EP24 「禁呪、灼陽崩撃——崩れた静寂と“取り戻せないもの”」
メモリス全土を揺るがす“改造獣MD3”の出現。
魔法式が効かず、物理だけが通るという前代未聞の敵に、魔法局は追い詰められていく。
そんな中――
カイの暴走。ルシアスの取り乱し。
そして、THINKERでは本来使えないはずの“炎式”。
誰も知らなかったルシアスの“禁呪”がついに明かされる回です。
メモリス史の中でも重要な転機となる場面。
少し長めですが、ぜひ読んでください。
記憶のかけらが降る星で___。
EP24 「禁呪、灼陽崩撃——崩れた静寂と“取り戻せないもの”」
***
「分析完了……!」
アヤセの声が震えていた。
「MD3、魔法式は全部吸収されます。
ただし――物理攻撃なら、通る可能性があります!」
「じゃあ俺が……!」
カイが一歩前に出る。
「カイ!! 言っただろ、無茶するな!!」
ルシアスの怒号が響いた。
「俺がやらねぇで誰がやるんだ!!
あんな奴……ぶっ倒してくる!!」
「お前が行ったって死ぬだけだ!! 引けッ!!」
「喧嘩してる場合じゃない!」
リツが叫ぶ。
ゼフィールが両手を広げて言う。
「最適解を出そうよ。まずは落ち着いて。」
ルシアスは深く息を吸い、眉を下げた。
「……すまない。感情的になってしまった。」
カイも視線を落とした。
「……ごめん。」
ロランが前に出る。
「ボクはMD3が攻撃してきた時、すぐ盾を展開できるように準備しておくよ。」
「物理しか効かない……?」
ルシアスは空気を読むように目を細めた。
「演式も、闇式も……無謀か。」
「ボクもルシアスもTHINKER。
物理に直結する魔法なんて使えない。」
ゼフィールは悔しそうに唇を噛む。
「できるのは炎式の上級魔法だけ……」
リツが視線をカイへ向ける。
「つまり……カイしかいない。」
「やっぱ、俺が――!!」
カイが杖を握りしめる。
「カイは打てて3〜4発が限界だよ。」
ゼフィールが冷静に告げた。
その瞬間だった。
もうそこに、カイの姿はなかった。
「カイ!!!」
ルシアスの叫びが大地を裂く。
***
「炎式《爆閃衝》!!」
「炎式《烈火牙》!!」
「炎式《焔乱葬》!!」
カイの上級炎式が連続で叩き込まれる。
MD3の金属皮膚に火が食い込み、爆炎が上がる。
「まずい!!」
リツが叫ぶ。
「あんな連発したら……魔力の枯渇か、記憶の喪失か……!」
「……でも攻撃は通ってる。間違いなく。」
ゼフィールの声が震えた。
ロランが歯を食いしばる。
「カイ……この子、どっちが先に限界が来る……?」
嫌な未来が、リツの脳裏に閃く。
「ルシアス、やめろ。」
リツが低い声で言った。
「黙れ。」
ルシアスが一切こちらを見ずに返す。
「なに?」
ゼフィールが眉を上げた。
「お願いだ……行かないでくれ。
今行ったら、お前まで崩れる……!」
「やめない。」
ルシアスの声は、決壊した感情を押し殺していた。
ロランが割って入る。
「全員冷静になって! このままじゃ勝てないよ!」
***
その時――
巨大な影がカイを飲み込んだ。
「うあっ!? 離せ、このバカモグラぁぁ!!!」
カイがMD3に捕まれ、宙吊りになる。
「カイ!!!」
(……ルシアスは“取り乱していた”。
これまで見たこともないほどに。)
「ルシアス!冷静になれ!」
リツが叫ぶ。
「俺はいつでも冷静だ。」
低い声が返る。
「そんなわけない!! 今のお前は――!」
リツが一歩踏み出し叫ぶ。
「カイのことになると感情で動く!!
だから危ないんだよ!!」
「……カイ。」
ルシアスが静かに言う。
「今すぐこっちに来い。」
「嫌だ!!」
カイは逆に叫んだ。
「俺が倒すんだ!!
みんなの記憶を守るんだよ……ッ!!!」
リツは必死に腕を伸ばす。
「ルシアス!! 他にも方法がある!! 戻ってこい!!」
ルシアスの返事は――風よりも静かで、鋼よりも重かった。
「俺はカイを助ける。
どんな手を使ってでも。」
言い残して、彼はMD3へ向かって走りだした。
「ルシアス!!!!!」
リツの叫びが虚しく響いた。
***
カイは血を流し、意識が揺れていた。
「……俺は……平気だから……」
声が震える。
(平気なわけ……ねぇだろ……!)
ルシアスの目が――氷のように冷たく光った。
「炎式……」
ゼフィールが目を見開いた。
「は……? ルシアスが炎式……?
あいつ、THINKERなのに……?」
「THINKERは炎式なんて使えない……!」
リツが蒼白になる。
「あんなの使ったら…………!」
「ルシアス!! やめろ!!」
ロランが手を伸ばす。
だがルシアスは振り返らない。
「炎式――」
その瞬間、彼の魔力色が変わった。
蒼白いTHINKERの魔力が、赤い陽炎へと変貌する。
「《灼陽崩撃》。」
轟――!!
太陽が落ちてくるような光が
MD3を貫き、抉り、爆散させた。
MD3は悲鳴をあげることもできず
ゆっくりと――崩れ落ちた。
「はぁ!?
俺のMD3が……!?」
ロイの悲鳴が響いた。
***
ルシアスの炎式《灼陽崩撃》。
本来なら“使えない”どころか、“使ってはいけない魔法”です。
THINKERの魔力は論理と演式に特化しているため、
炎式のような感情寄りの魔法を扱うと反動が大きく、身体や記憶が崩れる危険があります。
それでも彼は迷わず使った。
理由はただひとつ。
「カイを助けるため」
この一言に尽きます。
次回、MD3戦の後処理、そしてルシアスの反動がどう現れるか。
さらにロイの狙いが明らかになります。
いつも読んでくれてありがとう。
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