【きおふる外伝1】ガス供給停止事件 〜全裸編集長と混浴20分の大騒動〜
今回は、本編の合間に起きた「ガス供給停止事件」を外伝としてお届けします。
時系列は ロラン加入前、魔法局メンバーがまだ今より少しだけ“自由すぎた頃”のお話です。
本編を読んでいなくても楽しめる、
軽いコメディ回&ちょっぴりエモも入ったスピンオフです。
キャラたちの仲の良さや、
普段の魔法局の日常ゆるトラブルを感じてもらえたら嬉しいです!
気軽に読んでいってくださいね。
※本編を読んでいなくても楽しめる軽いスピンオフです
※時系列はロラン加入前
ガス供給停止事件
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その日も魔法局の浴場は、ゆるやかな湯気に包まれていた。
「いい湯だった〜♪ あ、今日は順番ミスってないからね♡」
タオルを肩にかけたゼフィールが、ご機嫌に出てくる。
続いて――リツが駆け込んできた。
「ルシ!! やばい!! BLAZEの事情で、ガスがあと二十分で止まる!!!」
「…………あ?」
編集長ルシアスが顔を上げる。
「えー!? 俺次なんだけど!!」
カイが耳を疑い、思わず声を張り上げた。
「二十分……」
リツが手元の水晶タブレットを見ながら渋い顔をする。
「みんなで入るか」
「はぁぁあ!?!?!?」
カイの悲鳴が浴場にこだました。
「仕方ないだろ。湯がなくなる」
ルシアスは落ち着き払って服を脱ぎはじめる。
「いやいやいやいや!! なんでそうなるんだよ!!」
「俺もまだ入ってないからね」
(なぜかもう裸の)リツが淡々と言う。
「いい流れ♡」
ゼフィールは完全に悪ノリ。
「バカ言ってんじゃねぇ!!! てかなんだよ!! ブレイズなにやってんだよ!!」
「さぁ……」
リツは肩をすくめた。
***
■ 全員イン 同時入浴(強制)
「ほら、急ぐぞ」
ルシアスがタオルを外しながら浴場へ。
後ろでカイが震えた声を出した。
「んぎやぁぁぁ!!!」
「なにを恥ずかしがってるんだか……」
ルシアスはため息をつく。
「カイ、冷たい水は嫌だからね。早くしな。」
(なぜか余裕のリツはすでに湯船近く)
「ひぃ!!」
「誰も見てねーよ」
ルシアスの言葉に、カイは余計に動揺する。
「流してあげるよ」
リツがシャワーを手にとる。
「ありがと……」
「ブレイズのやつ……何やってんだか。風呂の時間帯に止まるのは珍しいな」
ルシアスがぼやいた、その時。
「せっけんせっけん……うわぁ?!」
カイが足を滑らせ、そのまま――
(ルシアスに豪快ダイブ)
「…………」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
カイはパニック、ルシは無言で受け止めている。
「なにやってんの……笑」
リツが呆れた声を漏らす。
「まともに髪も洗えねぇのか。ほら」
ルシアスは何事もなかった顔でカイの髪に手を伸ばし、泡を流しはじめた。
「(チーン……)」
カイはもはや魂が抜けかけている。
***
■ 湯船での地獄の数分
「俺もう上がるね〜」
リツがタオルを肩にさげて退出しはじめる。
「えぇ?! リツぅ!? 置いてくなぁ!!」
「なんだよ。そんなに俺が嫌か。」
頭を洗いながらカイをチラリと見る。
「そ、そんなこと……!」
「洗えたぞ。湯冷めするから早く拭くか、湯船浸かっとけ」
「……あったかい……」
ほっとしたその瞬間――
ルシアスが無言で隣に入ってきた。
「ふぁ!?!?!?」
「冬は浸かんねぇとあったまんないよな」
「はぁ!?!?!」
「出たいなら出ろ」
「…………」
「お暑い♡」
湯船の端から覗くゼフィールがにやにや。
「黙れ!!!!」
***
■ のぼせ→緊急搬送(裸)
二十分後。
ガスは本当に止まり、湯の温度が下がり始めていた。
「もう止まったか……」
「たぶん……」
カイがぼんやり答える。
次の瞬間――
「…………」
「カイ? おい……カイ?」
「…………」
「カイ!!!」
ルシアスは反射的にカイを抱き上げ、
真っ裸のまま廊下へ飛び出した。
***
■ 保健室大混乱
「きゃー!! なんで裸なんです!?!?!」
アヤセの叫びが保健室に響く。
「しっかりしろ!! カイ!!」
(全裸で必死の編集長)
「……ううん……ん? くれは先生……?」
「のぼせてるだけね〜。冷やせば大丈夫よ」
くれは先生は慣れた調子で微笑んだ。
「はぁ?! 俺なんで編集長の上に!?
てか裸!? なんで全裸!? うわぁぁぁああ!!」
「カイ、大丈夫〜?」
(なぜか上裸のまま来るリツ)
「なんで男性陣は服を着てないんです!?!?」
アヤセが頭を抱える。
「お前が体調悪そーにしたからだろ!!」
ルシアスが必死に反論。
「でたでた保護者ムーブ♡」
ゼフィールが腹を抱えて笑う。
「もうやめてくれぇぇ!!」
***
■ 社長登場
「騒がしいな……」
廊下から小さな影――社長ちびなちが姿を見せた。
「社長!!」
アヤセが姿勢を正す。
「カイ? なにかあったのか?」
「大丈夫です。のぼせただけですよ」
くれはが答える。
「なんでルシアスは裸で走り回ってるんだ?」
「さぁ……」
くれはは苦笑する。
「のみもの……! し、社長!!」
(白衣を羽織っただけの全裸編集長が戻ってくる)
「なんだねその格好は……」
「………すみません」
「ルールに“裸で走らない”を追加しておくか……」
「す、すみません……」
***
■ その夜、ルシアスの独白
(カイの部屋前)
「……ただのぼせただけだったか。よかった……」
壁に背を預け、ルシアスは小さく息を吐いた。
「冷静に考えれば……裸で局内を走るのはアウトだよな……
何やってんだろ俺……」
少しだけ、声が震える。
「カイに……何かあったらって、思うと……怖くなるんだよ」
「ゼフィールやリツ、にも何かあったら怖いが……
あいつは……なんか、ちげぇんだよ」
「……俺が守ってやらねぇと、いけない気がするんだ」
廊下の陰で聞いていたゼフィールは、そっと目を細めた。
(へぇ……ルシアスって、ああいう顔もするんだね)
(今日のところはおしまいにしとくか)
***
■ くれは & アヤセ & ちびなちサイド
「男子って……ほんとに奇想天外ですね……!」
アヤセがため息。
「そうねぇ。面白いわね」
くれはが微笑む。
「裸で走ることか?」
ちびなちが真顔で聞く。
「ち、違います!!友情……みたいな……!」
「冗談だよ」
ちびなちが笑う。
「いいチームになってきたな」
「ええ。本当に」
くれはが静かに頷く。
「いつか……この星がルミナレアに変わるのも……」
「ああ、ありうるな。
これからも頼んだぞ、アヤセ。くれは」
窓の外では、夜風が静かに流れていた。
──── End ────
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
魔法局の外伝はいつも自由度が高く、
書いていて私自身とても楽しい回になりました。
今回改めて、
・ルシアスは無自覚に保護者ムーブ
・カイは反応がいちいち可愛い
・リツはなぜか服を脱ぐのが早い
・ゼフィールは外野からニヤついてる
という 「魔法局4人のバランスの良さ」 を感じながら書いていました。
本編はシリアスな部分も多いので、
こういう“何も起きないのに事件は起きてる回”も、
今後ちょこちょこ書いていきたいと思っています。
楽しんでいただけたら、
感想・ブクマなど何でも励みになります!
次回もよろしくお願いします!




