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触れれば死ぬと言われた王子に、なぜか平気で触れられる令嬢  作者:


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22/45

【22話】相談、そして嵐の予感

最近のアルトリア様は、どこか遠い。


距離を取られている――

そう感じてしまうたび、胸の奥がざわつく。


「……はあ」


ため息をついた先で、視界に入ったのは。


「おや、契約者さん。その顔、完全に悩んでるね?」


「……セリウス様」


にこにこと楽しそうな笑み。

今の私には、少しだけ眩しすぎる。


「よかったら、僕に話してみる?」


軽い口調なのに、逃げ道を塞がれている気がして。

気づけば私は、ぽつぽつと話していた。


「最近……アルトリア様が、距離を置いている気がして……」


「ふんふん」


「契約の話をしてから、です。私、何か……不快にさせてしまったのではと」


セリウスは、少しだけ目を細めた。


「……それ、本気で言ってる?」


「え?」


「それ、嫌われたんじゃないよ」


即答だった。


「むしろ逆。意識しすぎて、どうしていいか分からなくなってるだけ」


「……」


言葉を失う。


「アルトリアは、大事なものほど、触れないように遠ざける癖がある」


軽薄そうな笑みの奥に、兄としての顔が一瞬だけ覗いた。


「君のこと、手放したくない。でも縛りたくもない。結果、何もできなくなる」


胸が、締め付けられる。


「じゃあ……嫌われたわけでは……」


「ないない。断言する」


セリウス様は、笑いながら言う。


「まあ、このままだとそのうち本当にこじれるけどね」


その言葉に、心臓が跳ねた。


「……どうすれば」


「ん?」


彼は、楽しそうに口角を上げる。


「僕に任せて?」


――その笑顔が、不安の始まりだとは、このときの私はまだ知らなかった。


------------------------------------------------------------

「……母上」


女王の私室は、穏やかな香りに満ちていた。


「リリアとの関係について、悩んでいるのね」


私が口を開く前に、女王陛下はそう言った。


「……はい」


否定できなかった。


「距離を取ったつもりが、余計に遠ざけてしまった気がします」


女王陛下は、静かに私を見つめる。


「あなたは、私に似ているわ」


「……母上?」


「守るつもりで、黙ってしまう。相手の気持ちを確かめる前に、答えを決めてしまう」


胸が、ちくりと痛んだ。


「それは、優しさではなく――臆病よ」


はっきりとした言葉。


「あなたは、彼女に選ばせていない」


「……っ」


「拒まれることを恐れて、最初から距離を置いている」


女王陛下は、そっと息を吐いた。


「呪いがあっても、王子であっても。あなたが“一人の男”として向き合わなければ、何も始まらない」


私は、俯いた。


「……私は、彼女を失うのが怖いのです」


正直な言葉が、零れた。


女王陛下は、柔らかく微笑んだ。


「なら、なおさらよ」


そして、静かに言った。


「逃げないで」


------------------------------------------------------------

その夜。


「さて」


セリウスは、楽しそうに廊下を歩いていた。


「そろそろ、二人とも限界かな」


彼は、にやりと笑う。


「――ちょっとだけ、手伝ってあげよう」


善意と悪意と、好奇心を等量に混ぜて。


第2王子は、無自覚では済まない“一手”を打つつもりだった。


その結果、

静かなすれ違いは――

避けられない対面へと変わっていく。

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