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触れれば死ぬと言われた王子に、なぜか平気で触れられる令嬢  作者:


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【6話】第2王子の視線と弟の話

王都の午後は、薄曇りの光が石畳に落ちていた。

噂が街に広がる中、アルトリア王子との会食を終え、リリア・エルヴァインは静かに歩いていた。


「……あの令嬢、噂の子だな」


背後から、軽やかな足音とともに声がした。

振り向くと、そこには端正な笑顔を浮かべた青年が立っていた。

紫がかった瞳の弟、アルトリア王子とは違い、陽気な笑みと自信に満ちた雰囲気を持つ男――第2王子セリウス・ヴァレンシュタインだった。


「僕はセリウス、アルトリアの兄だ。以後、お見知りおきを」

笑顔に人を惹きつける力がある。だが、目の奥には何か計算めいた光がある。


「……セリウス王子、ごきげんよう」

私は頭を下げる。


どうしてここに——?


セリウス王子は軽く笑う。

「いや、君の噂を聞いてね。触れれば死ぬと言われていた弟に平然と触れた令嬢……興味が湧かないわけがないだろう」


私は思わず眉を上げる。

「……私のことですか?」

「もちろん、君のこともだが、それ以上に弟アルトリアのことだ」

セリウス王子は少し身を乗り出して、声を落とす。

「君があいつに触れたって話を聞いてね。あの弟が初めて人に心を許すのを見た気がして……面白そうだと思ったんだ」


私の胸に、少し緊張が走る。

「面白そう、と……?」

「うん。僕はあいつのこと、これまで正直あまり興味がなかった。王族としての仕事も、孤独そうな弟も、ほとんど関心なかった」

セリウス王子は笑みを崩さず、しかし目は真剣だった。

「でも、君の存在で、初めて弟の人となりが少し気になり始めたってわけさ」


私は一瞬言葉を失う。

噂をきっかけに第2王子が動く――そんな展開は予想していなかった。


「……私と、アルトリア王子のことを知りたい、ということですか?」

「いや、知りたいだけじゃない。君と弟の関係がどうなるか、興味があるんだ」

セリウス王子はくすくすと笑う。

「正直に言えば、ちょっとからかいたい気持ちもあるけどな」


私は小さく息をつき、微笑む。

「……わかりました。セリウス王子、どうぞ、無理のない範囲でからかってください」


セリウス王子はにやりと笑った。

「うん、君の胆力もなかなかだ。これから楽しみになってきた」


その笑みは陽気だが、弟アルトリアとの関係や私の存在に対する微妙な嫉妬と興味が混ざっていることが、ひそかに伝わってきた。


――王都に、新たな視線が加わった。

孤独な弟、噂に動じない少女、そして自由奔放な兄。

この三者の関係は、まだ誰も予測できない未来を紡ぎ始めていた。

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