EP21「四国家のざわめき──そして、嵐は静かに呼吸を止める」
四国家が「バク」についてそれぞれの反応を見せる一方、
ニュース放送の後、世界は妙な沈黙に包まれます。
そして――静けさの裏で、エクリプスは確かに“動き始めていた”。
「平和ほど、不気味なものはない」
そんな感覚を抱きながら、魔法局の日常が再び動き始めます。
記憶のかけらが降る星で___。
EP21 「四国家のざわめき」
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__そして訪れた、不気味な静寂
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魔法局ニュースが世界に流れた直後――
メモリス全土は、一斉にざわつき始めた。
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■ BELIEVER国家(祈りの大聖堂)
「……記憶を喰う獣、バク。」
「光式で封じられるなら、我らの使命が再び問われる。」
「迷える心を救うのは、BELIEVERの役目だ。」
静寂に響く祈りの声には、確かな覚悟があった。
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■ GUARDIAN国家(城壁の上)
「BELIEVERの力など要らぬ。」
「我らの鉄壁がある限り、国民は守られる。」
「侵入を許すな。警戒を強めろ。」
その声は揺るぎなく、頑丈な壁そのもののようだった。
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■ THINKER国家(議事堂)
「感情論は不要だ。」
「バク出現時の最適解を今ここで立案する。」
「BELIEVERの魔法? 非効率だ。」
淡々とした議論が、魔力パネルの光を反射していた。
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■ BLAZE国家(酒場)
「BELIEVER?あいつらいらねーよ!!」
「出たら燃やしゃいいんだよ!!」
「火力で解決!!」
いつも通り豪快で、いつも通り脳筋だった。
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■ だが――
どの国家も、好き勝手に意見を交わし、
国民は噂話に花を咲かせた。
……なのに。
ニュース放送の翌日から、
世界は妙なくらい静かだった。
バクの目撃情報もない。
エクリプスの動きもない。
空、風、魔力――すべてが、まるで眠っている。
(……なんだ、この静けさ。)
誰もが、胸の奥に小さな違和感を抱えていた。
嵐の前にだけ訪れる、“あの”沈黙を。
***
翌朝・魔法局。
「おはよーございまーーすっ!」
勢いよく入ってきたカイに、いつものように返事が返る。
「おはよう。」リツ
「カイちゃーん♡」ゼフィール
「もー!くっつくな!!」カイ
「朝から何やってんだバカ2人は。」
腕を組んだルシアスが低い声でツッコミを入れる。
「俺はなにもしてねぇ!!」
「え?カイちゃんもくっつきたいんでしょ?」
「誤解を生むようなこと言わないで!!」
リツがやれやれとため息をついた。
「……あのバクの騒動から、本当に平和だな。未来を見ても……なにも感じない。」
「……嫌な予感はするんだよな。」
ルシアスの声は低く重い。
ゼフィールはカイの腕にしがみつきながら呟く。
「エクリプスのやつ……なにか企んでるよね。絶対。」
「え?!そうなの?!俺はなにも感じない……」
そこへロランがゆったりと現れる。
「おはよ〜」
「おはよー!」一同
ロランは2人を見て眉を上げた。
「……なんでカイとゼフィールはそんなにくっついてんの?」
「ゼフィが勝手に……!」
「いいや?ボクは真面目な話をしてるんだけどね。」
「またかよ!!」
「真面目な話?」ロランが目を細める。
「最近、平和すぎるよね?って。」ゼフィール
ロランの表情が、わずかに陰った。
(――エクリプス。
次はなにをしようとしている。)
リツが笑いながら肩をすくめる。
「ふふ、このまま平和が続くかもしれないよ?」
ルシアスは窓の外に視線を向けた。
「世の中に“絶対”はないからな。」
「なんか意味深なセリフだな〜笑」リツ
だが、その言葉の重みは――
誰よりも、ルシアス自身が知っていた。
***
久々に四国家の空気を書きましたが、
それぞれの“らしさ”が出ていて、書いている私も楽しかったです。
静かすぎる世界。
ルシアスの胸騒ぎ。
ゼフィールの察知。
ロランの影。
カイの無自覚さ。
すべてが、これから訪れる“あの事件”に繋がっています。
次回、物語は一気に動きます。
引き続き、メモリスの物語をどうぞ。




