EP20「魔法局ニュース__バクの真実、告げられる日」
メモリスで突如として現れた「バク事件」。
魔法局はついにその存在を公式発表することになり、
なんとニュースを読むのは――編集長ルシアス。
カメラ越しに語られる“記憶を喰う生物”の真実。
現地に赴いたカイのコメントも生放送に入り、
メモリス中に緊張が走り始める。
放送後、空がざわめく。
住民たちの間に広がる不安。
そして、動き出す大きな“何か”。
──魔法局ニュースが、世界を変え始めた。
記憶のかけらが降る星で___。
EP20 「魔法局ニュース」
***
照明の魔法球がまぶしく光る。
その下、原稿を手にしたルシアスが、真剣な表情でカメラを見据えていた。
「……続いてのニュースです。」
(なんで編集長がやってんだろ……)
カイが、カメラの後ろで首をかしげる。
(勤めてた子がやめちゃったのよ……)
アヤセが小声で耳打ちする。
(ボクがやりたかったのにっ!)
ゼフィールが口を尖らせた。
(ゼフィは問題発言するだろ……)
リツが冷静に返す。
(しないしっ!)
(撮影中だから静かに!)
カイのツッコミが、スタジオに小さく響いた。
ルシアスがわずかに咳払いをする。
「……ごほん。」
現場が一瞬で凍りついた。
「BLAZEの村で発生した“バク”の件です。」
誰もが息をのむ。
あの夜の記憶が、まだ胸に残っている。
「“バク”――とても可愛らしい見た目をしており、どこか優しいオーラを放つ生物です。」
(優しい……?)
カイが苦笑する。
「しかし、魔法局の調査によって――“記憶”を補食する生物であることがわかりました。」
緊張が走る。
アヤセが控室で記録魔法を起動しながら、小さく呟いた。
(放送で言うのね……。さすがルシアス。)
「もしも見かけた際は、決して近づかず、魔法局もしくは近くのライセンス保持者に連絡を。」
「この“バク”は、記憶を喰い……その空いた場所に“エクリプスの記憶”を埋め込みます。結果、対象は自我を失います。」
ルシアスの低い声が、静かに響く。
カメラの前ではいつもより少し、柔らかい瞳をしていた。
「……そのため、各国のBELIEVERの皆さんへ。」
ルシアスが原稿を置き、真っ直ぐに語りかける。
「どうか、力を貸してください。住人を落ち着かせるには、最高魔法――光式《天翔再生》の力が必要です。」
リツが息をのみ、そっと胸に手を当てた。
「それでは――この件について、現地に赴いたカイ・アカギ・フレアさんにお話を伺います。」
「え、俺ぇ!?」
カイが画面の外で叫ぶ。
「はい、フレアさん。落ち着いて。」
ゼフィールがニヤリと笑いながら、マイクを差し出す。
「え、いや、その……バクは、ほんとに可愛い顔してたんすよ!でも……あれは……“優しい”なんかじゃなかった。」
言葉が詰まり、カイは視線を落とした。
「……記憶を、喰うんです。あいつは。」
ルシアスが静かに補う。
「そして、奪われた記憶は――まだ、戻っていない。」
アヤセが記録魔法を止める。
モニターには、カイの沈んだ顔と、ルシアスの真剣な横顔が映し出されていた。
「……以上、現地報告を終わります。」
ルシアスがカメラに向かって軽く会釈した。
“カット”の声と同時に、スタジオの緊張がふっと緩む。
「編集長、めちゃくちゃかっこよかったです!!」
カイがぱっと顔を上げた。
「……当たり前だ。」
ルシアスはそっけなく言いながらも、わずかに口元を緩めた。
(……少しでも、届けばいい。)
アヤセは胸の奥でそっとつぶやいた。
魔法局ニュースは、静かに世界へと流れていった。
放送から数時間後、メモリスの空がざわめいた。
誰かが空を見上げてつぶやく――「……バク、って……本当に、いるのか?」
***
少し変化球の回でした!
キャラの日常と世界の緊張感を同時に描くために、
「魔法局ニュース」という形式を採用してみました。
・ルシアスのキャスターっぽさ
・カイの素朴な反応
・ゼフィール&リツの裏方ツッコミ
このあたりも楽しんでもらえたら嬉しいです!
次回もぜひ読んでくださいね。




