【きおふる短編2】「魔法学校クリスマス前夜事件」
今年もメモリスに、ひと足早い“クリスマス”がやってきました。
本編とは少し離れた、小さな事件と、ほんの少しの優しさ。
今回は、魔法学校のクリスマス準備中に起きた“前夜事件” をお届けします。
飾り付けにテンションが上がるカイ。
それを静かに見守るリツ。
そして、普段は冷静なルシアスが――まさかの反応を見せてしまう、小さな騒動。
キャラクターたちの距離感や、普段見えない素の表情を楽しんでいただけたら嬉しいです。
外伝だからこそ描ける、ささやかな冬の物語をどうぞ。
【きおふる短編2】「魔法学校クリスマス前夜事件」
***
放課後の魔法学校は、いつもよりざわついていた。明日はゼフィール主催のクリスマスイベント。生徒も職員も飾り付けで大騒ぎだ。
「よーし!!飾り付け!!作るぞーー!!」
カイはやる気満々で机に向かい、赤色の紙を勢いよく広げた。
「……くりすます?だっけ?」
リツが首を傾げる。
「うん!ゼフィール主催!なんか力入ってるらしい!」
「明日提出だぞ。しっかりやれ」
ルシアスが腕を組んで見下ろす。
「「うっす!!」」
その瞬間だけは、信じられないくらい声が揃っていた。
***
「カッターって使いにくいな……」
「そうかな?カイが下手なんじゃない?」
「いやそんな真顔で言うな!!」
カイはぶつぶつ文句を言いながら紙を切り始める。
(あ、線まで燃やしてみよ……)
「カイ?」
「えっ、俺なにもしてないけど!?!?」
「燃やしてみようとか考えてるでしょ。やめなさい」
「ひぃ!!なんでバレんの!?」
リツに見抜かれ、カイが肩をすくめた――その直後だった。
「うわっ!」
「大丈夫!?」
リツがすぐに駆け寄る。
「いってぇ!切れたぁ……!」
「おい、大丈夫か!」
珍しく焦った声。
ルシアスがバッと駆け寄り、カイの手を掴む。
彼は一瞬、何か判断に迷ったようだったが――
(ワタワタ……)
次の瞬間、
「……っ(指パク)」
「えっ……? え、えぇぇ……?」
カイが固まる。
リツがぽそっと言う。
「俺、治療魔法できるよ……?」
「……悪い」
ルシアスは一度だけ視線をそらし、低く言った。
「なめときゃ治るっていうもんね。昔の人はそう言ってたよ?」
リツが肩をすくめながら笑う。
「……リツに治療してもらえ」
短くそう言い残し、ルシアスはその場を出ていった。
「び、びっくりしたぁ?!なんで?!笑」
「カイのこと、心配だったんだね」
「そ、そうなのぉ?!笑」
リツはふっと笑いながら、カイの指にそっと治療魔法を流し込む。
「ほら、すぐ治るよ」
「ありがと……!」
***
廊下の端。
ルシアスは壁にもたれ、ひとり頭を抱えていた。
「……俺、なにやってんだ?」
カイが怪我して、ただそれだけで頭が真っ白になった。
とりあえず止血しようとして――
「……で、なんで指食ってんだよ俺……」
自分で自分にツッコミを入れ、深いため息をつく。
胸の奥がざわついて仕方ない。
こんなの、上司の反応じゃない。
「……落ち着け、俺」
ひとり呟いた声は、どこか情けなかった。
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最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
今回は“クリスマス前夜”ということで、
いつもより少し柔らかい雰囲気のエピソードにしてみました。
カイの怪我に、思わず動揺してしまったルシアス。
その反応は、本人がいちばん理解できていないかもしれません。
でも、読んでくださった皆さんには――もう十分伝わったはずです。
リツのさりげないフォローや、
ルシアスのあとから押し寄せる後悔、
そんな細かい感情の揺れも楽しんでいただけていたら嬉しいです。
外伝は今後も“季節イベント”や“本編で描けない日常”を中心に更新していく予定です。
これからのメモリスの冬も、どうぞお付き合いください。
次回もお楽しみに。




