【34話】両親の前でも、隣にいるのはアルトリア様
昼下がり、王宮の客室で静かに過ごしていた私の前に、執事が静かに告げた。
「リリア・エルヴァイン様、お客様です。」
「……はい」
ドアの向こうから聞こえる、慣れた声。
そう、両親だ。
父が一歩前に出て、深々と頭を下げる。
「リリア・エルヴァインの父、エドガー・エルヴァインです。本日はお時間をいただき、ありがとうございます」
「お父様……」
母も微笑みながら一歩近づき、優雅に名乗る。
「リリア・エルヴァインの母、セリーナ・エルヴァインと申します。娘の婚約に際し、心より感謝申し上げます」
「……ありがとうございます」
胸がぎゅっと熱くなる。
私の婚約、王子との婚約を両親がきちんと認めてくれている。
嬉しい――と同時に、少しだけ背筋が伸びる。
隣にいたアルトリアが、こちらを見つめる。
「リリア嬢のご両親、初めまして。第3王子、アルトリア・ヴァレンシュタインです」
声はいつもより少し柔らかい。
「はじめまして、アルトリア様……」
母が少し緊張しながらも、丁寧に頭を下げる。
「王子様と婚約させていただいたこと、心より感謝しております」
父も、私の手を軽く握りながら、きちんと頭を下げる。
「我が娘をよろしくお願いします」
その言葉に、私は胸が熱くなった。
嬉しい――と同時に、少しだけ緊張も混ざる。
アルトリアは微笑みを絶やさず、父母に向かって一歩前へ。
「もちろんです。リリア嬢を、大切に守り、共に歩む所存です」
その真剣な瞳に、両親は安心したのか、ほっとしたように微笑む。
「……ありがとうございます」
母が、私の手を握り返してくれる。
あたたかい、懐かしい感覚。
でも、その温もりとは別に、胸の奥でそわそわする気持ちもある。
(アルトリア……私のこと、守るって言ってくれたけれど……)
私を見つめる彼の瞳は、昼の光を受けてやわらかく輝いていた。
……リリア、落ち着け
小さく心の中でつぶやく。
でも、自然に頬が緩んでしまう。
こうして、私の両親との対面は無事終わった。
けれど、心の奥では、アルトリアとのこれからの日々に思いを馳せ、胸が高鳴り続けていた。




