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記憶のかけらが降る星で___。  作者: 萩原 なちち
39/40

EP30 「地球ってすごい」

こんにちは、なちです。


前回まで少し緊張感のある展開が続いていたので、

今回は箸休め回……のつもりで書きました。


初めての地球。

初めての行列。

初めてのラーメン。


シリアスな設定の裏で、

「知らない世界に放り込まれたら、人はこうなるよね」

という素の反応を、今回は大切にしています。


深く考えず、

くすっと笑いながら読んでもらえたら嬉しいです。

記憶のかけらが降る星で___。

EP30 「地球ってすごい」


***


「いやっほぉーーう!!!」


 着陸した瞬間、カイはもう全力で走っていた。


「……あんまり羽目を外しすぎるなよ」

ルシアスが後ろから静かに釘を刺す。


「ほんとよ。すぐどっか行くんだから」

リツがため息をつく。


(まぁ……いつもはルシアスが見ててくれたからね)

ゼフィールは心の中でそっと呟いた。


「今日は自由行動だ。好きに過ごせ」

ちびなちが腕を組みつつ宣言。


「ボク、行ってみたいところあるんだ〜♪ じゃーね♡」

ゼフィールは軽やかに消えた。


「俺も見たい店ある」

リツもさっさと反対方向へ。


「えっ?! みんな行きたいところとかあんの?!」

カイは完全に置いてけぼり。


「俺はない」

ルシアスは短く答える。


「初めてなんだから行こうよ〜〜」

「……なんか危なっかしいから俺が同行する」


「……自然な保護者ムーブ」

リツは遠くで小さくつぶやいた。


「じゃあさ!お昼食べよーよ!」

「あぁ」


「何食べたいー?」

「……。俺たち、出会って三日くらいだよな?」


「う、うん……?」


「なんでそんなにフレンドリーなんだ?」


「す、すみません!!」


「……いや、別にいいんだが」


(ルシアス……)

胸がチクリと痛む。距離は近いのに、遠い。


「あそこ、すごい並んでるな。ああいう店は――」


 気づけば、横にいたはずのカイがいない。


「……あいつ、いないし」


***


「すみません! ここってなんのお店ですか!」


 行列の先頭で、カイは完全に“観光客の顔”。


「ん?知らないのか? ここはこの辺で一番人気のラーメン屋だよ。

今日はたまたま人が少なくてラッキーだったな」


「え?! これで少ないの?!」


「あぁ。本当は……ほら、あそこの歩道橋まで並ぶからな」


「ほどうきょう……? よくわかんないけど食べたいこれ!!」


「……仕方ねぇな」

ルシアスは呆れつつ隣に並ぶ。


 カイは食券機の代わりにメニュー表を凝視していた。


「しょうゆ……? とんこつ……?」

「よくわからんな」


(なんだこいつら)

地球人たちは明らかに怪しんでいる。


「たびたびすみません笑 おすすめって……?」


「ここは家系ラーメンだからな。固め多め濃いめ白米だろ!」


「いえけい……?」


「お前ら、この辺の人じゃないだろ!」


「まぁ……はい」


「(いえけい……)」

ルシアスは小さく復唱するが意味は理解していない。


「それ頼んでみます! ありがとう!」


「おうよ!」


「いえけい……ってなんだろう。はくまいはお米のことだね!」


「頼めばわかるだろ」


***


三十分後。


「うぅ……腹減って死にそう……」


「次は俺たちだ」


店員「えーっと……クロノス……アルヴェン……?」


「はーい!! はいーー!!」

「行くぞ」


(やっぱり日本人じゃねぇな……)

周囲の客がひそひそ話をしている。


***


ラーメン屋


「やっと入れたー!!」


「……悪くない匂いだ」

ルシアスは真顔で店内を見渡す。


「注文お願いしまーす! えーと! 濃いめの――」


店員「券売機でお願いしますねー」


「け、けんばいき……?」


「あれのことだろ」


「地球って難しい……」


「俺が買ってくる」


「え?! 出てきたの紙?! これ渡すの?!」


「……たぶん」


店員「確認しまーす」


「これから作るんですかー?」

(やめろ!)

「すみません、この子バカなんで……」


店員「(なんだこの二人……)」


「麺の硬さ、脂の量、味の濃さが選べますが……」


「おれ! 固め多め濃いめ!はくまい!!」


「かしこまりました」


「同じものを」


「はい! お水と白米はセルフでどうぞ〜」


「わくわく……!!」


(……微笑んでる)

カイは気づかないが、ルシアスの口元にはほんのり笑みが浮かんでいた。


***


ラーメン到着


「おまたせしましたー! ラーメン二つ!」


「全然待ってないよー!! うわ!いい匂い!」


(メモリスでいう……パスタス星人みたいなやつか?)

ルシアスは真剣に麺を観察する。


「スープにパスタス入ってる! この黄色いのなに?!」


「変なこと言うんじゃねぇ!!」


(パスタス……?)

隣の客が吹き出しそうになる。


「いただきまーす!!」

「……いただきます」


「うめぇぇ!! なにこれ!!」


「……悪くないな」


「なにが入ってるんだろうね!」


「メモリスにはないものかもしれんな」


「決めた! おれ、ラーメン屋になる!!」


「やめておいたほうがいい」


「味覚えとかなきゃ〜」


(覚えても作れねぇだろ)

ルシアスは額を押さえる。


「あれ? はくまいは?」


「自分で取りに行くんじゃないか?」


「勝手に取っていいのかな?」


「セルフと言ってたし……」


「すげぇ!!」


 小走りで白米を盛って戻ってくる。


「うっま!! スープと合う!!!」


(家系ラーメン初めてなのか……)

周囲の客が優しい目で見守り始めた。


「声がでかい」


***


 食後。


「うー……お腹いっぱい!」


「……ごちそうさまでした」


「すみませーーん! このラーメンって――」


「やめろ!! すみません、ごちそうさまでした」


二人は早歩きで店を出る。


「変なこと聞くんじゃねぇ! 怪しまれるだろ!」


「だってぇぇ!!!」

カイは口を尖らせた。


***

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。


地球編に入ったからといって、

すぐに重たい展開ばかりになるわけではありません。


むしろ、

こういう何気ない時間や会話の中にこそ、

後から「意味」が生まれてくると思っています。


カイが感じた「地球ってすごい」という感覚。

ルシアスが見ていた、何気ない横顔。


今はまだ、

ただの日常で、ただの出来事です。


でもきっと、

あとから振り返ったときに

「あの時すでに始まっていたんだ」と思ってもらえるはず。


次回は、少しずつ物語が動き出します。

引き続き、お付き合いいただけたら嬉しいです。


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