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触れれば死ぬと言われた王子に、なぜか平気で触れられる令嬢  作者:


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【2話】夜会の翌日、王子が私を見つめた

翌日――王都はいつも通りの喧騒に包まれていた。

馬車の車輪が石畳を叩き、商人の呼び声が路地を満たす。

しかし、私の心は昨日の夜会の出来事でまだ落ち着かない。


「リリア様……昨夜のことですが、あの方に触れられた件、少々――」


侍女の声が震える。

私が振り向くと、彼女は眉をひそめて困った表情をしていた。


「大丈夫です。何も起きませんでしたから」


私の言葉に、侍女は少し安心したように息を吐く。

それでも、昨夜の光景は王都の噂になることだろう。

触れれば死ぬと言われる第3王子に平然と触れた令嬢――。


その考えを振り払おうとした瞬間、私の視線は自然と広間の方へ向かった。


――アルトリア王子。


昨夜の夜会では、誰も近づけず孤独に立っていた彼。

だが、今日の王都では、確かに人々の視線を避けるように歩いていた。

誰もが距離を置く。近づこうとする者はなく、ただ王子の周りだけ空気が違う。


「……あれは……」


私の心がざわめいた。昨日と同じ孤独の中に、彼は立っている。

そして、視線が私に触れた瞬間、紫の瞳がわずかに揺れたのを見逃さなかった。


――私だけを、見ている。


広間に近づくと、アルトリア王子は小さく頭を下げた。

「リリア・エルヴァイン……昨日は――その……ありがとう」


言葉は少しぎこちない。

でも、そこに確かな感謝と、どこか人間らしい温かさがあった。


「いえ……私はただ、気になっただけです」


私の答えに、アルトリア王子はわずかに肩をすくめる。

「気になる……か。そうかもしれないな。君は、初めて、私に触れて平気だった者だ」


その言葉を聞くと、王都の喧騒や人々の冷たい視線が、一瞬だけ遠くに感じられた。

二人だけの、静かな時間が流れる。


「リリア……君は、なぜ平気なんだ?」


アルトリア王子の問いに、私は少し笑った。

「わかりません。ただ……不思議だと思ったんです。誰も近づけない王子に触れても平気な自分が」


その笑顔に、アルトリア王子は目を細める。

そして、初めて、少しだけ笑みを返した。


――孤独だった王子の瞳に、初めて光が灯る瞬間。

王都の人々はまだ知らない。

この少女と王子の静かな関係が、やがて波紋を呼ぶことを――。


広間の時計が、重々しく時を刻む。

その音すら、二人の世界には届かないかのように、静寂は続いた。

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