薬
月末、二度目の浦原先生の診察に臨んだ。
「その後、お変わりは?」
「はい、おかげ様でこれといったトラブルは起きていません」
「それは良かった」
「先生に出して頂いたお薬も合っているみたいで。助かっています」
「薬?そう、薬を出しましたね……」
先生はカルテを軽く眺めると、「あれはブドウ糖ですよ」と言った。
「ブドウ糖!?それって……」
「いわゆる偽薬です。プラセボ効果というのを知っていますか?効くと信じて飲めば何だって効くものなんです」
「だからって、さすがに……」
反論を手でそっと遮り、切り返す。
「あなたの症状に直接合う薬は残念ながらありません。なら、気休めでも良いではないですか?」
私は待合室の赤ずきんを思い出した。
お婆さんの耳は何でそんなにとがっているの?お前の話を聴くためだよ。
今となっては、先生がお婆さんに化けた狼に思えて仕方ない。心から信じていただけに、消沈した。
「正直に言います。私にはあなたの病気の見当がついています」
「ええ!?今すぐ、どうか今すぐ教えて下さい!」
「それはできません。私の判断では、あなたはまだ病気に向き合う段階ではない。今日からは精神安定剤を飲んで頂きます。偽薬の効果ではもう足りない」
そんなに重い病気なのか。でも、先生は私の病気を知った上で判断している。今は任せてみよう。
その意志を伝えると、先生は満足気に微笑んでみせた。
読んでいただきありがとうございます。
よろしければ、☆☆☆☆☆を★★★★★にして応援頂けると嬉しいです。
何卒よろしくお願いします。




