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記憶のかけらが降る星で___。  作者: 萩原 なちち
7/24

EP7「ゼフィール、現る__甘い銀髪が招く混乱」

今回は新キャラ「ゼフィール」が初登場します。

自由奔放で甘い空気をまとった彼が、ルシアスとカイにどう絡むのか──

メモリスの物語が少しずつ動き始めます。

記憶のかけらが降る星で___。

EP7「ゼフィール、現る」


***


白い石造りの通りを抜けた先――

妙に甘ったるい声が路地裏に響いた。


「ねぇ〜?なにしてんの〜?」


ルシアスの足が止まり、鋭い視線が声の方向を射抜く。

そこに立っていたのは、長い銀髪を揺らし、片手をひらひら振る男。


「……お前か」

「やっほー♡ 久しぶり♡」


カイは目をぱちくりさせ、首を傾げた。

「だぁれ?」


男はわざとらしく胸に手を当て、微笑んだ。

「アシュフォード・セドリック・ゼフィール。ゼフィでいいよ♡」


「ゼフィール?」

「そう、ゼフィール♡」


ルシアスの眉がわずかに動く。

「……なんでここにいんだ」


「いやぁ〜、なんかボク、セクシーすぎて? ちびなち様の監視下じゃないと仕事できなくなっちゃってさ。あぁ、美しいって罪だよね」


「……何言ってんのこの人?」カイがぽかんとつぶやく。

「無視でいい」

「了解」


「ひどぉい!♡」ゼフィールはわざと大げさに肩を落とし、次の瞬間にはカイににじり寄る。

「で、君が噂の新人くんだね♡ 可愛いじゃん」

「そ、そうっすか……?」

「くっつきたくなっちゃうな〜♡」


気づけば肩にべったり寄りかかられていて、カイは困ったように笑う。

「あ、あの……まぁ、仲良くやってきましょ、笑」


ルシアスは深くため息を吐いた。


「バカバカしい……。とりあえず薬々草をおじいさんに届けるぞ」

「あ、そうだった!」カイは慌てて荷物を抱え直す。

「ボクもついてこーっと♡」


***


老人の家に到着すると、老人が首を傾げた。

「おやおや……。これは薬々草じゃないなぁ。苦々草だ」


「まじっすか?!」カイが素っ頓狂な声を上げる。

「俺が出る前に確認すべきだった……」

ルシアスが苦い顔をした。


ゼフィールが肩をすくめる。

「薬々草なんてBELIEVER地方ならそこら中に生えてるけどね」

「そうなの?!」

「あるにはある……だが、意外と面倒な魔物が出る場所だ」


たった数分

ゼフィールと雑談していただけだった


「確かに〜」


ふと気づけば――カイの姿がなかった。


「……あれ?カイ?」

「もう探しに行ったみたいだね。可愛い子、拾ってきたじゃん♡」


「冗談言ってる場合じゃねぇ! 助けに行かねぇと!!」

ルシアスの顔が険しく歪むのを見て、ゼフィールはにやりと笑う。

「へぇ……ルシアスってあんな顔するんだ」


***


森の奥。


カイは胸元で、薄緑色に輝く草をぎゅっと抱きしめていた。

(これさえ持ち帰れば……おじいちゃんが助かる……)


だがその周囲には、小型の魔物がぐるぐると取り囲んでいた。

カイは必死に攻撃魔法を展開しようとしたが――指先が震える。


「……あれ……?」


光が途切れ、視界がにじんだ。

(やっべ……戦闘撮影しすぎて……MP切れ……)


力が抜けて膝をつき、薬々草を守るようにしゃがみ込む。

魔物たちが牙を剥き、じりじりと距離を詰めてくる。


「来んな……!」

声は震え、涙が滲んで視界がぼやける。

(でも……渡せない……これだけは……!)


その瞬間――鋭い風切り音が走り、光の刃が魔物を薙ぎ払った。


「カイ!」

響いたのは、ルシアスの声。


魔物が霧のように消え、駆け寄ってきた彼の顔は怒りと安堵が入り混じっていた。


「……何やってんだ、お前は」

「ご、ごめ……でも……これ……!」

震える掌で薬々草を差し出すカイ。


ルシアスはそれを受け取らず、代わりにカイの肩を支えた。

「……バカ。離れんなって言っただろ。命より先に差し出すもんじゃねぇ」


低く、けれど優しい声。

その響きに、カイは何も返せなかった。


そこへ遅れて現れたゼフィールが、口元をにやりと緩める。

「……ねぇルシアス。その顔、完全に保護者だよ♡」


***

ゼフィール、うるさ可愛い回でした。

ルシアスの“保護者顔”を引き出すの、完全にゼフィールの特技だと思ってます。

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