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記憶のかけらが降る星で___。  作者: 萩原 なちち
18/23

EP17 「出発会議――動き出す“水面下”の真実」

今日は、魔法局が動き出す日です。

にぎやかな朝の空気の裏では、焦りと不安が静かにうごめいています。


バクの事件から一週間。

ロランを迎えたのも束の間、再びBLAZEへ向かわなければならない——。


誰もが笑いながらも、胸の奥にはそれぞれの“痛み”と“決意”を抱えている。

守りたいものがあるから、立ち止まれない。


そして、今まで知らなかった“危険の本質”が、ゆっくりと姿を現し始めます。


にぎやかで、騒がしくて、楽しい朝のシーン。

でも……水面下では、運命の歯車が静かに回り出す。


物語が一段階動くEP17、ぜひお楽しみください。


記憶のかけらが降る星で___。

EP17 「出発会議」


***


「ふわぁぁあぁ……もう朝か……」

カイは大きく伸びをしながら天井を見上げる。


――バクの事件から一週間。ロランが魔法局にやって来て、もう四日。

今日は会議を行ったあと、再びBLAZEへ向かわなければならない。


「……気が重いなぁ。でも、助けなきゃ。みんなを」


そうつぶやき、カイはささっとシャワーを浴びて身支度を整えた。


***


「お〜おはよ〜」

先に食堂に来ていたリツが、カップを片手に声をかける。


「おはようございまーす!」

カイは元気よく挨拶。


「あら、カイちゃん♡髪濡れてるー♡」

ゼフィールがにやにや笑いながらひらひら手を振る。


「なんか変な言い方すんな!!」

カイは耳まで赤くなる。


「おはよう♡」

ゆったりと現れるロラン。


「おはよ〜」

リツも軽く手を振る。


「おはよ!!」

カイも声を弾ませた。


「どう? 生活には慣れた?」

ゼフィールが尋ねると、ロランは楽しげに肩を竦める。


「居心地いいね〜♪ うちより全然いいよ♡」


「え、王様の家ってすげーんじゃねぇの?」

カイが思わず口を尖らせる。


「全然……そんなことないよ」

ロランは苦笑しながら答えた。


「へぇ〜? ねぇ今日のご飯当番、誰?」

ゼフィールが首を傾げた瞬間――


「…………」


「……カイ?」

リツが横目で見た。


「うわぁぁあぁぁああぁ!! すぐに買い出しに!!!」

カイは飛び上がるように立ち上がった。


「いや、そこからかよ! 美しくないねっ!」

ロランが噴き出す。


「騒がしいな……」

低い声と共にルシアスが現れる。


「おはよー」

リツが挨拶。


「おはよ♡」

ゼフィールが軽く手を振る。


「カイは何を慌ててる」

ルシアスの冷たい視線。


「ご飯当番忘れてたんだって〜」

ロランが楽しそうに答える。


「……はぁ。今日は大切な会議だってのに」

ルシアスは深いため息を吐く。

「いい、俺がやる。みんな待ってろ」


「やったぁ〜♡」ゼフィールがはしゃぐ。


「ごめんなさぁあい!!」カイは泣きそうな声を上げる。


「……許さん」

ルシアスはきっぱりと答えた。


「どうどう……笑」

リツは肩をすくめて、なだめるしかなかった。


***


(朝食後、会議室にて)


「では……これからの動きを決めよう」

ルシアスの低い声が部屋に響く。


「まず、どうするかじゃない?」

ゼフィールが腕を組む。


「……それもそうだが」

ルシアスは額に手を当てた。


「はーい!!」

カイが元気よく手を上げる。

「村人を解放して……なんか触ってみるとか!」


「だめだ」

ルシアスは即答。


「なんもできねぇじゃん?!」

カイが机をばんっと叩いた、その時――


「……社長」

ルシアスが姿勢を正す。


「事件は解決したのか」

小さな影――ちびなちが現れた。


「いえ……これから見に行くところで……」

ルシアスは居住まいを正す。


「遅い」


「すみません……」


ちびなちの視線が鋭く光る。

「……バク、か。そいつに住人が何かされるところは、見てないんだな?」


「俺は見てない。リツも一緒にいたけど……見てなかったと思います」

カイが答える。


「なるほどな。……リツ。記憶は本当にないんだな?」


「……ないです。カイとバクのクエストを受けて、BLAZEに行ったことは……覚えてます」


「短期的な記憶が切り取られてるようだな。たぶん――記憶の捕食」

ちびなちの言葉に、空気が凍る。


「住人は……バクに操られているか、記憶ごと改竄されているか……」


「……!」

ルシアスの目が鋭くなる。


「そんな……」

カイが顔を青ざめさせる。


「警戒心が消える……優しい温もり……」

ちびなちは淡々と続ける。

「たぶん、抜き取った記憶の部分に“別のもの”を入れたに違いない」


「バクにそんな力が……!」

ルシアスが低く唸る。


「さぁな。バクがやったのか、エクリプスがやったのか……憶測だ」

ちびなちは肩をすくめる。


「つまり……その埋め込まれた記憶を――取り除く必要がある」


「な、なるほど……」

リツが頷く。


「まぁ、美しいんじゃない?」

ロランが意味深に微笑む。


「……そんなこと、できるのか?」

ルシアスの問いに、空気がさらに重く沈んだ。


「リツ……光式《天翔再生》、できるな?」

ちびなちが問いかける。


「……できますけど。最高難度の技なので、何度も使えばすぐにMPが尽きます」

リツの声にわずかな緊張が滲む。


「私も、冒険者も協力する。みんなでやってみよう」

ちびなちは揺るぎない声で続けた。


「天翔再生……味方の全回復の技か」

ルシアスが呟く。


「だいぶMP食らうやつだよね……」

カイが顔をしかめる。


「BELIEVERはMPが多いとはいえ、そう何度も撃てる技じゃない」

ゼフィールが真顔になる。


「まぁ……やってみる価値はあるかもね」

ロランは軽く肩を竦めて言った。


「それと――呪い除去の魔法は私が使う。これで多少は改善するはずだ」

ちびなちは淡々と告げる。


「じゃ、行きますか」

ゼフィールが腰を上げる。


「だな」

ロランも頷いた。


***

今回も読んでくださり、ありがとうございます。


にぎやかで笑いの多い回でしたが、

その裏で“もう引き返せない段階”へ物語が進み始めました。


ロラン加入で戦力は増えたはずなのに、

なぜか胸のざわつきは消えない——

そんな空気を感じていただけたなら嬉しいです。


次回はいよいよBLAZEへ再突入。

バク、そして“記憶の書き換え”の正体に迫っていきます。


覚悟を決める仲間たちと、

まだ自分の限界を知らないカイ。

この差がどう作用するのか、ぜひ見守ってください。


それでは、次話でまたお会いしましょう!


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