EP37「ブレイズ王、魔法局へ凸る_平和的侵入事件」
メモリスには、四つの国家がある。
それぞれ思想も文化も違うが――
共通していることがひとつだけある。
「自分が正しい」と、本気で思っていることだ。
その中でも、最も衝動的で、最も直情的で、
最も“感じたままに生きる”国家。
――THE BLAZE。
その王、レオノス。
彼は滅多に他国へ出向かない。
だが一度動けば、止まらない。
理由など関係ない。
確信があれば十分だ。
「こいつとは、絶対に気が合う」
その一言だけで、王は動く。
そして今日。
静かだったはずの魔法局に、
ひとつの嵐が近づいていた。
これは――
ブレイズ王による、ほぼ突発的な“友達探し”の物語である。
EP37「ブレイズ王、魔法局へ凸る」
記憶のかけらが降る星で___。
ブレイズ王城、玉座の間。
「……アカギ。フレア。カイ」
低く、しかし妙に楽しげな声で名を連ねたのは、ブレイズ王――レオノスだった。
「どうしました? レオノス王様」
側仕えのコマチが、いつもの穏やかな笑顔で応じる。
「こいつに会いたい。俺は」
「えっと……確か、魔法局の人間ですよね?」
「支度しろ!!」
「はい! すぐに!」
間髪入れずに言い切る王に、コマチは即答した。
――こういう時のブレイズは、止めるだけ無駄だ。
⸻
一方その頃、魔法局。
やっとメモリスについてゆったりしていたところだった。
「ねぇ〜、魔法局の番組って、何人くらい見てるの〜?」
何気ない調子でカイが聞くと、リツは少し考え込んでから答えた。
「社長から聞いた話だと……ニュースを見てる人が大半で……視聴率は、おおよそ0.01%くらい、らしい」
「0.01%って……?」
首をかしげるカイに、ルシアスが淡々と補足する。
「メモリスの人口はおおよそ一億人。0.01%なら、約一万人だな。
ちなみに、ニュース以外の番組は視聴率0.001%を下回っている」
「それって、つまり……」
「カイが撮っている《冒険者任務!》は、千人見ていればいい方だ」
「そんなに低かったとは……」
リツが苦笑する。
「そうなのぉ!!?」
カイは思わず声を張り上げた。
「魔法局は、ほとんど各国からの依頼で成り立っている組織だ。
番組は……まあ、副産物みたいなものだな」
「ううう……」
(その千人は、相当な変わり者だな)
そう内心で思いながらも、
毎週欠かさず視聴数を確認している人物が一人いたことを、カイはまだ知らない。
⸻
「なんでまた……アカギ、さんでしたっけ?」
移動中、コマチが不思議そうに尋ねる。
「あいつとは絶対に気が合うんだ……!」
根拠ゼロ、確信百パーセント。それがレオノスだ。
「てか、急に凸って平気なんですかね?」
同行していたミソラが、少し引き気味に言う。
「まぁ、なんとかなりますよ!」
「初めて来ます〜!」
「ほら、もう着きますよ〜」
魔法局の建物が見えた瞬間、レオノスは拳を振り上げた。
「今日は宴だぁ!!」
⸻
「こんにちはっ! アカギ、フレア、カイ……さん、いらっしゃいますか?」
受付カウンターで、コマチが元気よく声をかける。
「はい。ご用件は?」
「えっと……お約束はしてないんですが……来ちゃいました!」
「了解です! カイさんは……ちょうど地球から帰ってきたところで…
おそらくいらっしゃるかと。確認いたしますね!」
「まだかぁ!! コマチ!!」
背後から響く大声に、受付がびくりと震える。
「ちょっと待ってくださいよ〜!」
「……!? えぇ!?
ブ、ブレイズ王……レオノス様?!」
「カイはどこだ!!」
「す、すぐ確認を……!」
――こうして、
ブレイズ王による“平和的侵入事件”が幕を開けたのだった。
レオノスは、王である前にブレイズだ。
ブレイズは、理屈より衝動で動く。
気が合うと思ったら会いに行く。
宴にしたいと思ったら宴にする。
視聴率が低い?
千人しか見ていない?
そんなことはどうでもいい。
その千人の中に、
王がいるのだから。
カイはまだ知らない。
自分の撮った映像を、
毎週欠かさず見ている人物がいることを。
それが偶然か、運命か、
それとも“感じた瞬間がすべて”なのかは――
次の宴で、きっと分かる。
嵐は、まだ始まったばかりだ。




