EP23「改造獣MD3と、蘇る影__“捨てられた感情”の行き着く先」
今回は、物語の大きな転換点になるエピソードです。
メモリスの“記憶”というテーマに、敵側の思想が本格的に絡んできます。
ずっと伏線として置いていた ロイの正体と目的 も一部明らかになります。
また、今回初登場となる MD3(改造獣) は、ただの魔物ではありません。
“捨てられた感情”。
その言葉の重さが、物語の鍵になっていきます。
ちょっとシリアスめだけど、ここから物語がぐっと深くなるので、
ぜひ最後まで一緒に見届けてください。
記憶のかけらが降る星で___。
EP23「改造獣MD3と、蘇る影」
***
ディメファル全土を揺らす振動とともに、
巨大モグラ――MD3がゆっくりと身を起こした。
金属と肉体が混ざったような異様な質感。
呼吸ごとに地面が震え、空気がひずむ。
「演式《無限解》!!」
ルシアスの詠唱と同時に、空間が白く裂けた。
無数の数式魔法陣が編まれ、光となってMD3へと奔る。
だが――
「……効いていないな。」
MD3はまばたきひとつせず、淡々と光を吸い込むだけ。
「効いてない……ね。」
ゼフィールが唇を吊り上げる。
「なら俺が――炎式《焔衝裂》っ!」
カイの炎撃が爆ぜ、火柱がMD3を包む。
だが。
「初級魔法は全部弾かれてる! 燃費悪いんだから控えろ!」
リツが叫ぶ。
「うぅ……わかったよ……!」
カイは悔しそうに歯を食いしばった。
「こいつ……尋常じゃない魔力濃度です。」
アヤセの分析魔法が赤く瞬く。
「……人工的に“盛られている”としか……」
その時。
「――久しぶりだなぁ、カイ。」
あまりにも聞き覚えのある声。
カイの心臓が跳ねた。
「……ロイ……!?」
黒い影が視界に歩み込む。
かつて共に笑った少年――今は完全に“敵”の顔をしたロイが、そこにいた。
「覚えてんのかよ。へぇ……意外としぶとい記憶してんじゃん。」
ロイはニヤリと笑った。
「こいつはな、MD3。」
親指で巨大モグラを指す。
「MD3……?」
ロランが怪訝な顔をする。
「説明してやるよ。“おバカなメモリス人”にもわかるようにな。」
「言い方。」
ルシアスが冷ややかに返す。
ロイは軽く肩をすくめ、続けた。
「地球じゃな……ペットがホイホイ捨てられるんだよ。
“飽きたから”“邪魔だから”“いらないから”。」
ロイの目が――かすかに曇った。
「その“捨てられた痛み”を集めて作ったのが、MD3だ。
本来なら優しい生き物たちが持つ怨恨を、な。」
MD3の喉が、苦しそうに鳴った。
「……あいつ……苦しそうだよ。」
カイは呟く。胸の奥が締めつけられた。
「苦しいに決まってる。」
ルシアスが目を細めた。
「負の感情に魔力を注いで改造すれば、こうなる。」
「……そんなやり方、僕は美しくないと思うな。」
ロランの声が震えていた。珍しく怒りが滲んでいる。
ロイがふいにロランを見て、目を細める。
「……あれ? どっかで見た顔だと思ったが……誰だっけなァ。」
「君は誰だい?」
本気で知らなそうな顔でロランが首を傾げる。
ロイは、一瞬固まった後――乾いた笑いを漏らした。
「……ハハ。なんだ、ただの人違いか。」
「知り合い?」
リツが警戒するように問う。
「知らないよ? 僕は。」
ロランは首を振る。
ロイは口角を上げ直し、冷笑を刻んだ。
「まぁいい。ひとつだけ教えてやろうか。」
その声が、風より冷たく響く。
「MD3は――記憶を喰う。」
空気が凍りついた。
「記憶を……喰う?」
カイの声が震える。
「そうだよ。記憶は力だろ?
だから奪う。喰う。肥大化させる。
俺たちエクリプスのためにな。」
「ふざけんなよ……!」
カイの魔力が暴発し、足元の石が砕けた。
「カイ!! 落ち着け!!」
リツの声が飛ぶ。
「落ち着けるわけないだろ……!」
カイはロイを睨みつけた。
(記憶を……また奪うのか……?!
人を、苦しめるために?
そんなの――絶対に、許せねぇ!)
巨大生物MD3の影が、彼らに覆いかぶさるように伸びた。
***
読んでくださり、ありがとうございます!
今回のMD3の設定は、
「誰かにとって捨てられた存在の“痛み”はどこへ行くのか?」
という問いから生まれたキャラクターです。
本来優しい生き物ほど、
“裏切られた記憶”は深く刺さります。
その積み重ねが、ロイの言う“怨恨の魔力”につながりました。
そして今回は、ついに カイとロイが真正面から言葉を交わす回 でした。
2人の過去はこの先さらに描かれていきます。
ロイの「誰だっけな?」というセリフにも、実は意味があります。
次回、MD3との戦闘はさらに激化し、
“記憶を喰う存在”がカイたちにどんな影響を及ぼすのか――
ぜひ続きも楽しみにしていてください!




