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記憶のかけらが降る星で___。  作者: 萩原 なちち
22/25

EP20「魔法局ニュース__バクの真実、告げられる日」

メモリスで突如として現れた「バク事件」。

魔法局はついにその存在を公式発表することになり、

なんとニュースを読むのは――編集長ルシアス。


カメラ越しに語られる“記憶を喰う生物”の真実。

現地に赴いたカイのコメントも生放送に入り、

メモリス中に緊張が走り始める。


放送後、空がざわめく。

住民たちの間に広がる不安。

そして、動き出す大きな“何か”。


──魔法局ニュースが、世界を変え始めた。

記憶のかけらが降る星で___。

EP20 「魔法局ニュース」


***


 照明の魔法球がまぶしく光る。

 その下、原稿を手にしたルシアスが、真剣な表情でカメラを見据えていた。


「……続いてのニュースです。」


(なんで編集長がやってんだろ……)

 カイが、カメラの後ろで首をかしげる。


(勤めてた子がやめちゃったのよ……)

 アヤセが小声で耳打ちする。


(ボクがやりたかったのにっ!)

 ゼフィールが口を尖らせた。


(ゼフィは問題発言するだろ……)

 リツが冷静に返す。


(しないしっ!)

(撮影中だから静かに!)

 カイのツッコミが、スタジオに小さく響いた。


 ルシアスがわずかに咳払いをする。

「……ごほん。」


 現場が一瞬で凍りついた。


「BLAZEの村で発生した“バク”の件です。」


 誰もが息をのむ。

 あの夜の記憶が、まだ胸に残っている。


「“バク”――とても可愛らしい見た目をしており、どこか優しいオーラを放つ生物です。」


(優しい……?)

 カイが苦笑する。


「しかし、魔法局の調査によって――“記憶”を補食する生物であることがわかりました。」


 緊張が走る。

 アヤセが控室で記録魔法を起動しながら、小さく呟いた。

(放送で言うのね……。さすがルシアス。)


「もしも見かけた際は、決して近づかず、魔法局もしくは近くのライセンス保持者に連絡を。」


「この“バク”は、記憶を喰い……その空いた場所に“エクリプスの記憶”を埋め込みます。結果、対象は自我を失います。」


 ルシアスの低い声が、静かに響く。

 カメラの前ではいつもより少し、柔らかい瞳をしていた。


「……そのため、各国のBELIEVERの皆さんへ。」


 ルシアスが原稿を置き、真っ直ぐに語りかける。


「どうか、力を貸してください。住人を落ち着かせるには、最高魔法――光式《天翔再生てんしょうさいせい》の力が必要です。」


 リツが息をのみ、そっと胸に手を当てた。


「それでは――この件について、現地に赴いたカイ・アカギ・フレアさんにお話を伺います。」


「え、俺ぇ!?」

 カイが画面の外で叫ぶ。


「はい、フレアさん。落ち着いて。」

 ゼフィールがニヤリと笑いながら、マイクを差し出す。


「え、いや、その……バクは、ほんとに可愛い顔してたんすよ!でも……あれは……“優しい”なんかじゃなかった。」

 言葉が詰まり、カイは視線を落とした。

「……記憶を、喰うんです。あいつは。」


 ルシアスが静かに補う。

「そして、奪われた記憶は――まだ、戻っていない。」


 アヤセが記録魔法を止める。

 モニターには、カイの沈んだ顔と、ルシアスの真剣な横顔が映し出されていた。


「……以上、現地報告を終わります。」

 ルシアスがカメラに向かって軽く会釈した。


 “カット”の声と同時に、スタジオの緊張がふっと緩む。


「編集長、めちゃくちゃかっこよかったです!!」

 カイがぱっと顔を上げた。


「……当たり前だ。」

 ルシアスはそっけなく言いながらも、わずかに口元を緩めた。


(……少しでも、届けばいい。)

 アヤセは胸の奥でそっとつぶやいた。


 魔法局ニュースは、静かに世界へと流れていった。


放送から数時間後、メモリスの空がざわめいた。

誰かが空を見上げてつぶやく――「……バク、って……本当に、いるのか?」


***

少し変化球の回でした!

キャラの日常と世界の緊張感を同時に描くために、

「魔法局ニュース」という形式を採用してみました。


・ルシアスのキャスターっぽさ

・カイの素朴な反応

・ゼフィール&リツの裏方ツッコミ


このあたりも楽しんでもらえたら嬉しいです!


次回もぜひ読んでくださいね。

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