EP29 「地球へ__存在しないはずの記憶」
※第二章突入回です。
ついに舞台は「地球」へ。
メモリスとはまったく異なる世界で、
“存在しないはずの記憶”が動き出します。
少し日常寄り、でも確実に不穏な空気を感じてもらえたら嬉しいです。
記憶のかけらが降る星で___。
EP29 「地球へ__存在しないはずの記憶」
***
白銀の宇宙船がゆっくりと大気を抜ける。
眼下には青く輝く惑星――地球。
「ここが……! 地球!!」
カイは息を呑んで額をガラスに押しつけた。
隣でルシアスは、いつものように淡々としている。
「初めて来たな」
「メモリスとは違うね〜!」
ゼフィールがきらきらした目で空を覗き込む。
「美しい……!」
ロランは、胸に手を当て感極まった顔をしていた。
「っとまぁ……。二人の問題って言ってたけど、俺たちもふつーに来てまーす」
リツが肩をすくめる。
「二人じゃ心細いからな。私は大きくは動けないし」
ちびなちが、どこか寂しそうに浮きながら言った。
「思ったより近いんだね」
「あぁ。宇宙船で六時間ほどだ」
「楽しかったー!!」
「旅行に来てるんじゃないぞ」
ちびなちの忠告は、案の定カイには届いていなかった。
「あ!! あれ! いってみよー!!」
「……聞いてないな。まぁ、少し回ってみるか――」
「ダメですよ!!」
アヤセが真横から飛んできて、強制ストップ。
「まずはNUSAにご挨拶に行くんです!」
「う……そうだったな。ルシアス、あそこのアイス買ってきてくれ」
「承知した」
「ボクも〜♡」
「こんなんで大丈夫か……?」
(リツの不安は、すごく正しい。)
――その時。
「……あれ? カイは?」
「いないね」
「はぁ……ルシアスが心配するから……」
「リツ……」
ロランが、そっと肩に手を置いた。
「あぁ……そうか……」
胸の奥が少し痛んだ。
ゼフィールは、静かに目線を落とす。
「なんか……悲しいね」
「いやでもどこ行ったんだ?」
「……あそこだよ」
ちびなちが、遠くを指さした。
「ん??」
「うわ!! ぬいぐるみが動いてる!!」
「なーにやってんだお前は……」
リツが遠くから頭を抱えた。
「ほらカイ、NUSAに行くよ」
ロランが呼びかける。
「ほら見てよ!! ぬいぐるみがさ!!」
「ルシアス戻ってきたし行くよ〜」
ゼフィールがアイスを片手に言う。
「うーーん!! また後でねー!!」
「たぶん“また”はないよ……」
リツのボソッとしたツッコミが虚空に消えた。
***
NUSA本部
冷えた廊下を抜けると、白い部屋で一人の男が待っていた。
「本日はお越しいただきありがとうございます」
「で、どうなってるんだ」
ちびなちが腕を組む。
「記憶のかけらの反応……“魔力干渉体”が異常値を観測しました」
「バカにもわかるように説明できるか?」
「はい……」
(男はカイのことを見た)
「魔力干渉体ってなに?」
「バカでもわかるように説明してくれるみたいだよ」
リツが肩を叩く。
「魔力干渉体とは――
記憶のかけらのエナジーそのものです。
地球には、本来その“記憶のかけら”が存在しません」
「あ、そっか。記憶のかけらはメモリスで生まれたものだから、地球には――」
「その通りです」
男は真剣な表情で皆を見渡した。
「ですが……今回は“存在しないはずのエナジー”が、地球側で反応しました」
――空気が固まる。
ルシアスですら眉を寄せるほどの異変。
「ありえないことです。
ですが、間違いなく……“誰か”が地球で記憶エナジーを発生させています」
「…………え?」
カイの喉が、ぎゅっと鳴った。
まるで“誰かに呼ばれている”ような、胸のざわめき。
***
第二章、いよいよスタートです。
今回はシリアス一辺倒にせず、
地球の空気や、メンバーそれぞれの反応を
少しコミカルに描いてみました。
なお、ルシアスとカイの関係については
「恋愛」というより、
過去・記憶・運命が絡み合った関係性として描いています。
これから少しずつ明らかになる
“地球と記憶の真実”を、
一緒に追ってもらえたら嬉しいです。




