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触れれば死ぬと言われた王子に、なぜか平気で触れられる令嬢  作者:


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【18話】静かな王宮で、私は立ち止まる

謁見の間を出たあと、私はしばらく言葉を失っていた。


王と重臣たちの前で交わされた契約。

そして――女王陛下が、アルトリアに触れたあの瞬間。


頭では理解しているはずなのに、心が追いつかない。


与えられた部屋に戻り、扉を閉める。

静寂が、ようやく私を包んだ。


「……はあ」


小さく息を吐く。

張り詰めていたものが、少しだけほどけた。


私は今、王宮に滞在している。

地方伯爵家の令嬢だった私が、王子の呪いに関わる“契約者”として。


――不思議だ。


怖くないわけじゃない。

むしろ、怖い。


今日向けられた視線の重さ。

私を見る重臣たちの目に宿る、疑念と警戒。


それでも。


「……逃げたいとは、思わない」


誰に聞かせるでもなく、そう呟いていた。


アルトリアの横に立ったとき。

彼が、王の前で一歩も引かずに言葉を紡いだ姿が、脳裏から離れない。


――彼は、本当に向き合おうとしている。


呪いとも、王子という立場とも、そして自分自身とも。


あの人がそう決めたのなら。

私が立ち止まる理由は、ない。


窓辺に立ち、夜の庭園を見下ろす。

月明かりに照らされた道は、静かで、どこか心細い。


「……私に、何ができるのだろう」


自問する。


特別な力があるわけじゃない。

呪いを解く術も、まだ何も知らない。


それでも――


“触れても、死なない”。


その事実が、どれほど彼を縛ってきたのか。

今日、女王陛下の震える手を見て、ようやく分かった気がした。


「私は……」


声が、少し震える。


「あなたの呪いを、怖がらないでいたい」


それは誓いでも、覚悟でもない。

ただの、願いだ。


コンコン、と控えめなノックが響く。


「……リリア、私だ」


聞き覚えのある低い声。


私は一瞬だけ迷ってから、扉を開けた。


彼はいつもの穏やかな表情をしていたけれど、どこか疲れが滲んでいる。


「少し、話せるだろうか」


「……はい、アルトリア様」


短い会話。

けれど、その距離は、不思議と近かった。


大きな一歩を踏み出した夜のあとで。

私たちはまだ、静かに並んで歩いている。


答えは、まだ先。

けれど――進む道は、もう同じ方向を向いている。

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