EP6 「パンイチたぬきとの遭遇__地球の記憶が生んだ魔物」
今日はカイの“はじめての多忙デー”回です!
魔法局の依頼処理、BELIEVER地方の冒険、そして謎のパンイチたぬき……。
ルシアスとの距離感もちょっとだけ縮まる(?)ドタバタ回になっています。
ゆっくり楽しんでいってください!
記憶のかけらが降る星で___。
EP6 「パンイチたぬきとの遭遇」
***
――魔法局で暮らし始めてから、もう一ヶ月。
だいぶ慣れてきたな、としみじみ思う。
「今日のクエスト……まとめなきゃ」
机に積まれた依頼票を前に、俺は眉をしかめた。
「えーと……家の床が壊れました、直してほしい……これはすぐ行かなきゃな」
「病気のおじいちゃんのために薬々草がほしい……これも優先度高いな」
めくってもめくっても依頼は尽きない。
「……多すぎ!」
頭を抱えながらも、必死にまとめ上げて紙束を机に置く。
「よし! なんとか終わった! 今日は寝よ!」
***
翌朝。
魔法局の執務室にて。
「今日のリストは」
無表情のまま手を差し出す編集長――ルシアスさん。
「はい!」
胸を張って渡した途端、返ってきたのは冷たい一言。
「……相変わらず汚ぇ字だな」
「てへ⭐️」
「……」
小さくため息をついた彼は紙を流し読みし、すぐに顔を上げる。
「今日は緊急性のある依頼が多いな。俺も行く」
「うっすー!」
***
最初の現場は、床が燃え落ちた家だった。
「すまんのう……。嫁さんとケンカして、つい感情的になっちまって……」
住人は頭をかきながら、焼け焦げた床を指差す。
「ちょーわかる! 炎、出ちゃいますよね!笑」
「わからん……」横から低い声。ルシアスさんの冷めた視線が刺さる。
確かにBLAZEの人たちは感情で炎を出す、って聞いたことあるけど……。わからん。
「木材持ってきましたー! あっ、おじさん!足元危ない!」
先に気づいて声をかけると、住人は目を丸くした。
「ほんと、助かるわ……ありがとうな、カイくん」
「また遊びにきますね!」
「愛されキャラ、ってやつか……」
横でぼそりと呟く編集長。その目は少し柔らかい気がした。
***
「次はBELIEVER地方だ」
移動の最中、ルシアスさんが真顔で言う。
「ここは危険が多い。俺から離れるな」
「了解……」と言った直後。
「うわ!見てください!パスタ草!!」
「はぁ……(呆)」
珍妙な植物に目を輝かせていたら――ぐいっと腕を掴まれる。
「離れんなって言っただろ」
「ご、ごめんなさい……」
そう言った矢先。
「ぐるるる……」
低い唸り声と共に茂みから現れたのは――
パンイチ姿のたぬきだった。
「ねぇ?!なんでパンイチなの?!」
「静かにしてろ。弱い魔物だから、放っておけば……」
「なんでそんなかっこしてんのー?」
興味津々に顔を覗き込む
そして人の話を聞かずに魔物に話しかけるバカ。
「ぐるぅ……」
問いかける俺に、パンイチたぬきが抱きついてきた。
「わーーーっ!!!」
「だから言っただろ……」冷静な編集長。
よく見れば、口元がもごもごと動いている。
「……呪文詠唱?」
「どうしてパンイチなの?」恐る恐る問いかけると――
「べつに」
「喋るんかい!!!!」
ルシアスさんが静かに告げる。
「魔物は“地球”という星から、人間の記憶が肉体化した存在だと言われている」
「え、地球にパンイチのたぬきがいるってこと……?」
「さあな」
「ふーん……」
その場をなんとかやり過ごし、BELIEVER地方に到着した頃には――
「お前のせいで倍かかったぞ!!」
「さーせん!!!!」
「……まったく、どこまで騒がしいんだ」
怒鳴られながら、俺は全力で頭を下げたが…
ふとルシアスの顔を見るとその口元は少しだけ笑っていた。
(あんな顔もするんだ……)
***
ここまで読んでくださってありがとうございます!
パンイチたぬき……実は今後もちょっとだけ関わります。笑
次回は新キャラ登場です!
毎日更新していくので、続きもお楽しみにっ!




