり僕の読みどおりでしたね。現代の科学においては、力にこだわる必要もないんですよ。」
と、満足そうに切れ目の眼鏡を上げた。
「なるほど。確かに終盤の87番”トゥース・ハンター”さんとの一騎打ちは見事なものでした!」
「ありがとうございます。僕も最後の人が一番楽しかったですね。」
そう言って、足元に転がる胴体を蹴りつけた。
「それにしても怖いですねー爆弾というものは。」
「爆弾、なんて呼び方はやめていただきたい。ひとつひとつが僕自身なのですよ。」
「ほほう……その威力は皆様も御承知の通りですね!」
司会者がおもむろに男の足元に転がった胴体を拾い上げる。
「ご覧ください!これから彼はどうやって得意の咀嚼をすればよいのでしょうか!?」
高々と掲げ挙げられた下半身のなくなった男の死体。
その顔は未完成の福笑いのようにひしゃげていた。
だらしなく繋がったままの舌と、爆発によって吹き飛ばされた歯が口内のそこかしこに突き刺さっていた。
ゲラゲラゲラ……観客の笑い声が響く。
「それでは、今回はこのへんでお開きといたしましょう。"昼間のボマー"さんのこれからの活躍を期待して、皆様方、今一度大きな拍手をお願いします!!」
拍手だけでは物足りないのか、地を蹴る音が響く。
それだけ場内は昂ぶっていた。
商社マンは気をよくしたのか、大手を広げて劇役者のように振る舞う。
「ありがとうございます。明日からは早速、華やかなショーを――――」
◆◇◆◇◆
”音声資料:九畝 明との会話”
「連続殺人鬼?僕が?」
「違うのですか?」
「……貴方がたの恐怖の対象になるのは構わないが、僕をそう呼ぶのはやめていただきたいな。」
「と、いうのは?」
「僕はそこらの愚鈍な輩と違って、信念があるのだよ。」
「信念……ですか?」
「君らが殺人鬼と呼ぶものは、字の如く、人を殺める鬼のことだろう?」
「そう、でしょうね。」
「僕は鬼みたいに狂ってはいないし、物事の分別もつく。大体ね、彼らの行動の目的は何なのだろうか?」
「さあ……。」
「さあ?君はそれでも警察なのかい?」
「警察じゃなくて、探偵ですよ。さっき名刺を見せたでしょう。」
「……肩書きがそんなに大事かい?どちらも市民の安全を守る務めには変わりないのだろう?案外、君みたいな人が連続殺人鬼なんて呼ばれたら喜ぶのかもしれないな。」
「いえ、どうでしょうか……それより、目的がどうしたんですか?」
「ああ、失礼。そうだった、目的だよ。美学と言ってもいい。彼らの行動には何も感じられないのだよ。」
「共感できないということですか?」
「全くわからないね。欲望を満たすだけの行動のどこに美学がある?」
「あなたの犯行は欲望を満たすためではないと?」
「僕のは"役目"だよ。」
「"役目"?」
「エンターテイナーとして、必要な役目をしているんだ。」
「それは……一体どういう意味ですか?」
「戦争と同じさ。誰かが泣けば、誰かが喜ぶんだよ。」
「あなたがやったことも誰かが喜ぶのですか?」
「エンターテイメントだと思うね。誰かが死ぬと、マスコミも喜ぶし、君みたいなのも仕事ができるだろ?」
「いえ、私のは個人的な調査というか、好奇心と言いますか……。」
「そうなったのは"僕"という人物がいたからさ。」
「まあ、確かに。」
「影響はどこかに必ず表れるものなのだよ。」
「なるほど……。例えば、あなたをヒーローのように崇めているファンサイトなんてのもありますね。それもエンターテイメントの一環ということですか?」
「ああ、まあ、そういうことなのかな。ヒーローなんて呼び方は虫唾が走るけどね。ヒーローは正義の味方ってことだろ?僕は別に味方なんてしてないね。あえて言うなら…正反対の味方?」
「……?」
「ふむ……あまり、しっくりこないね。そうだな…正義の反対は何だろう?」
「……悪、ですかね。」
「いいや、違うね。正義の反対は"また別の正義"なんだよ。だから僕は後者の味方をしているだけさ。」
「う~ん……悪の正義、ということですか?」
「うん、変な言い方になっちゃうけど、そういうことかな。みんな現実に刺激がほしいのさ。だから僕はそれに応えるんだ。」
「こんな平和な世界で?」
「平和?今のどこが平和なんだい?そもそも平和なんて状態は何もないことを指すんだよ。それこそ実にくだらない。」
「だからこそ、あなたがヒーローを演じたと?」
「……。」
「あ、すいません。えっと…その…スター?」
「ん!?そう!スターだよ!映画の登場人物みたいなねぇ。」
「つまりは……あなたは悪役になりたかったと。」
「ははは、そうだね。悪役がいることで君らも正義を信じられるだろ?僕はそういった―――ん?もう時間ですか?」
「そのようですね。本日は大変貴重な―――――」
「いや、ちょっと待ってくれ。まだ話は終わってないんだ。いいだろう?―――いえ、すぐに終わりますよ。」
「いえ、私はもう――――」
「探偵さん。」
「はい?」
「誰もが一度は映画のスターに憧れるだろう?僕はね、そういった集団から選ばれたのだよ。」
「……。」
「ただ、僕のはちょっと違うものに憧れただけなんだ。」
「……それは?」
「君もよく知っているだろう?有名なハリウッドスターさ!」
「すみません、あまり映画は――――――」
「ははは!いつ襲われても知らないよ?」
「それは映画の登場人物であって現実には――――――」
「ほらほら、君がどこに逃げてもすぐに追いついて、足首を掴むんだ。やっと車に辿り着いたみたいだが、エンジンはもちろんかからないよ。まるで魔法みたいじゃないか!!」
「行平さん……?」
「お?かかりそうだね?かかった!?でももう遅いよ!後ろを振り返ってごらん!そいつが荒い息をしながら―――」
連続殺人鬼"昼間のボマー"、行平 俊臣
面談から17分後、自らの奥歯に仕込んだ小型爆弾により死亡
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
物語はまだなんも始まってないですね。
プロローグの終わりと言ったところでしょうか。
チェーンソーは元々、短編の予定でした。
伏線いらずのあっさりとした作品にするつもりでしたが、書いていくうちに長々と…
何分、私がド素人の為、誤字脱字が目立つとは思いますが、飽きずに楽しく書いていきたいので温かく見守ってくださるよう、お願いいたします。
読んでくれた方はぜひとも感想をお願いします。