EP27「初対面のはずなのに__壊れた時計が呼び起こすもの」
今日は第二期の中でも特に重要な “ルシカイの再会シーン” になります。
記憶を失ったルシアス と
忘れられた側のカイ。
ふたりの距離の“最初のずれ”を描いた話です。
壊れた時計に込められた想いが、じわじわ胸を締めつける回なので、
ゆっくり読んでいただけたら嬉しいです。
では、本編へどうぞ。
記憶のかけらが降る星で___。
EP27「初対面のはずなのに__壊れた時計が呼び起こすもの」
***
MD3との激闘から一夜明けた魔法局は、いつもの萬屋へと戻ってきていた。
軋むドアが開いた瞬間、場の空気が弾ける。
「ドラーンのおっちゃあああん!!」
「おうカイ!またローブ破って帰ってきたな!ハッハ!」
カイは子どものように駆け寄り、破れたローブを見せつける。
「今回はMD3だったんだよ!やばかったんだって!」
「見りゃわかる。よく生きて帰った。……偉いぞ」
その言葉に、カイの表情が照れくさくほころんだ、――その時。
──カラン、と小さな音が響く。
「あ……編集長……!」
扉の向こうに立っていた長身は、視線だけで場の温度を変えた。
「お?ルシアス!相変わらずボロボロだなぁ!」
「ドランさん。いつも通りお願いします」
「任せとけ!……ん? そういやお前ら初対面だったか?」
その一言で、空気が凍った。
「……え」
「あぁ。さっき初めて会った。」
カイの肺が一瞬止まる。心臓が落ちたように重くなる。
すぐ隣で、ドランは気にも留めず笑っている。
「ルシアスは無口だけどいいやつだからな!仲良くしてやれよ、カイ!」
「……うん。そうだね」
言葉は口から出た。
けれど声は、どこにも届いていない気がした。
ルシアスは、理由もなく胸がざわつくのを止められなかった。
カイと目が合った瞬間――焼けつくような痛みが走る。
知らないはずの少年。
けれど、失いたくないと感じてしまう少年。
(なんだ……これは……?)
無意識に視線が離れない。
カイもまた、必死に平静を装いながら目をそらした。
ドラン
「仲良くしてもらえたら俺も嬉しいや!ん?ルシアス、時計までぼろぼろになってるぞ?直すか?」
ルシアス
「あぁ……時計……。」
カイ(胸がきゅっと締め付けられる)
(それ……俺が、初めて誕生日にあげた……)
けれど、その言葉は飲み込んだ。
ルシアス
「この時計……元通りになりますか。」
何気ない調子を装っていても、その手つきだけはやけに丁寧だった。
まるで、大切な“何か”を守るように。
カイ
(……覚えてないのに。
それでも、そんなふうに持つんだ……)
ドラン
「見せてみぃ」
ルシアス
「どうしても……直してほしい。」
“どうしても”――その一言が、カイの胸を刺す。
(……誕生日のことも、手紙のことも、全部忘れてるくせに)
悔しくて、でも少しだけ嬉しくて。
感情の名前が混線して、息が苦しくなる。
ドラン
「変わった時計だなー。モノを取り寄せればいけるなー」
ルシアス
「頼む。」
カイは、壊れた時計から目を離せなかった。
自分の知らないところで、それが“守られていた”事実だけが
今の自分をかろうじて支えていた。
***
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
今回のテーマは 「覚えていないのに、守ってしまうもの」。
ルシアスはもうカイの記憶を持っていないはずなのに、
それでも時計を壊したくない、直したいと思った。
それは“記憶”ではなく――
心だけが覚えている何か。
第二期は、こういう “無意識の絆” が少しずつ表に出てくる回が続きます。
次回もぜひお楽しみに。
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