EP28「地球からの呼び声」
静かだったはずの日常が、
ふとした“違和感”で崩れ始めることがあります。
理由はわからないのに、
胸がざわつく。
呼ばれている気がする。
今回のお話は、
そんな「説明できない感覚」から始まる回です。
物語はここから、
ゆっくりと次の章へ向かって動き出します。
記憶のかけらが降る星で___。
EP28「地球からの呼び声」
***
MD3戦から数日後。
魔法局の朝は、静かに始まった。
――はずだった。
「社長?!そんな顔してどうしたの!」
カイが駆け寄る。
いつも飄々としている局長の表情が、今は深刻に沈んでいた。
「……地球からだ。『NUSA』が、魔法局に正式要請を出した。」
「……地球?」
その単語は、カイには重さを持たず、ただの“未知の国名”のように聞こえる。
だが――
ルシアスの胸が、理由もなくざわついた。
(……なんだ、この……嫌な感じは)
説明されても地球に思い当たる記憶はない。
けれど、喉の奥に何か引っかかったような苦しさが続いていた。
***
「要請はこれだ」
ちびなちは、透明な魔導スクリーンを展開する。
《NUSAより通達
“地球圏にて異常値を観測。
魔力干渉体《記憶のかけら》らしき反応あり。
至急、魔法局の派遣を求む。”》
「……記憶のかけらが?!なんで地球に?」
「わからん。」
ちびなちは淡々と答える。
「ただ……地球は、かつてメモリスと深く関わった場所だ。」
その言葉に、ルシアスは眉をひそめる。
「……俺は、知っているのか?」
「覚えていないだけだ。
本来なら、お前が最も向かうべき場所だった。」
「どういう――」
ルシアスの声が揺れた瞬間。
カイが胸を押さえて膝をついた。
「カイ?!」
「……なんでだろ……急に……胸が……」
熱が、身体の奥で弾けるように広がる。
“何か”に呼ばれている――そんな感覚だけが、やけに鮮明だった。
(これ……どこかで……)
脳裏に浮かぶのは、知らない景色。
青い空。白い街。
誰かの笑い声。
「幸せに…」
かすかに、誰かの声が聞こえた。
「カイ! しっかりしろ!」
ルシアスが肩を支える。
触れた瞬間、ふたりの間に微弱な光が走った。
「今の……」
ルシアスの胸にも、同じ痛みが走る。
彼の中に眠る“記憶のかけら”が、カイの《地球の記憶(両親の記憶)》に反応したのだ。
***
「……これは、まずいな。」
ちびなちは静かに言った。
「カイ、お前の中に……地球が呼んでいる“何か”がある。」
「呼んでる……?」
「それが何かは、まだ言えない。
だが――行けばわかる。」
カイは拳を握った。
「行く。俺……行かないといけない気がする。」
ルシアスが言葉を失ったまま、カイの横顔を見つめる。
理由はわからない。
でも、胸が痛い。
(行くな……と……言いたいのか? 俺が?)
喉まで出かかった言葉を、どうしても口にできない。
「ルシアス、お前も行け。」
「……俺も、か?」
「あぁ。お前の中の《記憶》も反応している。
これは、お前たち二人の問題だ。」
ルシアスは息を呑んだ。
“二人の問題”
その響きが、なぜか心臓の深いところに刺さった。
「……わかった。行こう。」
「ルシアス……!」
カイとルシアスの視線がぶつかる。
知らない記憶が、お互いの中で疼き始めていた。
それは、ふたりの“過去”と“運命”が――再び交差しようとする前触れだった。
***
次回、
EP29「地球へ」
――物語は、第二章へと突入する。
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ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
EP28は、
第二章へ向かうための“予兆”の回でした。
まだ多くは語られていませんが、
ルシアスとカイ、それぞれの中で
確かに何かが目を覚まし始めています。
「なぜ胸が痛むのか」
「なぜ地球なのか」
その答えは、これから少しずつ明らかになります。
次回、
EP29「地球へ」
物語は、新たな舞台へ――
そして、過去と向き合う章へと進みます。
また続きを読んでいただけたら嬉しいです。




