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記憶のかけらが降る星で___。  作者: 萩原 なちち
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【きおふる短編3】「ギルド嬢が風邪をひいた日」

ギルドという場所は、いつも喧騒と依頼であふれている。

だが――受付嬢がひとり欠けるだけで、世界はこんなにも騒がしくなるらしい。


本編では語られない、魔法局の日常のひと幕。

ルシアスが不器用に学び、カイが自由に笑い、冒険者たちが行き交う。

そんな「働く彼ら」の姿を、今日はちょっとだけ覗いてみてほしい。


いつもの戦いも、記憶の謎もない。

ただの、平和で大騒ぎな一日だ。


それでは――本日の短編をどうぞ。


【きおふる短編3】「ギルド嬢が風邪をひいた日」


***


夕方のギルドは、いつもより静かだった。

受付カウンターの前に立つルシアスが、腕を組んで小さくため息をつく。


「……というわけで。今日はギルド嬢が風邪をひいてしまった。」


椅子に座っていたカイが、ガタンと小さな音を立てて顔を上げる。


「えっ、大丈夫かなぁ。」


「まぁ、それもそうなんだが――」

ルシアスは、そこで一度間を置き、じろりとカイを見る。


「……今、ギルドがどうなってると思う?」


その瞬間、カイの顔がひくりと引きつった。


「……ハッ。」


「そういうわけだ。」


ルシアスが淡々と告げると、カイは椅子から飛び上がる。


「まじかよ……!」


「さぼんなよ。」


「はい……」



◆ ギルド接客スタート!


カイは一気にテンションを切り替え、カウンターに身を乗り出した。


「へーい!いらっしゃーい!!どの討伐いくー?どれ受けるー!?」


隣ではルシアスが、クエスト表を手に冷静に案内している。


「あなたの現在ランクなら……これが最適だ。だが、決めるのは自分だ。」


「ルシアス固いな〜w」

カイが小声で笑うが、ルシアスはまったく気づいていない。


「……そうか?」


そこへ冒険者が駆け寄ってきた。


「お!そのクエストいく?あそこ変な魔獣いるから気をつけてね!」

「ありがと!行ってくる!」


「……あっ!ライセンス見せてねー!!」


ルシアスは一連の流れを眺めながら、ひそかに思う。


(……あいつ、接客うまいな。)



◆ 不器用な観察と、学ぶ姿


「すみませーん……」

小柄な冒険者が控えめに声をかけてきた。


「……」


ルシアスは気づかなかった。


(……うーん。これがシンカーとブレイズの違いか?

ちゃんと論理的に答えを整理しているのに、なぜだ……?

なぜあいつのほうが話しかけやすいんだ……?)


「……あのう……」


(どうしたら……カイみたいに接してあげられるんだ……?)


その時。


「ルシアス!」


「ハッ!」


カイの声に弾かれ、ルシアスはようやく冒険者に目を向けた。


「冒険者さん、困ってるよ!笑」


「す、すまん……。どの、クエスト……受ける……?」

ぎこちない口調で向き合うルシアス。


カイは腹を抱えて笑い出す。


「なんかルシアス変wwwwww」


「……ほっとけ。」


ルシアスは視線をそらしつつも、どこか少しだけ照れていた。


その様子を見ていた冒険者が、ふっと笑みをこぼす。


「ありがとう。……なんか、いいギルドだね。」


ルシアスは返事をしなかったが、カイは満面の笑みで胸を張った。


「だろー?!」


ギルド嬢の突然の欠勤から始まった今回の外伝。

思っていた以上に、ルシアスの“接客が壊滅的”であることが露呈した。


論理的に動くシンカーと、感覚で飛び込むブレイズ。

ふたりの差がもっともはっきり表れるのが、

実は「仕事よりも、人との距離感」なのかもしれない。


だが――冷静な目の奥で、

カイの背中をしっかり観察していたルシアスの姿もあった。


不器用で、でも確実に学んでいく。


そんな彼らの関係が、私はとても好きだ。


次の外伝では、また違う“日常の魔法局”を描けるはず。

あなたの好きな彼らの一面が、またひとつ増えますように。

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