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触れれば死ぬと言われた王子に、なぜか平気で触れられる令嬢  作者:


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【36話】理解度試験という名の公開処刑

それは、あまりにも軽い調子で始まった。


「じゃ、決まりね」


そう言って両手を打ったのは、言うまでもなくセリウスだった。


「勝負内容は――婚約者理解度・実技試験」


「……は?」


私とノエルの声が、ほぼ同時に重なった。


アルトリアだけが一拍遅れて、


「……理解度?」


と、真面目に聞き返している。


「そうそう。簡単だよ。リリアが出すお題に対して、二人がどう行動するかを見るだけ」

 

簡単、という言葉を使う人間ほど信用できないと、私は知っている。


「審査員は?」

 

「僕。異論は認めない」


ノエルが明らかに眉をひそめた。


「セリウス様、それは公平性に――」


「はい一問目」


無視。


「リリアが理由も言わず黙り込んだ。さて、どうする?」


——いきなりそれ?


私は思わずアルトリアを見る。

彼は一瞬だけ考え、静かに口を開いた。


「無理に理由は聞かない。隣に座る。触れていいかは、目を見る」


……え。


「それで、話したくなるまで待つ」


心臓が、ひどく音を立てた。


「はい正解〜」


セリウスが即答する。


「え、もう?」


「今のでリリアの呼吸変わったし、顔真っ赤だから正解正解」


「なっ……!」


ノエルが慌てて言い返す。


「待て、それだけで判断するのは早計だ!」


「じゃ、ノエルの答えは?」


問われ、ノエルは一瞬言葉に詰まり、それからまっすぐ前を見た。


「理由を確認する。問題があるなら、解決策を提示する」


正しい。

とても正しい。


でも、私が欲しいのは……


「……うん」


私の返事は、どうしても短くなった。


「はい二問目」


セリウスは楽しそうだ。


「夜会でアルトリアが女性に囲まれてた。リリアは少し離れた場所にいます」


ノエルが先に口を開いた。


「誤解を生まないよう、すぐにリリアの元へ行く」


「理由は?」


「婚約者だからだ」


きっぱり言い切った、その姿勢は立派だった。


でも。


アルトリアは、少しだけ困ったように笑ってから言った。


「先に目で合図を送る。“待ってて”って」

 

それから、


「ちゃんと断ってから、迎えに行く」


……ずるい。


私が顔を熱くしている間に、セリウスは笑いながら言う。


「はい、決まり。今回もアルトリアの勝ち」


「次は——」


ノエルが立ち上がった。


「納得できません!」


「だろうね」


セリウスはあっさり言う。


「ノエルの考えは正論だ。間違ってない。ただ、リリアが欲しいのは答えじゃなくて、“気持ち”なんだよ」


ノエルは唇を噛みしめたまま、アルトリアを睨んだ。


「……っ」


「次は、剣で決めましょう」


その場の空気が、一気に張り詰める。


「理解度だの感情だの、そんな曖昧なものでなく」

 

真っ直ぐ、宣言する。


「王子として、婚約者を守る資格があるかそれを証明します」


アルトリアは、静かに息を吐いてから、剣に手を置いた。


「……分かった」


そして、いつもの穏やかな声で続ける。


「受ける」


セリウスが、にやりと笑った。


「よし。死なない程度に派手にやろうか」


——絶対、面白がってる。


私は胸を押さえながら、思った。


(どうしてこんなことに……)


けれど同時に、アルトリアが私を見る、その目から、

一瞬も視線を逸らさなかったことも。

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