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記憶のかけらが降る星で___。  作者: 萩原 なちち
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【きおふる外伝5-1】魔法局で保育園をやることになりました

お久しぶりです。

作者、転職いたしまして相当バタバタしており更新できずでした。

なんせ、朝6時半〜夜22時前後まで家におれず…!

今日は外伝です。楽しんでってください!


___


魔法局に舞い込んだのは、討伐でも呪いでもなく――

 まさかの「保育園の人手不足」でした。


 赤ちゃんの泣き声は、魔物の咆哮より手強いのか。

 子供が好きな者、苦手な者、やたら張り切る者。

 いつもの面々が、いつもと違う“戦場”へ放り込まれます。


 笑って、わちゃわちゃして、でも少しだけ胸があたたかくなる。

 そんな保育園編、はじまります。


保育園編


 夕暮れの魔法局。

 石造りの廊下に夕日の橙色が差し込み、今日一日の仕事を終えた者たちの気配がゆるやかに漂っていた。


「はぁ……赤ちゃん可愛かったっっ!!!」


 ソファにどさりと腰を下ろし、ゼフィールは頬を緩ませたまま天井を仰ぐ。その声には、疲労よりも多幸感が滲んでいる。


「赤ちゃん??」


 書類をまとめていたカイが、ぱっと顔を上げた。


「さっき保育園に緊急出勤してきて〜♡」


 ゼフィールは指先でハートを描くような仕草をしながら、楽しそうに言う。


「急に人手が足りないということでな。掲示板経由で依頼されたんだ」


 淡々と説明するルシアスは、腕を組んだまま壁にもたれていた。表情はいつも通り硬いが、その目の奥には“やれやれ”という色がある。


「ゼフィール、子供好きだもんね。……意外と」


 リツがくすっと笑う。


「意外????」


 即座にゼフィールが食いついた。


「僕も好きだな〜♡」


 ロランは柔らかく微笑む。王族らしい余裕と、どこか人懐っこい雰囲気が混じった笑顔だ。


「俺は……苦手だ」


 ルシアスが短く吐き捨てるように言う。

 だからこそ、今日の現場は迷いなくゼフィールに任せたのだが。


「ルシアスってさ、自分の子供とか欲しくないのー?」


 何気ないカイの一言に、空気が一瞬止まった。


「……こ、こども?!」


 ルシアスの声が裏返る。


「ルシアスがパパ……ぶはっ、無理無理無理!!」


 ゼフィールは腹を抱えて笑い出す。


「カイが子供みたいなもんだもんね〜」


「産んだ覚えはない」


 即答だった。


「俺は22だ!! 子供じゃねぇ!」


「この時代、なんでもありだよ〜♡」


 ロランが楽しそうに茶々を入れる。


「バカ言ってんじゃねぇ。想像しただけで、未来の嫁さんが苦労するのが目に見える」


「な!! やってもないのに!!」


「まぁ、多少の苦労は……ね」


 リツが苦笑する。


 ――その苦労が、楽しかったりするんだけどな。


 誰にも聞こえないように、ルシアスは心の中で呟いた。



「俺さ……赤ちゃんほしい。育てたい」


 唐突に、カイが真剣な声で言った。


「いいじゃん。カイはバカだけど、その分子供は素直でいい子になりそう」


「フォローになってねぇ!!」


 だが、すぐにカイの表情は曇る。


「でもさ……俺、親のことよくわからないし、記憶もないんだ。

 そんな俺が、親になれるのかなって……」


 場の空気が、少しだけ静かになる。


「カイ」


 ルシアスはゆっくりと口を開いた。


「お前、カメラマンになった時も、やり方なんて誰も教えてくれなかっただろ」


「……!」


「親のことがわからなくたって、なれる。

 育児に参考書なんてないし、書いてある通りにもいかねぇ」


 その言葉は、不器用だが真っ直ぐだった。


「うん、ルシアスの言う通りだね」


「兄ってのも、なかなか大変なのだよ〜」


 ロランは妹の顔を思い出したのか、少し遠い目をする。


「いいなぁ……兄弟」


 ぽつりとこぼれたカイの声は、どこか羨望に満ちていた。


「俺は一人っ子だからな〜」


「大家族にしたいな!!」


「現実的な話をするぞ」


 ルシアスが指を立てる。


「子供一人育てるのに、生涯で少なく見積もっても二千万。

 四人いたら……いけるか?」


「ひ、ひぃ!!」


「ちゃんと考えないとね〜」


「母ちゃんの記憶、ほとんどないけど……親って偉大なんだな」


「もちろん。まれに毒親もいるがな」


 ルシアスの声は、どこか含みを帯びていた。



「おい。そこの雑談してる暇な男ども!!」


 鋭い声が、空気を切り裂いた。


「す、すみません! 社長!」


 現れたのは、見た目は小柄、しかし威圧感だけは誰よりも強い――ちびなちだった。


「保育園の人手が足りん。先ほどの現場もだがな」


「……つまり?」


「出勤だ」


「お、俺も……?」


「当たり前だろ」


 即答。


「だがな。一時的に魔法局内に、臨時保育所を設置する」


「臨時……保育園!?」


「今は掲示板より保育優先だ。ほんの一週間。すぐ増員する」


「何人いんの……」


「敬語使え!!」


「な、何人くらいいらっしゃるのですか!」


「……明日からだ。十五人ほど。年齢は0〜1中心だ」


「明日!?」


「今日は設営だぞ。残業わっしょーい!」


「わ、わっしょーい……」


 誰もが乾いた笑いを浮かべる中、

 魔法局は――静かに、しかし確実に“戦場”への準備を始めるのだった。



ここまで読んでくださって、ありがとうございました!


 保育園編は、魔法局メンバーの「普段の強さ」とは違う方向の強さ――

 “守る”とか、“受け止める”とか、そういう部分が見える回にしたくて書きました。


 特にルシアス。

 子供が苦手と言いながら、いちばん真面目に、いちばん不器用に向き合ってしまうタイプなので……

 本人の自覚がないところで、周り(と赤ちゃん)に刺さっていくのが好きです。


 そしてカイの「親になれるのかな」という一言。

 軽い雑談の流れから、ふっと真ん中に落ちる“重さ”って、案外こういう瞬間に出るなと思っています。

 この出来事が、彼らの中に小さな何かを残していたら嬉しいです。


 次回も、魔法局らしく――

 笑って、騒いで、ときどき刺さる。そんな日常をお届けします。


また感想などいただけたら、めちゃくちゃ励みになります!

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