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プロローグ




 女はそれを見つけた。

 何気なく覗いた路地裏に、それが落ちていた。埃や、泥で塗れたそれは、お世辞にも綺麗とも、愛らしいとも言えないぬいぐるみであった。大きさはだいたい50cmぐらいあろうか。

 女は躊躇うことなく拾い上げた。

「見た目以上に、キミは大切にしてもらっていたんだね」

 持っていたハンカチで汚れを拭えば、黒色の猫が現れた。誰かが、誰かの為に作った人形のようであった。ソフトボアの素材で作られた体、黒色のボタンの瞳、口はなかった。体も綺麗に拭けば、綿がよれて形は崩れているが、愛らしい姿を見せてくれた。

「うんうん、感じた通り可愛いね」

 頭のてっぺんから、つま先まで丁寧に拭いた愛らしいぬいぐるみは、女と同様に満足気である。

「さて、私は気分がいい。気分がいい私に出会ったキミは、最高に運がいい」

 言葉通り気分がいい女は、まるで歌うように言葉を続ける。

「キミのような素敵な人形がここにいるのかは、どうでもいい。こんなにも素敵なキミのことだ。きっと持ち主も素敵な人物なんだろう? ――――――全てはキミ次第さ」

 眠る子どもの頬を撫でるように、ぬいぐるみの頬を撫でた。

 綺麗になったのは毛色だけでなく、よれて崩れていた形も新品同様に均等になっていた。








「――――――それじゃあ、良い夢を」







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