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花火大会 一

N県H市には古くから伝わる祭りがある。

「九頭龍祭くずりゅうさい」と呼ばれる祭りだ。

N県H市(以下、H市)は人口がおよそ五千人程の

小さな市であり、川や山など豊かな自然に囲まれている、そんなところである。市、というよりは村の集まりのようなところだ。


なぜそんな所に訪れたかと言うと先程も述べた、「九頭龍祭」が理由だ。


「九頭龍祭」は小規模なH市が行う祭りにしては

とても大規模なもので、H市の中でも小さな

九分村と呼ばれる村が主体となって執り行う祭儀

でもあるようだ。評判がよく、市外や県外からも

訪れる人が多い。出店や音頭など、目玉となる

行事は多々あるが、その中でも最後の花火大会

がとても有名だ。


花火大会は「百夜灯ひゃくやとう」と呼ばれる。

「百夜灯」では字の通りに百夜、灯りが灯って

何事もなく無事に過ごせるようにという意味が

込められているそうだ。打ち上げる花火の数は

百八発でこれも語呂合わせになっている。

そして打ち上がる花火は大小あるが全てがとても

綺麗なもので、真紅のような光を放つらしい。


一見普通に見えるこの行事だが、おかしなところがある。人が消えるのだ。一人から数十人、毎年消えていくのだ。花火をより高いところで見ようとして山で遭難するのか、等と思っていたのだが

あまりに行方不明が多い。メディアで報道されることは少ないのだがSNSや地元の掲示板を見るに本当に行方不明者が出ている。


極めつけは、一時期ネットに流出した動画だ。

九頭龍祭についての動画だと断定しているものの

確たる証拠としては不十分。それでもとても衝撃的な内容だった。


動画は、とある男性が深夜の山を散策している所から始まる。元々静かな街で、深夜なのもあって山は静まり返っている。聞こえるのは男性の息遣いだけだった。音が入りだしたのは、動画が始まって十分頃だった。最初は、がさがさと枝葉が揺れる葉擦れの音が聞こえる。だんだん、時間が経つと動物の鳴き声が入る。それが悲鳴のような断末魔のような何かに変わっていくことに時間はかからなかった。男性もカメラを慌てて向ける。静かに息を呑み込み、じっとカメラを音の方向に向ける。暗くて動画でも判別することは難しいものだったが、どうやら人が何かを囲んでいるようだった。少し見入っていると、背後から




なにをしているんですか?


という声が聞こえ、カメラはすぐに振り返る。

そこには、手に赤黒く錆び付いた汚れの上に、

新たな血で塗られた手斧を持ち歩く村人のような

姿をした人影が立っていた。動画の男性が叫び声

をあげ、走り出したところで動画は終了する。


この動画は一時期、世間を騒がせた。しかし、

動画の画質や情報量の乏しさから場所の特定等が

難しく、ほとぼりが冷めた頃にようやく場所が

特定された。場所は九分村の奥の山、首狩り峠の

中腹から頂上への中間程度の場所とのこと。

一瞬だけ動画に映っていた木が目印になっていた

ようで、ネットの掲示板で情報が流れていた。


首狩り峠は有名な心霊スポットでもあり、山の中で首を吊って自殺する人が多いことからその名がついた、とも言われている。実際の名前は九分岳であり、やや険しい林道を進んでいくとその奥に祠があるとされている。



調べたところ、それが九分村で祀られている土地神、オオヌキ様だとわかった。「九頭龍祭」も元々はオオヌキ様を奉り、村の繁栄を祈るための祭りであると。オオヌキ様は豊穣や子孫繁栄などに纏わる神様で、その信仰文化はかなり前からあったようだ。だが、オオヌキ様のルーツや逸話などの情報は一切見つからなかった。




真相を探るべく、私は九頭龍祭へと訪れた

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