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第17話 Real Face


「じゃあ、さっそく。俺に毒をぶっかけてもらうことってできますか? 死なない程度に。ギリギリで、お願いします」

「は…………?」


 俺がそういうと、モルヴェナは目を丸くして驚いていた。


「な、なんでそんなことを……?」

「ギリギリでいつも生きていたいから」

「さっきから……なにを言っているんだ……お前は……」

「だから、俺に毒を浴びせてください。修行を手伝ってくれるんでしょう?」


 モルヴェナは毒の専門家だ。それならば俺に死なない程度のちょうどいい毒を浴びせることくらい朝飯前だろう。

 死なないギリギリを攻めてもらったら、かなり効率的に毒耐性を鍛えることができそうだ。

 こんなことなら、もっとはやくに話をして、相談していればよかったな。

 毒の専門家なんて、これ以上ない頼もしい味方だ。

 

 しかし、モルヴェナは俺の提案を一刀両断。


「バカやろう! そんなことができるか!」

「な、なんでですか!」

「そんな危険なことをして、万が一のことがあったらどうする!」

「いや、そこは毒の魔女なんだから、調節できるでしょう?」

「それはまあ……できなくはないが……。おまえ、自分のやっていることがどれだけ危険なことか、わかってるのか?」


 たしかにこれまでにも何度も死にかけた。

 けど、いくら苦しくて死にかけたって、別に本当に死ぬわけじゃないんだから平気だ。

 死にかける程度の痛み、前世からすでに、俺は慣れっこだ。

 

「はい……まあ……でも、死なない程度ならかまわないでしょう? これまでも別に、毒を食ったりしてますけど、大丈夫ですよ?」

「お、おまえ……自分がなにを言っているかわかってるのか……? 死なない程度ならって……。その発想は既に狂人の域に達しているぞ……?」


 やばい、さすがにドン引きされたか……?

 前世でさんざん親に殴られ、いろいろ(・・・・)されて、それが日常だったから、もはや俺は普通の感覚がわからない。

 別に死ななければ、たいていのことには耐えられるんだけどなぁ……?

 さすがに死ぬのだけはごめんだ。

 そのためにも、やっぱり俺には毒耐性が必要だ。

 

「お願いします! 俺はどうしても毒耐性を鍛えたいんです! 力を貸してください!」

「それは分かったが……。さすがに依頼主のご子息に毒を浴びせることなどできない。それに、お前は私にとってももはや大事な弟子なんだ」

「先生……」

「それに、もし私が裏切って、ギリギリではなく、そのままお前を毒で殺そうとしたらどうするつもりなんだ?」

「いやそれは……さすがにしないでしょう?」

「だとしても、無理なものは無理だ」


 やっぱり、さすがにそれはあきらめるしかないか……。

 毒を浴びせてくれ、なんてさすがに頭のおかしなお願いだったな……。


「そうだな……。私にできるのは、毒魔法を教えることだけだ」

「毒魔法……!」


 たしかに、俺自身が毒魔法で毒を発生させられるようになれば、あとは自由自在に耐性の特訓ができる!

 それは発想になかったな。目から鱗だ。


「自分で毒魔法を覚えて、自分で特訓をやるなら、止めはしない。それでも十分に危険だがな……。どうしてもというなら、目を瞑る」

「わかりました、それなら! ありがとうございます。さっそく俺に毒魔法を教えてください!」


 氷魔法と炎魔法の初級はすでに使えるようになった。

 どうやら俺――ゼノの身体は魔法の才能もあるようだ。

 きっと毒魔法もすぐに覚えられるだろう。


「よし、ではまずは――――」



 ◇



 ――そこから俺は数日間にわたって、毒魔法の習得に向けて特訓を始めた。

 モルヴェナは手取り足取り、毒魔法の使い方を教えてくれた。


 しかし……俺はいくら努力をしても、毒魔法を習得することはできなかった。


「くそ……なんでだ……」

「残念だが……ダメだな……。魔法の才能はあるが、『毒属性の素質』が皆無だ」


 俺がいくら毒魔法を使おうとしても、まったく魔力が反応を見せない。

 俺は初歩の毒魔法ですら、発動させることさえできなかった。

 やはり、俺の弱点が毒属性であることと関係しているのだろうか。

 俺はとにかく、毒には相性が悪いのだろう。


「もうここらでやめにしよう。そもそも発動することすらできないのであれば、教えられることもなにもない……。時間の無駄だ」

「くそ……! やっぱりダメなのか……。すみません、先生」

「私も力になってやれなくて、すまない……。これ以上は、毒耐性を鍛えることに関しては私はサポートできそうにないな……。でも、魔法は引き続き教えてやるからな。他の属性なら、お前なら鍛えればいくらでも強くなれるだろう」

「はい……ありがとうございます……」

「まあ、また毒に関してなにか質問でもあれば、いつでも聞いてくれ。くれぐれも、また毒を食うような無茶だけはするなよ」

「はい、わかりました……」


 まあ、毒は引き続き食うつもりなんですけどねっ!

 いくら止められても、俺はもはやミレイユの料理なしでは生きられない身体になっちまった。

 ミレイユの料理のあの癖のある味と匂いがたまんねえぜんほおおおお!

 

 

 ◇



 どうやら俺には毒魔法は使えないようだった。

 それならそれで仕方がない。

 他の方法で毒耐性を鍛えることにしよう。

 なぁに、これまでもそうやってきたんだから、大丈夫だ。

 強い毒のある食べ物を探せばいいだけのこと。


 さすがにもうミレイユの料理だけでは毒素が足りなくなってきた。

 ミレイユの料理は中毒(・・)レベルで好きになってしまったから、引き続き作ってもらうにしても……修行は別のところでやらないとな。

 もうミレイユの料理じゃあ、数時間お腹を壊すだけになってしまった。

 どこかに気絶できるレベルの毒料理、落ちてないかなぁ……?


「そういえば……【モンスターの肉】って、毒素が強くて食べたらいけないらしいな」


 そんなことを思いついてしまった。

 俺はさっそく、モンスターを探しに、森の中へと足を踏み入れるのだった――。

 ついでに、なにか毒キノコでも生えていたらいいなっ!





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