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第11話 お風呂キャンセル界隈~ふろキャン□~


 俺はそれほど毒に詳しくはない。

 しかし、ある程度一般的な知識なら知っている。

 これでも前世ではちゃんと学校に通って受験勉強もしていたからな。

 まあお金無かったから、立ち読みと中古の参考書ばっかだったけど。


 毒にはいろんな種類があって、【植物由来】、【動物由来】、【鉱物由来】のものに大分される。

 それらそれぞれの対策を考えて、毒耐性を鍛えていく必要があるだろう。

 【植物由来】の毒だけを鍛えても、【動物由来】の毒なら死んでしまう、という可能性もある。


 毒耐性の正確な仕組みがわからない限り、最善を尽くす必要があるだろう。

 だから俺はあらゆる可能性を排除するために、【菌類】への対策もすることにした。

 例えば、腐った食べ物にはボツリヌス菌やサルモネラ菌などがいる。

 さらに、キノコも菌類だし、中世ファンタジー世界では黒死病などの伝染病も怖い。


 毒以外でも、キノコや腐った食べ物などの菌で暗殺される可能性だってあるのだ。

 ファンタジー世界だし、ゾンビやスケルトンなどには【瘴気菌】と呼ばれるものがついていたりもする。

 それに俺はもともと、身体が弱く風邪をひきやすい。

 毒で死ぬ前に、菌で死んだらそれこそ意味がないからな。


 毒と菌は別なのかもしれないけど、少しでもこの虚弱体質にムチをうつ!

 俺は菌に耐性をつけるため、できるだけ汚くして過ごすことにした。

 清潔感は失われるが、命には代えられない。

 俺は数日間、風呂にも入らずに、手も洗わずに過ごすことにしたのだった。


 あと、平行して、このヒョロガリの身体を鍛えることにする!

 幸いにも、最近はミレイユの毒料理のおかげでよく眠れるから、筋トレの疲労回復もばっちりだ!


 そう言えば最近、ミレイユにも怒らないで普通に優しく接せている気がするし……。

 これはなんでなんだろうか……?

 もしかして、普段日常から毒を摂りすぎていて、そのせいで元の性格(ゼノ)の意識が、朦朧(もうろう)としているのか……!?

 まあ、俺としては普通に喋れるようになって、楽でいいんだが。

 なんだかなぁ……。

 

 

 ◇

 

 

 風呂に入らない生活が何日か続いて……。


 それなのに、なぜか毎朝、起きた時に身体がスッキリ(・・・・)している……ような……?

 いったいなぜだ……?


「もしかしてミレイユ……お前、俺が寝ている間になにかしているのか……!?」


 俺は目覚めてすぐに、ベッド脇で佇んでいたミレイユに尋ねた。


「はい……。すみません。眠っている間に、お身体を濡れたタオルで拭かせていただいておりました」

「そ、そうだったのか……。ありがとう。なんかすまん……」


 それに、なんか恥ずかしい……。

 ってことは、つまり、俺が寝ている間に裸とか見られたり、身体を触られているってことだろ……!?

 俺が風呂に入らないばっかりに、ミレイユにそんなことをさせていたとは知らなかったな……。

 てか、じゃあ風呂に入ってない意味ないじゃないか……!

 

「その……ミレイユは平気なのか? 嫌じゃないのか? 俺の身体を拭いたりなんてして……」

「平気ですよ。貴族様のお身体を拭いたり、お流しするのは、メイドにとっては当たりまえのことですので」

「そ、そうか……ならいいんだが……」

「それに……むふふ……」

「ん……?」

「な、なんでもありません……」


 なんか、今の笑い方、嫌な予感しかしないだが……?

 コイツ、俺が寝ている間になにやってんだ……?

 怖い……。


「しかし、こう長くお風呂に入らないのはさすがに私もどうかと思いますよ? 匂いなどは、私はゼノさまのものならどんなものでも平気ですが……。他のメイドからは、苦情がきています」

「そ、そうだったのか……」

「もちろん、文句を言っていたメイドはこの私がシメておきましたが……」

「だから……怖いって……」


 なんだろうこの子、最近どんどんようすがおかしくない……?

 なんというか、ヤンデレ化してきてない……?

 気のせいだといいんだけど……。


「まあでも、ミレイユの言う通りだな。そろそろ風呂くらい入っておくか」


 ミレイユがいくら平気でも、他のメイドに嫌われてしまったら、意味がない。

 風呂に入らないことで菌に耐性をつける作戦だったが、そのせいでメイドに嫌われてしまっては、逆に毒殺の可能性を上げることにもなりかねないからな。本末転倒というやつだ。


 俺はおとなしく風呂に向かった。



 ◇



「……で、なんでついてくるんだ……?」


 なぜかミレイユが風呂場までついてくる。

 あの……俺、今から服脱ぐところなんですけど……?


「当然、貴族様がご自分で身体を洗うなんておかしいでしょう? 以前もゼノさまはメイドに背中を流させていましたよ?」

「で、でもぉ…………」


 それは俺が前世の記憶を取り戻す前の話だ。

 現代日本人の感覚を持っている俺からすれば、貴族にとっては当たり前のことでも、やっぱり恥ずかしい。


「いつも私がお身体を拭いているのですから、今更恥ずかしがらないでください。ほら。ぬぎぬぎしてください」

「いやぁ……ん……」


 俺はミレイユに無理やり服を脱がされて、少女のように恥ずかしがるのだった。

 どっちかというとこれ、逆じゃない……?

 

 


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