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記憶のかけらが降る星で___。  作者: 萩原 なちち
3/25

EP3「もう引っ越しですか?! __ 魔法局の新しい日常 __」

今回は少し日常回です!

カイが魔法局の仲間として本格的に動き始めるお話。

ルシアスの意外な一面もちらり。

記憶のかけらが降る星で___。

EP3 「もう引っ越しですか?!」


***


――飲み会の終わり。

テーブルには空になったジョッキや皿が乱れていて、笑い声がまだ残っていた。


「ふぇーー……結構酔っちゃった……」

自分でもわかるくらい、声がふにゃけている。


ふにゃっと笑いながらグラスを置いた


「……気をつけて帰れよ」

ルシアス編集長は、ほとんど表情を崩さずにそう言った。


「編集長こそ、気をつけてください、笑」


「ルシアスさん……相当弱いですからね、笑」

アヤセさんが意味深に笑い、リツさんが肩を竦める。


「家まで連れて帰ってやるかー……」

「すまん……」


(怖そうな人だと思ってたけど……なんだかんだ優しい人だったな)


***


自分の部屋に帰り、靴を脱ぎ捨てると同時にベッドに倒れ込んだ。

「頭ぐわんぐわんするー……って、あれ?! 明日何時に行けばいいんだ?!」


一瞬焦ったが、すぐに(たぶん怒られるけど、まぁいいか。)と開き直る。

そのまま、意識は暗闇に落ちていった。


***


「んん……」

カーテン越しの光が目に入る。


(もう9時か……準備しなきゃ)


シャワーで寝癖を流し、髪から滴る水をタオルで拭きながら出勤準備。

服を整え、急ぎ足で魔法局へ向かう。


***


「おはよーございまーーす!」

息を整えて挨拶すると、すぐに低い声が返ってきた。


「遅い」


「すみませんっ!」

「あぁ……確かに昨日伝えてなかったな。すまなかった。」


(あ、怒られてない……?)


「とりあえず今日、緊急会議を行う。会議室まで行くぞ」


この人は……本当に操り人形みたいだ。

無駄のない動き。まるで、感情よりも“正しさ”を優先しているみたいだ。


「了解っす!」


無駄のない足取りで会議室へ向かった。


(いや……歩くのはやっ!脚長すぎだろ!)

※ルシアスは190センチあります。


(遺伝ってやつか……俺の両親、覚えてないからなぁ。きっとそんなに大きくなかったのか。)


***


会議室には既にリツさんがいた。

「急になんだ? 会議って」


ルシアス編集長は席につき、全員を見回す。

資料をめくり、ゆっくりと話し始めた。

いつも通り冷静だが、気のせいか言葉の端に期待が滲む。


「本日集まってもらったのは……寮の開設についてだ」


「寮?」

リツさんが眉を上げる。


「メンバーも増えたことだし、うちは始業時間が早い。なので寮の開設を行うこととなった。社長にも話してある」


「たしかに……あったら楽かも」


「え?! 俺、一昨日BLAZEからこっちまで引っ越してきたばっかなんだけど……笑」

思わず笑いながら抗議する。


「引っ越し代やらなんやらは全て負担する。いいな?」

「はい……笑」


「4階フロアが男子部屋、5階フロアが女子部屋になっている」

「各部屋を準備したから自由に使ってくれ」


「水道光熱費などはこっち持ちだ。その代わり」


「その代わり?え、なになに怖いんだけど!」


「洗濯、ご飯、掃除を当番制で行ってもらう」


「まじかよ……笑」


(寮生活…。絶対楽しい…!編集長も男子寮なのかな…?)


「それについてはまた次回話し合う、今日は解散だ」

「了解」


  (まさか、また引っ越すことになるとは……)

  でも今度は――誰かと一緒に、だ。



***


みんなが立ち上がり、部屋を出ていく。

俺も席を立とうとしたそのとき――


「カイ」

背後から低く落ち着いた声が飛んできた。


「はい!」


「カメラマンの一日の流れを説明する」

「あ、お願いします」


ルシアスは淡々と話し始めた。


「七時半からやることリスト作成。市民からの小依頼や、討伐・修理依頼を整理して俺に提出する」

「はい」


「九時から任務の準備。魔法フレームの試運転。レンズは魔法で透過率を上げろ」

「わかりました」


「正午から現場撮影。討伐任務や災害現場の記録もある。危険な場所では護衛がつくが、それでも油断するな」

「護衛……なるほど」


(そんな危ない仕事あんの……?!)


「午後は撮影した素材の整理と編集。局の広報部と連携して、発表用のデータを作る」

「編集もやるんですね」


(カメラマンだけじゃないんだなぁ……)


「十六時からは追加撮影か、局内の日常記録。重要な会議や研究の記録も含まれる」

「はい」


「夕方は撮影データをまとめ、やることリストを再確認して日報を提出。それで業務終了だ」

「了解です!」


ルシアスは最後に一言だけ、視線を向けた。

「――お前の仕事は記録することだ。誰かのために、何かを残す。それを忘れるな」


「……はい」

その言葉は、胸の奥にしっかりと響いた。


***

***

読んでくださってありがとうございます。


寮生活と日常――“仕事”ではなく“居場所”ができていく回です。

ルシアスの言葉、「誰かのために何かを残す」はこの作品全体の核心でもあります。


次回はいよいよギルド試験編。

星のルールと、カイの本当の力が少しずつ明かされていきます。


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