表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶のかけらが降る星で___。  作者: 萩原 なちち
49/50

EP36 「化け物と呼ばれた日_」

王は、怒りで国を守る。


炎は、恐れられ、敬われ、遠ざけられる。


だが――


炎の奥にあるものを、

覗いた者は、ほとんどいない。


それが敵であったとしても。


EP36 「化け物と呼ばれた日_」



王城の間。


赤い魔力が、空気を揺らしている。


「なぁ」


低い声が、静寂を裂いた。


「ふぁ?! お主!! どこから来やがった!!」


ブレイズ王が立ち上がる。


「侵入者よ!!」

コマチが叫ぶ。


兵たちが剣を構える。


「お主……噂のエクリプスだな…!」


「あぁそうさ」


ロイは笑う。


軽く、何でもないことのように。


「何の用だ!!」


「遊びに来ただけさ?」


「俺はお前と遊びたくなんぞないぞ!!」


ロイは、首を傾げた。


「あ、この前のバクどうだった?」


王の顔が、歪む。


「やはりお主だったか……!村のみんなの記憶をどうした…!」


ロイは、自分の胸を指差す。


「ココだよ」


空気が、凍る。


「はぁ?!」


「なぁ王様」


ロイは一歩、近づく。


「“怒り”って、どんな味だ?」


「知らぬ!!」


「なぁ見してよ。感じさせてよ」


「嫌に決まっとるだろ!!」


王の周囲の炎が、強まる。


「……そうか」


ロイは、ほんの一瞬だけ、目を細めた。


(そっと近づく)


「燃やすぞ」


炎が、爆ぜる。


「王様!!」

コマチが叫ぶ。


「今すぐ王のそばから離れろ!!」


兵が前に出る。


だがロイは、笑う。


「いいねぇ」


その視線は、王の胸元に向けられている。


「熱い。ちゃんと、生きてる」


ブレイズ王の瞳が揺れる。


「お主……何を見ている」


「記憶だよ」


ロイは囁く。


「王様の“守りたいもの”」


その瞬間、炎が暴れた。


「なっ!!」


王の炎が揺れる。


ロイは、そっと王の胸元に手をかざした。


「……あったかいね」


ぽつりと、呟く。


その頬を、一筋の涙が伝った。


「何をしておる!!」


王が怒鳴る。


「記憶をね、見てるんだよ」


「どけぇぇぇ!!!」


兵士が突っ込む。


ロイは、軽くかわした。


「エクリプスは抱擁で記憶を抜くとの情報がある!!」


兵が叫ぶ。


「王から離れろ!!」


「……」


ブレイズ王は、自分の身体を確かめる。


「……なんともないが……」


「見ただけだよ」


ロイは静かに言う。


「そんなの、いつやるかわかんねぇだろ!!近づくな!!」


兵士が吐き捨てる。


「化け物!!」


その言葉に、ロイの動きが止まった。


「……化け物……か」


小さく、呟く。


「そうか」


ロイは、王をもう一度だけ見る。


炎の奥にある、強烈な“守りたい記憶”。


仲間。

民。

失ったもの。

怒りの根。


「……いいね」


「カイ…あいつならなんて言うかな」


それだけ言って、背を向けた。


誰も追えなかった。


炎が、静かに揺れている。


ブレイズ王は、拳を握ったまま立ち尽くす。


「……あやつは、奪わなかった…」


コマチが震えた声で言う。


王は低く呟く。


「…カイ…?」


怒りとは違う、感情が混じる。


「胸の奥を、覗かれた」


ロイは、ゆっくりと去っていった。


涙の跡だけを残して。


エクリプスは奪わなかった。


王の記憶は、そこに残った。


それでも――

確かに、何かは揺れた。


“化け物”と呼ばれた存在は、

本当に化け物なのだろうか。


炎は怒りだけで燃えるのか。


そして――


もしカイがあの場にいたなら、

何と言ったのだろう。


次に揺れるのは、

炎か。

記憶か。

それとも――心か。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ