EP16「“王子様”は盾になる。新メンバー・ロラン加入」
今日は、魔法局に――新メンバー登場です。
ただの増員ではなく、“守るために来た王子”。
彼が背負ってきたもの、守りたいもの、隠している痛み。
カイたちとの出会いが、物語をどう動かすのか。
にぎやかさも、笑いもありつつ……
水面下では、物語が静かにうねり始めます。
ロラン初登場回、どうぞお楽しみください。
記憶のかけらが降る星で___。
EP16 「“王子様”は盾になる。新メンバー・ロラン加入」
「――というわけで」
ルシアスの低い声が会議室に響いた。
「あんな大変なことがあって、まだ数日だが……今日から新しい仲間を迎える」
ガチャッ。
扉の向こうから、月光に照らされたような青年がゆっくりと入ってくる。
「グランディール・アレクシオン・ロランと申します。どうぞよろしく」
胸元に手を当て、キザに一礼。
ゼフィールが目を丸くする。
「グランディールって……」
リツも思わず息を呑んだ。
「まさか……あの“グランディール”……?」
「――あぁ。そうだよ? ボクは美しい♡」
ロランは片目をウインクし、光を弾くように微笑む。
「うわぁ……なんかキャラ濃いの来た〜!」
カイが脱力。
「ボクは王子様だからね?」
ロランは当然のように言い放った。
「GUARDIANの王族じゃん!♡」
ゼフィールが立ち上がる。
「まじの貴族……」
リツは額に手を当てた。
「ロラン“様”と呼びたまえ♡」
ロランはくるりと回って見栄を切る。
「……はぁ」ルシアスはため息を落とした。
「ロラン、バクの件は聞いているな」
「聞いたとも。ボクが盾になって、みんなを守るよ♡」
しかしそのとき――
「そういえば、GUARDIANの姫が拐われたって噂を聞いたけど」
リツの言葉が場に落ちた。
空気が一瞬止まる。
「……俺の妹さ」
ロランの声は、さっきまでの華やかさが嘘のように低かった。
「まじかよ?! 誰に?!」
カイが叫ぶ。
「……(エクリプス)」
ロランは奥歯を噛みしめ、目をそらした。
(フェリア……絶対助けに行く。どんな手を使ってでも)
「……だから、ここに来た」
ルシアスが引き取る。
「GUARDIAN戦力を補強したい。それも理由だ」
会議の空気は一気に引き締まった。
「村の住人は凶暴化してはいない。むしろ、怖いほどに優しい」
ゼフィールの声は重い。
「美しいけど……美しくないね」
ロランが目を伏せる。
「抵抗できなくなる。そこが厄介だ」
ルシアスが静かにまとめた。
「――今日はもう遅い。続きは明日だ」
会議は終了となり、ロランに部屋が用意された。
***
「すごいね……王族が魔法局って」
リツがぽつり。
「いやもう、濃いのよ♡最高♡」
ゼフィールが笑う。
「てかまたデケぇやつ来た!」
カイが吠える。
「カイちゃん小さくてかわい〜♡」
ゼフィールが頬を押さえた。
「小さくねぇ!!!!」
カイは真っ赤。
「でもロランさん、人柄はよさそーだった!ちょっと行ってくる!」
言い終えるより早く、カイは走り去っていた。
***
(ロランの部屋)
「ロランさーん!!」
勢いよく扉を叩く。
「おや? ロラン様、だろ? どうしたの?」
「遊びに来た〜♡」
満面の笑みで突撃するカイ。
「カイくん? だったね。君……かわいいね」
「おい!!!! あんたまで!!!?」
ロランは不思議そうに首を傾げる。
「“あんたまで”?」
「いや、なんでもないッ!!!」
「ふふ……面白い子だね」
「ねぇねぇ!! 王様って何食うの!?」
目をキラキラさせて身を乗り出すカイ。
「別に、王様でも食べ物は同じさ」
ロランは優しく笑った。
その笑顔の奥に――
ふと、深い影がよぎった。
(フェリア……生きていてくれ)
カイは知らないまま、無邪気に笑う。
「明日さ!! 一緒に任務行こう!!」
ロランはゆっくり頷いた。
「――もちろんだとも。ボクは仲間を守る。それが、ボクの役目だからね」
***
読んでくれてありがとうございます。
新メンバー・ロランが加入しました。
にぎやかで明るくて、強くて、完璧に見える人ほど
本当は誰にも言えない痛みや孤独を抱えてたりする――
そんな一面をこれから少しずつ描いていきます。
カイ・リツ・ゼフィール・ルシアス、そしてロラン。
“5人だからこそ進める物語”を、楽しんでもらえたら嬉しいです。




