EP7「ゼフィール、現る__甘い銀髪が招く混乱」
今回は新キャラ「ゼフィール」が初登場します。
自由奔放で甘い空気をまとった彼が、ルシアスとカイにどう絡むのか──
メモリスの物語が少しずつ動き始めます。
記憶のかけらが降る星で___。
EP7「ゼフィール、現る」
***
白い石造りの通りを抜けた先――
妙に甘ったるい声が路地裏に響いた。
「ねぇ〜?なにしてんの〜?」
ルシアスの足が止まり、鋭い視線が声の方向を射抜く。
そこに立っていたのは、長い銀髪を揺らし、片手をひらひら振る男。
「……お前か」
「やっほー♡ 久しぶり♡」
カイは目をぱちくりさせ、首を傾げた。
「だぁれ?」
男はわざとらしく胸に手を当て、微笑んだ。
「アシュフォード・セドリック・ゼフィール。ゼフィでいいよ♡」
「ゼフィール?」
「そう、ゼフィール♡」
ルシアスの眉がわずかに動く。
「……なんでここにいんだ」
「いやぁ〜、なんかボク、セクシーすぎて? ちびなち様の監視下じゃないと仕事できなくなっちゃってさ。あぁ、美しいって罪だよね」
「……何言ってんのこの人?」カイがぽかんとつぶやく。
「無視でいい」
「了解」
「ひどぉい!♡」ゼフィールはわざと大げさに肩を落とし、次の瞬間にはカイににじり寄る。
「で、君が噂の新人くんだね♡ 可愛いじゃん」
「そ、そうっすか……?」
「くっつきたくなっちゃうな〜♡」
気づけば肩にべったり寄りかかられていて、カイは困ったように笑う。
「あ、あの……まぁ、仲良くやってきましょ、笑」
ルシアスは深くため息を吐いた。
「バカバカしい……。とりあえず薬々草をおじいさんに届けるぞ」
「あ、そうだった!」カイは慌てて荷物を抱え直す。
「ボクもついてこーっと♡」
***
老人の家に到着すると、老人が首を傾げた。
「おやおや……。これは薬々草じゃないなぁ。苦々草だ」
「まじっすか?!」カイが素っ頓狂な声を上げる。
「俺が出る前に確認すべきだった……」
ルシアスが苦い顔をした。
ゼフィールが肩をすくめる。
「薬々草なんてBELIEVER地方ならそこら中に生えてるけどね」
「そうなの?!」
「あるにはある……だが、意外と面倒な魔物が出る場所だ」
たった数分
ゼフィールと雑談していただけだった
「確かに〜」
ふと気づけば――カイの姿がなかった。
「……あれ?カイ?」
「もう探しに行ったみたいだね。可愛い子、拾ってきたじゃん♡」
「冗談言ってる場合じゃねぇ! 助けに行かねぇと!!」
ルシアスの顔が険しく歪むのを見て、ゼフィールはにやりと笑う。
「へぇ……ルシアスってあんな顔するんだ」
***
森の奥。
カイは胸元で、薄緑色に輝く草をぎゅっと抱きしめていた。
(これさえ持ち帰れば……おじいちゃんが助かる……)
だがその周囲には、小型の魔物がぐるぐると取り囲んでいた。
カイは必死に攻撃魔法を展開しようとしたが――指先が震える。
「……あれ……?」
光が途切れ、視界がにじんだ。
(やっべ……戦闘撮影しすぎて……MP切れ……)
力が抜けて膝をつき、薬々草を守るようにしゃがみ込む。
魔物たちが牙を剥き、じりじりと距離を詰めてくる。
「来んな……!」
声は震え、涙が滲んで視界がぼやける。
(でも……渡せない……これだけは……!)
その瞬間――鋭い風切り音が走り、光の刃が魔物を薙ぎ払った。
「カイ!」
響いたのは、ルシアスの声。
魔物が霧のように消え、駆け寄ってきた彼の顔は怒りと安堵が入り混じっていた。
「……何やってんだ、お前は」
「ご、ごめ……でも……これ……!」
震える掌で薬々草を差し出すカイ。
ルシアスはそれを受け取らず、代わりにカイの肩を支えた。
「……バカ。離れんなって言っただろ。命より先に差し出すもんじゃねぇ」
低く、けれど優しい声。
その響きに、カイは何も返せなかった。
そこへ遅れて現れたゼフィールが、口元をにやりと緩める。
「……ねぇルシアス。その顔、完全に保護者だよ♡」
***
ゼフィール、うるさ可愛い回でした。
ルシアスの“保護者顔”を引き出すの、完全にゼフィールの特技だと思ってます。
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