【7話】興味と言う名の刃
――めちゃくちゃ面白そうじゃないか。
回廊を歩きながら、僕は口元を緩めた。
周囲に人がいなければ、鼻歌の一つも出ていたかもしれない。
呪われた第3王子。
触れた者が死ぬという、信じがたい噂。
それを、あっさり無効化した地方伯爵家の令嬢。
「そんなの、気になるに決まってるだろ」
今までアルトリアに関心がなかったのは事実だ。
可哀想だとも、怖いとも思わなかった。
ただ――話題にする価値がなかっただけ。
でも今日は違う。
あの弟が、笑っていた。
しかも、自然に。
「へぇ……あんな顔するんだ」
それだけで、十分だ。
部屋に戻るなり、僕はソファに体を投げ出した。
「リリア・エルヴァイン、ねえ」
名前を口に出す。
不思議と、よく転がる名前だ。
特別な血筋?
隠された魔法?
――どうでもいい。
理由なんて、後から分かればいい話だ。
僕が知りたいのはもっと単純。
「どこまで踏み込んだら、あの二人はどんな顔するんだろう」
怖がる?
怒る?
それとも――案外、堂々と立ち向かってくる?
想像するだけで、笑いが込み上げる。
「セリウス殿下、あまり第3王子殿下に関わられませんよう……」
側近が遠回しに忠告してくる。
「えー? なんで?」
心底不思議そうに首を傾げると、相手は言葉に詰まった。
「呪い、でしょう?」
「ああ、あれ?」
僕は手をひらひら振った。
「大丈夫大丈夫。死んだら死んだで面白――」
「殿下!」
「あ、冗談冗談」
半分くらいは。
「でもさ」
ふと思う。
もし本当に危ない呪いなら、とっくにアルトリアは壊れてる。
なのに彼は、ちゃんと“人間”の顔をしていた。
それを引き出したのが、あの令嬢だっていうなら。
「ちょっかい出さない理由、ある?」
側近は頭を抱えていた。
次はどうしようか。
また声をかける?
それとも、偶然を装って会う?
リリアは警戒するだろうか。
アルトリアは、僕を拒むだろうか。
どっちでもいい。
「嫌われたら嫌われたで、それも楽しい」
僕はくすっと笑った。
敵か味方か、なんて大層な話じゃない。
ただの興味。
ただの気まぐれ。
それでも――
「少なくとも、退屈はしなくて済みそうだ」
そう思えただけで、今日は上出来だった。




