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縛解師  作者: ネルソラ
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第一話 丁たる(あたる)(2)

 マイネームイズ アタル。バリバリの日本人である。


 職業、オカルト系フリーライター。いわゆる物書(ものか)きだ。仕事はシンプル。怪しい話を見つけては取材して、面白おかしく書くだけ。


 自分で言うのも何だが、面白いことしか書けない。これも断っておくが、あくまで僕が面白いと思うだけで、読者が面白いと感じるかどうかは別である。


 主にオカルト系サイト オカルティアに原稿を書いているのだが、常に人気ライターランキングベスト10に入っているので、面白いことしか書けないというのは、あながち間違いでもないだろう。


 えっ! オカルティアはメインのライターが10人しか居ないって? (さっ)しの良い読者は⋯嫌いではないけれど、どうか優しくしてください。


 ちなみに、フリーライターとしてはまだまだ()()しで、正直生計(せいけい)は苦しい。最近はスキマバイトができるタイミーが手放せない。


 今、僕が書きまとめているのは、15年前に起きた東北地方のある村の事件について。かなりマイナーな事件なのか、ほとんど知られていない。ただ、こういうネタじゃないと、最近のオカルディアでは採用されにくくなっているのだ。


 昨今、Youtuberの台頭でオカルトネタも枯渇(こかつ)している状態。というのも、メジャーなネタには一斉に彼らが群がり、すぐに食い尽くしてしまうからだ。彼らはピラニアと一緒で、エサを見つけると我先にとかぶりつく。まあ、そういう僕もピラニアの一匹であるけど。でも、小ぶりで歯も小さいから許して欲しい。


 というわけで、記事になりそうなマイナーなネタを探すのが僕の日課にもなっている。そしてようやく見つけた誰も手をつけていないネタが、東北地方のある村の事件についてだ。と言っても、きっかけは編集長からの情報なんだけど。ありがたや。


 ただ、実際に現地へ行って取材もしたのだが、霊とか怪異は起きず、見ることもできず、誰かに話を聞くこともできず、まるで収穫(しゅうかく)無しの状態。このままだとボツネタになりそうで、これまでかけてきた時間と労力を考えるとかなり凹み中である。そもそもコスパだけ考えれば、ライターなんて職業自体、良くないのだが⋯。


 それでも自分が小さい頃から好きなオカルトというジャンルに関われていることは、僕にとっては幸せなことだろうなと思ってはいる。


 というのも、僕は小さい頃から、変な出来事にはよく出くわす。「あーヤバそうだなあ」って場所も結構感じる。この感覚はなかなかに正確で、だからこそ変な事件に巻き込まれやすい。


 例えば、嫌な感じのする交差点を調べてみたら交通事故があったり、嫌な家だなあと思ったら事故物件だったり。いわゆる、霊感というやつなのだろう。


 でも、霊は見たことがないのだ。オカルトライターとしては致命的かもしれないが⋯。


 だから、いつか霊には出会いたいと常々考えている。もちろん、霊に出会ったら紳士的(しんしてき)()()う予定だ。


 霊が外国人だった時のために、英語での自己紹介もできるようにした。


 マイネームイズ アタル。ね、バッチリでしょ。霊、パッチ来い!である。


 と、スマホにメッセージ着信。オカルティアの編集長からだ。


「あれ? 何か締切(しめきり)あったっけ?」


 確か次の原稿は、美人霊能者(れいのうしゃ) ユキナさんの取材で来週の予定だった気がしたけど⋯。


 ユキナさんとは、偶然タイミーのバイト先で出会った。滅紫(けしむらさき)色のロングヘアが印象的な、真面目さを感じさせる太めの黒縁(くろぶち)メガネ美人である。


 すらっとした細身の体で、少し意思の強そうな精悍(せいかん)さと、ハッキリとした目鼻立ちの美しさが同居し、まるで絵画のような印象。


 ああ、取材が楽しみすぎてヤバい。ユキナさんのことを考えると思わず(ほほ)(ゆる)む。間違いなく鼻の下も伸びているだろう。


 あ、あかん⋯。僕は(かぶり)を振って、ユキナさんのイメージを払拭(ふっしょく)した。仕事仕事。


 スマホに来た編集長のメッセージは、最近の霊に関する目撃情報の一覧だった。しかし編集長、よくこんなに怪しい情報をたくさん見つけてくるなと。編集長の情報収集能力にはいつも驚かされる。


 ちなみにオカルディアでは、ライターごとに怪異のジャンルがある程度決まっている。僕は霊担当。だから、編集長からの情報は霊に関するものがほとんどだ。


 ポッキーをポキポキと食べながらスマホの画面をスワイプしていたら、ある小学校の名前が目に飛び込んできた。自分の母校である。


 僕が卒業してから数年後に人が亡くなったようで、さらに昨今の少子化の影響もあってか、廃校になったという噂は聞いていた。


 そうか、心霊スポットになってしまったのか⋯。久しぶりに地元に戻ってみるのも悪くないかもしれない。そんなことをふと思った。


 急ぎの原稿は無いし、僕は早速編集長に返信をして、心霊スポットとなった(なつ)かしき我が母校へ行ってみることにしたのだった。

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