表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶のかけらが降る星で___。  作者: 萩原 なちち
21/24

【きおふる外伝1】ガス供給停止事件 〜全裸編集長と混浴20分の大騒動〜

今回は、本編の合間に起きた「ガス供給停止事件」を外伝としてお届けします。

時系列は ロラン加入前、魔法局メンバーがまだ今より少しだけ“自由すぎた頃”のお話です。


本編を読んでいなくても楽しめる、

軽いコメディ回&ちょっぴりエモも入ったスピンオフです。


キャラたちの仲の良さや、

普段の魔法局の日常ゆるトラブルを感じてもらえたら嬉しいです!

気軽に読んでいってくださいね。


※本編を読んでいなくても楽しめる軽いスピンオフです

※時系列はロラン加入前


ガス供給停止事件


──────────────


 その日も魔法局の浴場は、ゆるやかな湯気に包まれていた。


「いい湯だった〜♪ あ、今日は順番ミスってないからね♡」


 タオルを肩にかけたゼフィールが、ご機嫌に出てくる。


 続いて――リツが駆け込んできた。


「ルシ!! やばい!! BLAZEの事情で、ガスがあと二十分で止まる!!!」


「…………あ?」

編集長ルシアスが顔を上げる。


「えー!? 俺次なんだけど!!」

カイが耳を疑い、思わず声を張り上げた。


「二十分……」

リツが手元の水晶タブレットを見ながら渋い顔をする。


「みんなで入るか」


「はぁぁあ!?!?!?」

カイの悲鳴が浴場にこだました。


「仕方ないだろ。湯がなくなる」

ルシアスは落ち着き払って服を脱ぎはじめる。


「いやいやいやいや!! なんでそうなるんだよ!!」


「俺もまだ入ってないからね」

(なぜかもう裸の)リツが淡々と言う。


「いい流れ♡」

ゼフィールは完全に悪ノリ。


「バカ言ってんじゃねぇ!!! てかなんだよ!! ブレイズなにやってんだよ!!」


「さぁ……」

リツは肩をすくめた。


***


■ 全員イン 同時入浴(強制)


「ほら、急ぐぞ」


 ルシアスがタオルを外しながら浴場へ。

 後ろでカイが震えた声を出した。


「んぎやぁぁぁ!!!」


「なにを恥ずかしがってるんだか……」

ルシアスはため息をつく。


「カイ、冷たい水は嫌だからね。早くしな。」

(なぜか余裕のリツはすでに湯船近く)


「ひぃ!!」


「誰も見てねーよ」

ルシアスの言葉に、カイは余計に動揺する。


「流してあげるよ」

リツがシャワーを手にとる。


「ありがと……」


「ブレイズのやつ……何やってんだか。風呂の時間帯に止まるのは珍しいな」

ルシアスがぼやいた、その時。


「せっけんせっけん……うわぁ?!」

カイが足を滑らせ、そのまま――


(ルシアスに豪快ダイブ)


「…………」


「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」

カイはパニック、ルシは無言で受け止めている。


「なにやってんの……笑」

リツが呆れた声を漏らす。


「まともに髪も洗えねぇのか。ほら」

ルシアスは何事もなかった顔でカイの髪に手を伸ばし、泡を流しはじめた。


「(チーン……)」

カイはもはや魂が抜けかけている。


***


■ 湯船での地獄の数分


「俺もう上がるね〜」

リツがタオルを肩にさげて退出しはじめる。


「えぇ?! リツぅ!? 置いてくなぁ!!」


「なんだよ。そんなに俺が嫌か。」

頭を洗いながらカイをチラリと見る。


「そ、そんなこと……!」


「洗えたぞ。湯冷めするから早く拭くか、湯船浸かっとけ」


「……あったかい……」


 ほっとしたその瞬間――

 ルシアスが無言で隣に入ってきた。


「ふぁ!?!?!?」


「冬は浸かんねぇとあったまんないよな」


「はぁ!?!?!」


「出たいなら出ろ」


「…………」


「お暑い♡」

湯船の端から覗くゼフィールがにやにや。


「黙れ!!!!」


***


■ のぼせ→緊急搬送(裸)


 二十分後。

 ガスは本当に止まり、湯の温度が下がり始めていた。


「もう止まったか……」


「たぶん……」

カイがぼんやり答える。

次の瞬間――


「…………」


「カイ? おい……カイ?」


「…………」


「カイ!!!」


 ルシアスは反射的にカイを抱き上げ、

真っ裸のまま廊下へ飛び出した。


***


■ 保健室大混乱


「きゃー!! なんで裸なんです!?!?!」

アヤセの叫びが保健室に響く。


「しっかりしろ!! カイ!!」

(全裸で必死の編集長)


「……ううん……ん? くれは先生……?」


「のぼせてるだけね〜。冷やせば大丈夫よ」

くれは先生は慣れた調子で微笑んだ。


「はぁ?! 俺なんで編集長の上に!?

てか裸!? なんで全裸!? うわぁぁぁああ!!」


「カイ、大丈夫〜?」

(なぜか上裸のまま来るリツ)


「なんで男性陣は服を着てないんです!?!?」

アヤセが頭を抱える。


「お前が体調悪そーにしたからだろ!!」

ルシアスが必死に反論。


「でたでた保護者ムーブ♡」

ゼフィールが腹を抱えて笑う。


「もうやめてくれぇぇ!!」


***


社長ちびなち登場


「騒がしいな……」


 廊下から小さな影――社長ちびなちが姿を見せた。


「社長!!」

アヤセが姿勢を正す。


「カイ? なにかあったのか?」


「大丈夫です。のぼせただけですよ」

くれはが答える。


「なんでルシアスは裸で走り回ってるんだ?」


「さぁ……」

くれはは苦笑する。


「のみもの……! し、社長!!」

(白衣を羽織っただけの全裸編集長が戻ってくる)


「なんだねその格好は……」


「………すみません」


「ルールに“裸で走らない”を追加しておくか……」


「す、すみません……」


***


■ その夜、ルシアスの独白


(カイの部屋前)


「……ただのぼせただけだったか。よかった……」


 壁に背を預け、ルシアスは小さく息を吐いた。


「冷静に考えれば……裸で局内を走るのはアウトだよな……

何やってんだろ俺……」


 少しだけ、声が震える。


「カイに……何かあったらって、思うと……怖くなるんだよ」


「ゼフィールやリツ、にも何かあったら怖いが……

あいつは……なんか、ちげぇんだよ」


「……俺が守ってやらねぇと、いけない気がするんだ」


 廊下の陰で聞いていたゼフィールは、そっと目を細めた。


(へぇ……ルシアスって、ああいう顔もするんだね)


(今日のところはおしまいにしとくか)


***


■ くれは & アヤセ & ちびなちサイド


「男子って……ほんとに奇想天外ですね……!」

アヤセがため息。


「そうねぇ。面白いわね」

くれはが微笑む。


「裸で走ることか?」

ちびなちが真顔で聞く。


「ち、違います!!友情……みたいな……!」


「冗談だよ」

ちびなちが笑う。


「いいチームになってきたな」


「ええ。本当に」

くれはが静かに頷く。


「いつか……この星がルミナレアに変わるのも……」


「ああ、ありうるな。

これからも頼んだぞ、アヤセ。くれは」


 窓の外では、夜風が静かに流れていた。


──── End ────

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!


魔法局の外伝はいつも自由度が高く、

書いていて私自身とても楽しい回になりました。


今回改めて、

・ルシアスは無自覚に保護者ムーブ

・カイは反応がいちいち可愛い

・リツはなぜか服を脱ぐのが早い

・ゼフィールは外野からニヤついてる

という 「魔法局4人のバランスの良さ」 を感じながら書いていました。


本編はシリアスな部分も多いので、

こういう“何も起きないのに事件は起きてる回”も、

今後ちょこちょこ書いていきたいと思っています。


楽しんでいただけたら、

感想・ブクマなど何でも励みになります!

次回もよろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ