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触れれば死ぬと言われた王子に、なぜか平気で触れられる令嬢  作者:


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43/45

【43話】紋章の謎を知るもの

セレモニーから数日。

国中が祝いの余韻に包まれていたが、私の胸中は落ち着かなかった。


――あの光。

――王家の紋章の“共鳴”。


女王の私室で、私は静かに切り出した。


「母上。あの紋章について、何かご存じではありませんか」


女王は一瞬だけ目を伏せ、それから小さく息を吐いた。


「……正直に言うわ。私自身、詳しくは知らない」


「母上でも?」


「ええ。王家の記録にある紋章は“単独”のものばかり。それでさえも記録がほとんど残されていないのに、二人で共鳴する例なんて見たことないわ」


女王は窓の外――遠くの空を見る。


「ただ……知っているかもしれない人物はいるわ」

「それは……」


「昔、王家の紋章を研究していた者よ。今は王都を離れ、辺境で暮らしているはず」


迷わなかった。


「その方に、会いに行きたいと思います」


女王はゆっくりとこちらの方を見る。


「……リリアも連れて?」

「はい」


一瞬の沈黙。

だが女王は、静かに微笑んだ。


「そう言うと思ったわ。あなたはもう、一人で背負う子ではないものね」


許可は、すぐに下りた。


部屋を出た後、たまたま歩いていたリリアを呼び止めた。


「リリィ、話がある」

「どうしたの?」


真剣な表情に、リリアも背筋を正す。


「紋章のことだ。知っているかもしれない人物が、王都の外にいるらしい」


「……行くの?」

「ああ。二人で」


一瞬だけ、リリアの瞳が揺れた。

 だがすぐに、決意を宿した色に変わる。


「一緒に行く。アルトだけに任せる理由、もうないもの」


私は少しだけ照れくさく、目をそらし言った。

「ありがとう」


出発は、翌朝。

王族としてではなく、ただの旅人として。

簡素な服装。

目立たない色合いの外套。


「……変装、似合ってる」

「リリィもだ。……少し、近すぎるな」


フードを被ると、自然と距離が縮まる。


「仕方ないでしょ」

「分かっている」


そう言いながら、どこか嬉しそうなのを隠しきれていない。


城門を抜け、馬車に乗り込む直前。

一度だけ王城を振り返った。


そして、隣に立つリリアを見る。


「行こう、リリィ」

「うん、アルト」


私たちを乗せた馬車は、静かに王都を離れていった。


――この旅が、

自分たちの運命をさらに動かすとも知らずに。

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