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触れれば死ぬと言われた王子に、なぜか平気で触れられる令嬢  作者:


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【41話】光は内に在る

翌朝。


私室の窓から差し込む光は柔らかく、昨日の出来事が夢だったのではないかと思わせるほど静かだった。


……けれど。


首元に、微かな熱を感じる。


「……?」


指先で触れた瞬間、淡い光がにじむように浮かび上がった。


王家の紋章。


はっきりと、昨日と同じ形で。


「……やっぱり」


鏡の前で、息を詰める。


怖さはない。

むしろ、自然だ。


私は深呼吸し、いくつか試してみることにした。


まず、魔力を意識してみる。

次に、指先に力を込める。

最後に、呪いに触れたときと同じように、心を静める。


――何も起きない。


光は淡く浮かんだまま、暴走もしなければ、形を変えることもない。


「……変化は、感じられない」


そう呟いた瞬間。


胸の奥が、ずしりと重くなった。


いや、重いのではない。

満ちている。


まるで、体の内側に、静かで強い何かが流れ込んでいるような感覚。


「……力?」


使い方は分からない。

表に出る気配もない。


それでも、“ある”と確信できるほどの存在感だった。


私はそっと息を吐き、紋章が消えるのを待つ。

光は、しばらくして自然に引いていった。


その後、侍女に案内され、別室へ向かう。


そこには、いくつものドレスが用意されていた。


「セレモニー用の候補です」


白を基調にしたもの、淡い色合いのもの、装飾を抑えたもの。


どれも美しい。


……現実感が、急に押し寄せてくる。


「私が、これを……」


彼の婚約者として。

国民の前に立つ立場として。


選ぶ手が、少しだけ震えた。


そのとき、扉が開く。


「失礼します」


入ってきたのは、女王陛下だった。


「……まあ」


私を見るなり、目を細める。


「あなたに似合いそうなドレスがいっぱいですね。私が着るわけではないのに、悩んでしまいそう」


「陛下……」


慌てて頭を下げかけると、優しく制された。


「そのままで。今日は“母”の立場です」


そう言って、ドレスの一枚に手を伸ばす。


「これはどうかしら。派手すぎず、でも……あなたらしい」


「……ありがとうございます」


胸の奥が、少しだけ温かくなる。


「緊張しているでしょう」


「……はい」


正直に答えると、女王陛下は小さく笑った。


「当然です。けれど、あなたはもう、王家の一員です。胸を張ってください。」


その言葉に、思わず目が潤みそうになる。


――コンコン。


控えめなノック音。


その音だけで、誰か分かってしまうのが不思議だった。


「……リリア?」


扉越しに聞こえる声。


アルトだ。


思わず返事をしそうになった、その瞬間。


「あら」


女王陛下が、にこりと微笑んだ。


「アルトリア、今はダメですよ」


扉に向かって、はっきりと言う。


「当日まで、見せられません」


「……母上?」


「お楽しみは、後に取っておくものですよ」


一拍。


それから、少し困ったような声。


「……分かりました」


足音が、遠ざかる。


私は何か熱く感じるものがあり、首元に手をやった。


また、微かな熱。


内側の“何か”が、反応した気がした。


女王陛下は、それを見逃さなかった。


「……ふふ」


「陛下?」


「いい変化ですね」


意味深にそう言って、部屋を後にする。


残された私は、ドレスと、静かな鼓動と、

そして――まだ正体の分からない力を胸に、立ち尽くしていた。


近づく日を、意識せずにはいられないまま。

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