表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶のかけらが降る星で___。  作者: 萩原 なちち
5/24

EP5「ギルド試験 __正式な魔法使いになる日」

試験の日、カイが正式に「魔法局の一員」になるお話です。


ルシアスとの掛け合いも少しずつ“師弟”から“相棒”のような距離に。

それでもまだ、本人たちは気づいていません(笑)


いつもより少しだけ熱く、そしてちょっとだけ胸があたたかくなる回。

よかったら最後まで読んでいってください

記憶のかけらが降る星で___。


EP5「ギルド試験」


***


「まっなんとかなるっしょ!俺運いいし!」

試験会場の椅子に腰を下ろしながら、軽く肩を回す。


「なんとかならん。ちゃんとやれ。」

横から冷や水を浴びせるような声が降ってきた。


「なんかあったら助けてください⭐️」


「当たり前だ。」


短く即答されて、思わずきょとんとした。

(あれ……案外、優しい?)


***


試験官が問題用紙を配りながら、俺を一瞥する。

「まず筆記だ。これに合格できなきゃ魔物の試験には行けん。……ん? ルシアス、お前なんでまだいるんだ。」


「見張りです。こいつ、何するかわからないので。」


「はい?! 俺、何もしないですし!!!」

「とりあえず黙って受けろ。」

「はいい……」


***


「始め!」


合図と同時に紙をめくる。

(やっべぇ……全くわからん……なんとかならん。)

問題文の単語がまるで異国語のようだ。頭が真っ白になる。


その時――耳の奥で、小さく詠唱の響きがした。


(……え?)

気づけば、手が勝手に動いていた。ペンがさらさらと答えを書き込んでいく。


試験官がちらりとこっちを見る。

ルシアスは視線を逸らし、知らん顔をしていた。


***


「終了。」


試験官が用紙を回収し、目を通す。


「ほほう……ん? 満点だと?」


思わず苦笑いが浮かぶ俺。

(いや、これは絶対バレてるだろ……)


ルシアスは相変わらずそっぽを向いていた。


「怪しい……まぁいい。次は実技だ。魔物をぶっ飛ばしてこい。」


「うぃっす!!」


***


模擬討伐の試験場は、ギルド地下に広がる人工フィールドだった。

岩場や草地、小川まで再現されていて、空気がひんやりしている。


「制限時間は二十分。魔物は低級ばかりだが、数は多い。気を抜くな。」


試験官の声が響く。

俺を含め、受験者は四人。剣士、弓使い、回復魔法使い。全員初対面だ。


見学席には、腕を組んだルシアスの姿。

(見られてると、なんか余計に緊張するな……)


***


「開始!」


合図と同時に魔法陣が光り、毛むくじゃらの狼やトカゲ型の魔獣が飛び出してくる。


「よし、まずは――」


思わず両手を四角に構え、魔法フレームを作りかけたその時――。


「……おい。」


低い声が飛ぶ。


「え?」


「フレームはやめろ。」


試験官まで首を傾げた。

「戦闘試験で何を撮るつもりだ?」


「いや、記録は大事じゃないすか!」


ルシアスがため息をつく。

「……合格してからにしろ。」


「ですよねーー!」


しぶしぶフレームを下ろし、杖を構える。


***


戦いは順調だった。

しかし、十分が経ったころ――。


「うわっ!」


悲鳴が響く。見ると、弓使いの青年が足を取られて転び、武器を落としていた。

狼型の魔獣が一直線に飛びかかる。


(間に合うか……いや、間に合わせる!)


俺は近くの魔物を蹴散らし、全力で駆けた。

青年の前に飛び込み、腕で狼の突進を受け止める。衝撃で息が詰まるが、歯を食いしばって魔法を叩き込む。


「武器!」

転がっていた弓を拾い、青年に手渡す。

「助かった!」


「いいって! お互いさま!」


***


観客席のルシは、ほんのわずかに口元を緩めた。

(……減点になるかもしれないのに、迷わず助けに行くか。)

(馬鹿だな……だが――嫌いじゃない。)


***


制限時間いっぱいまで魔物を倒し、試験は終了した。

試験官が成績表を確認し、俺に向かって頷く。


「合格だ。正式にライセンス発行とする。」


「よっしゃ!!」


思わずガッツポーズ。

ルシが近づいてきて、一言。


「……悪くなかった。」


「え、今なんて?」

「何でもない。」


でも確かに、聞こえた。

胸の奥が少しだけ熱くなった。


***


ギルドの石造りの階段を上がると、外はもう夕暮れだった。

空は淡い紫に染まり、風が心地いい。


「……お疲れ。」


横を歩くルシが、何気なく言う。


「お疲れっす! ……あ、そうだ。」


ポケットから合格証を取り出して見せる。

「ほら! ちゃんと合格しました!」


「……それは見ればわかる。」


「いやぁ、編集長のおかげっすよ。」


「俺は何もしてない。」


「いや、筆記は――」


「……知らん。」


頬が緩む。

(否定してるけど、多分わかってるんだろうな。)


***


魔法局への帰り道。

石畳を踏む音と、街のざわめきだけが響いていた。


ふと、ルシがこちらを見た気がして顔を上げる。


「何かついてます?」


「いや。」


「じゃあ何すか。」


「……別に。」


それきり、また前を向くルシ。

でも、ほんの一瞬だけ――その横顔が柔らかく見えた。


***


魔法局の扉が見えてくる。

「これで俺、正式に魔物倒せるわけだ。」


「……ああ。今度は堂々とやれ。」


「もちろんっす!」


心の奥で、今日のやり取りが静かに反芻される。


(この人となら、きっと――

 もっと面白い日々になる。)


***

最後まで読んでくださってありがとうございます!


カイの「フレーム癖」とルシアスの「面倒見の良さ」、

書いてると勝手に会話が動くようになってきました。


この回でカイは正式にライセンスを取得。

次からは「魔法局の仲間」として新しい依頼に挑みます


感想やブックマーク、励みになります……!

よかったら「いいね」もぜひ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ