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記憶のかけらが降る星で___。  作者: 萩原 なちち
34/40

EP27「初対面のはずなのに__壊れた時計が呼び起こすもの」

今日は第二期の中でも特に重要な “ルシカイの再会シーン” になります。


記憶を失ったルシアス と

忘れられた側のカイ。


ふたりの距離の“最初のずれ”を描いた話です。


壊れた時計に込められた想いが、じわじわ胸を締めつける回なので、

ゆっくり読んでいただけたら嬉しいです。


では、本編へどうぞ。


記憶のかけらが降る星で___。

EP27「初対面のはずなのに__壊れた時計が呼び起こすもの」


***


 MD3との激闘から一夜明けた魔法局は、いつもの萬屋へと戻ってきていた。

 軋むドアが開いた瞬間、場の空気が弾ける。


「ドラーンのおっちゃあああん!!」


「おうカイ!またローブ破って帰ってきたな!ハッハ!」


 カイは子どものように駆け寄り、破れたローブを見せつける。


「今回はMD3だったんだよ!やばかったんだって!」


「見りゃわかる。よく生きて帰った。……偉いぞ」


 その言葉に、カイの表情が照れくさくほころんだ、――その時。


 ──カラン、と小さな音が響く。


「あ……編集長……!」


 扉の向こうに立っていた長身は、視線だけで場の温度を変えた。


「お?ルシアス!相変わらずボロボロだなぁ!」


「ドランさん。いつも通りお願いします」


「任せとけ!……ん? そういやお前ら初対面だったか?」


 その一言で、空気が凍った。


「……え」


「あぁ。さっき初めて会った。」


 カイの肺が一瞬止まる。心臓が落ちたように重くなる。

 すぐ隣で、ドランは気にも留めず笑っている。


「ルシアスは無口だけどいいやつだからな!仲良くしてやれよ、カイ!」


「……うん。そうだね」


 言葉は口から出た。

 けれど声は、どこにも届いていない気がした。


 ルシアスは、理由もなく胸がざわつくのを止められなかった。

 カイと目が合った瞬間――焼けつくような痛みが走る。


 知らないはずの少年。

 けれど、失いたくないと感じてしまう少年。


(なんだ……これは……?)


 無意識に視線が離れない。

 カイもまた、必死に平静を装いながら目をそらした。


ドラン

「仲良くしてもらえたら俺も嬉しいや!ん?ルシアス、時計までぼろぼろになってるぞ?直すか?」


ルシアス

「あぁ……時計……。」


カイ(胸がきゅっと締め付けられる)

(それ……俺が、初めて誕生日にあげた……)


 けれど、その言葉は飲み込んだ。


ルシアス

「この時計……元通りになりますか。」


 何気ない調子を装っていても、その手つきだけはやけに丁寧だった。

 まるで、大切な“何か”を守るように。


カイ

(……覚えてないのに。

 それでも、そんなふうに持つんだ……)


ドラン

「見せてみぃ」


ルシアス

「どうしても……直してほしい。」


 “どうしても”――その一言が、カイの胸を刺す。


(……誕生日のことも、手紙のことも、全部忘れてるくせに)


 悔しくて、でも少しだけ嬉しくて。

 感情の名前が混線して、息が苦しくなる。


ドラン

「変わった時計だなー。モノを取り寄せればいけるなー」


ルシアス

「頼む。」


 カイは、壊れた時計から目を離せなかった。

 自分の知らないところで、それが“守られていた”事実だけが

 今の自分をかろうじて支えていた。



***

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


今回のテーマは 「覚えていないのに、守ってしまうもの」。


ルシアスはもうカイの記憶を持っていないはずなのに、

それでも時計を壊したくない、直したいと思った。


それは“記憶”ではなく――

心だけが覚えている何か。


第二期は、こういう “無意識の絆” が少しずつ表に出てくる回が続きます。

次回もぜひお楽しみに。


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