EP5「ギルド試験 __正式な魔法使いになる日」
試験の日、カイが正式に「魔法局の一員」になるお話です。
ルシアスとの掛け合いも少しずつ“師弟”から“相棒”のような距離に。
それでもまだ、本人たちは気づいていません(笑)
いつもより少しだけ熱く、そしてちょっとだけ胸があたたかくなる回。
よかったら最後まで読んでいってください
記憶のかけらが降る星で___。
EP5「ギルド試験」
***
「まっなんとかなるっしょ!俺運いいし!」
試験会場の椅子に腰を下ろしながら、軽く肩を回す。
「なんとかならん。ちゃんとやれ。」
横から冷や水を浴びせるような声が降ってきた。
「なんかあったら助けてください⭐️」
「当たり前だ。」
短く即答されて、思わずきょとんとした。
(あれ……案外、優しい?)
***
試験官が問題用紙を配りながら、俺を一瞥する。
「まず筆記だ。これに合格できなきゃ魔物の試験には行けん。……ん? ルシアス、お前なんでまだいるんだ。」
「見張りです。こいつ、何するかわからないので。」
「はい?! 俺、何もしないですし!!!」
「とりあえず黙って受けろ。」
「はいい……」
***
「始め!」
合図と同時に紙をめくる。
(やっべぇ……全くわからん……なんとかならん。)
問題文の単語がまるで異国語のようだ。頭が真っ白になる。
その時――耳の奥で、小さく詠唱の響きがした。
(……え?)
気づけば、手が勝手に動いていた。ペンがさらさらと答えを書き込んでいく。
試験官がちらりとこっちを見る。
ルシアスは視線を逸らし、知らん顔をしていた。
***
「終了。」
試験官が用紙を回収し、目を通す。
「ほほう……ん? 満点だと?」
思わず苦笑いが浮かぶ俺。
(いや、これは絶対バレてるだろ……)
ルシアスは相変わらずそっぽを向いていた。
「怪しい……まぁいい。次は実技だ。魔物をぶっ飛ばしてこい。」
「うぃっす!!」
***
模擬討伐の試験場は、ギルド地下に広がる人工フィールドだった。
岩場や草地、小川まで再現されていて、空気がひんやりしている。
「制限時間は二十分。魔物は低級ばかりだが、数は多い。気を抜くな。」
試験官の声が響く。
俺を含め、受験者は四人。剣士、弓使い、回復魔法使い。全員初対面だ。
見学席には、腕を組んだルシアスの姿。
(見られてると、なんか余計に緊張するな……)
***
「開始!」
合図と同時に魔法陣が光り、毛むくじゃらの狼やトカゲ型の魔獣が飛び出してくる。
「よし、まずは――」
思わず両手を四角に構え、魔法フレームを作りかけたその時――。
「……おい。」
低い声が飛ぶ。
「え?」
「フレームはやめろ。」
試験官まで首を傾げた。
「戦闘試験で何を撮るつもりだ?」
「いや、記録は大事じゃないすか!」
ルシアスがため息をつく。
「……合格してからにしろ。」
「ですよねーー!」
しぶしぶフレームを下ろし、杖を構える。
***
戦いは順調だった。
しかし、十分が経ったころ――。
「うわっ!」
悲鳴が響く。見ると、弓使いの青年が足を取られて転び、武器を落としていた。
狼型の魔獣が一直線に飛びかかる。
(間に合うか……いや、間に合わせる!)
俺は近くの魔物を蹴散らし、全力で駆けた。
青年の前に飛び込み、腕で狼の突進を受け止める。衝撃で息が詰まるが、歯を食いしばって魔法を叩き込む。
「武器!」
転がっていた弓を拾い、青年に手渡す。
「助かった!」
「いいって! お互いさま!」
***
観客席のルシは、ほんのわずかに口元を緩めた。
(……減点になるかもしれないのに、迷わず助けに行くか。)
(馬鹿だな……だが――嫌いじゃない。)
***
制限時間いっぱいまで魔物を倒し、試験は終了した。
試験官が成績表を確認し、俺に向かって頷く。
「合格だ。正式にライセンス発行とする。」
「よっしゃ!!」
思わずガッツポーズ。
ルシが近づいてきて、一言。
「……悪くなかった。」
「え、今なんて?」
「何でもない。」
でも確かに、聞こえた。
胸の奥が少しだけ熱くなった。
***
ギルドの石造りの階段を上がると、外はもう夕暮れだった。
空は淡い紫に染まり、風が心地いい。
「……お疲れ。」
横を歩くルシが、何気なく言う。
「お疲れっす! ……あ、そうだ。」
ポケットから合格証を取り出して見せる。
「ほら! ちゃんと合格しました!」
「……それは見ればわかる。」
「いやぁ、編集長のおかげっすよ。」
「俺は何もしてない。」
「いや、筆記は――」
「……知らん。」
頬が緩む。
(否定してるけど、多分わかってるんだろうな。)
***
魔法局への帰り道。
石畳を踏む音と、街のざわめきだけが響いていた。
ふと、ルシがこちらを見た気がして顔を上げる。
「何かついてます?」
「いや。」
「じゃあ何すか。」
「……別に。」
それきり、また前を向くルシ。
でも、ほんの一瞬だけ――その横顔が柔らかく見えた。
***
魔法局の扉が見えてくる。
「これで俺、正式に魔物倒せるわけだ。」
「……ああ。今度は堂々とやれ。」
「もちろんっす!」
心の奥で、今日のやり取りが静かに反芻される。
(この人となら、きっと――
もっと面白い日々になる。)
***
最後まで読んでくださってありがとうございます!
カイの「フレーム癖」とルシアスの「面倒見の良さ」、
書いてると勝手に会話が動くようになってきました。
この回でカイは正式にライセンスを取得。
次からは「魔法局の仲間」として新しい依頼に挑みます
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