【きおふる外伝4前半】「カイのミスと、扉の外の男」
任務続きのカイに起きた“小さな失敗”。
ただのミスだけど、本人にとっては重い傷。
そこに寄り添うリツ、そして――扉の外の男は……?
日常の中の、ちょっと切なくて、ちょっと可愛い話です。
ではどうぞ。
任務明けの夜。
テーブルに突っ伏すカイの横顔は、普段の明るさからは程遠かった。
「……はぁ」
久々のクエストだった。
気合も入っていた。だからこそ――
(助けるつもりだったのに、逆に危険に晒してしまった)
「俺……助けたかっただけなのに……」
言葉にした瞬間、胸の奥で固まっていた後悔が溶け出す。
「う、うぇ……う、うう……」
大きな体を震わせ、泣くのをこらえきれない。
そんな時、足音。
リツが静かにカイを覗き込む。
「カイ?」
涙で濡れた目が上を向いた。
「リツぅ……うう、うぇぇぇ……」
幼子のように縋る声。
「まだ気にしてんの?」
「だってぇ……うう……」
声にならない言い訳。責められたいわけじゃない。ただ、自分が許せない。
リツは一瞬だけ息をつくと、腕を広げた。
「おいで」
その一言で、カイの理性は崩れた。
「うわぁぁぁぁん!」
涙も嗚咽も止まらず、リツに抱きついたまま泣きじゃくる。
「よしよし。次、頑張ればいいよ。お前が優しいのは知ってるから」
責めもしない、嘲りもしない。
ただの“肯定”。
その優しさに触れた瞬間――カイはさらに泣いた。
***
扉の向こう。
影がひとつ、静かに佇んでいた。
ルシアス「……。ふん」
短い息遣いには、複雑な色が混ざっている。
そこへゼフィールがひょこっと顔を出す。
「ん?どうしたの~?ん?」
「なんのことだ」
ルシアスは視線を逸らす。
ゼフィールはニヤッと笑った。
(あー、これは面倒くさいスイッチ入ったやつ♡)
――だが、言わない。
放っておいた方が絶対面白いし、本人が一番わかっていないから。
リツの腕の中では、まだカイが泣いている。
そして扉の外の男は、誰にも言えない感情を抱えたまま立ち尽くしていた。
「……(また俺の出る幕じゃないのか)」
リツの腕の中で泣きじゃくるカイを、扉の隙間から見つめながら――
ルシアスは、気づけば口が動いていた。
ルシアス(小声)
「……そんなに辛いなら……慰めてやっても、いい……」
ほとんど囁きに近い声。
本人は言った瞬間、ハッとして息を呑んだ。
(……は? 俺、今……何言った?)
動揺が顔に出る前に、カイが涙目のままこちらを振り向いた。
カイ「……ん? 今、誰か……?」
目が合う。
カイは泣き腫らした目で、小さく首を傾げた。
カイ「ルシアス……? なんか言った……?」
その瞬間、ルシアスの心臓が跳ねた。
ルシアス
「な、何も言ってない。戻れ」
あまりにも早口で、あまりにも不自然。
カイ「え……?(絶対なんか言ったやつだ…)」
リツは横目でそのやり取りを見ながら、心の中でつぶやいた。
リツ(……ああ、これは面倒くさいやつだ)
小さな呟きが、静かな廊下に消えていった。
***
翌朝の魔法局。
空気はいつも通り――のはずだった。
「おはよーございまぁす……」
眠そうに入ってきたカイ。
その横を通るルシアスは、やたら短い返事をした。
「……おはよう」
(あれ?なんか怒ってる……?)
カイが首をかしげた瞬間、リツが耳元で囁く。
「“しらっ……”としてるけど、絶妙に機嫌悪いね、アレ」
「え?なんで?」
「さぁ?笑」
***
翌日
業務開始。
カイがクエスト資料を提出すると、ルシアスは淡々と受け取る。
「……問題ない。次」
冷たいというより、“距離を置く”態度。
「俺なんかした……?」
カイはこっそりリツに聞いた。
「してない。昨日泣いてただけ」
「だからだよ!!!!」
ゼフィールが後ろから乱入。
「は????」
ゼフィールはニヤニヤしながら言った。
「昨日ずーっとリツに抱きついて泣いてたじゃん?
あれ見て、ルシアスが面白いわけないでしょ♡」
「な、なんで俺が悪いの?!俺悪くないよね?!」
「本人が理由に気づいてないと思うよ」
ゼフィールは悪魔の笑み。
「……嫉妬では?」
リツが爆弾を落とす。
その瞬間――
「ゼフィール、リツ。無駄口叩くなら廊下でやれ」
低い、しかし明らかに怒っている声。
「ほら出た~」第1ゼフィール(喜)
「まぁ、そういうことだね」第2リツ(冷静)
「なんで俺のせいなのぉぉ!!」カイ(混乱MAX)
ルシアスは最後まで認めない。
「……別に機嫌が悪いわけではない」
――いや、めちゃくちゃ悪い。
しかも耳がほんのり赤い。
ゼフィールは小声で囁く。
「ほら~~~♡ バレバレ~~~♡」
「うわぁぁぁぁん!!」
カイの叫びが魔法局に響いた。
***
・カイのメンタル弱男回
・リツの癒しお兄さん力
・ゼフィールの実況者ムーブ
・ルシアスだけが不器用の極み(推せる)
という最高の組み合わせでした。




