10.情報には気を留めよ。
商人のシーンが案外長くなって調整したり、読み直してリメイクの準備してたら、9話投稿してからだいぶ時間経ってた件
その間に、大陸地図と異世界語(平仮名と数字)は完成したので、大陸地図の方は次回に挿絵で入れます。(異世界語の挿絵は未定)
あと、ポーレンヴェルト共和国をポーチュラント共和国に改名しました。
これで訓練で使った矢と短剣は全て回収したな。
魔力感知の様子では、アヤノが一番動いているようだな。
おそらく、ティピカはもう最初にテントを張り終え、それをアヤノが真似して2人分のテントを張っているんだろう。
プラハトもそれなりに動いているようだが、ほとんどはアヤノのおかげだろうな。
そして、3人の方へ合流するとややミスがありつつも全員分のテントは張り終えていた。
「ふむ。少しミスがあるが、この程度であれば許容範囲だろう。」
「では、昼頃まで休め。明日の訓練は野営の様子を見て決める。」
その後、闇ギルドに行くとネス宛に文書が届いており、その封筒を受け取って封蝋を確認する。
グリートマーセンの闇ギルド印に、『取引』と書かれた印。
フリューアーの手の者からか。
封蝋を開けて中の文章を読むと、
『南北での時間的障壁地の帯電にて。
扶養恩はなし。
動く気はあまり、、、
まえはそっと私に彼も気どってて、
上下ださい衣装。
二対の右目より』
内容を読み終えた後は火属性魔法で炭も残さずに燃やした。
どうやら北の緩衝地帯こと魔族領に不穏な動きがあるらしいな。
それでわざわざ俺を呼ぶということは魔王復活でもしたか?
まぁひとまずマハト神聖皇国に戻るとしよう。
明日は移動で終わりそうだな。
翌日。
「今日はまず冒険者ギルドで護送依頼を受ける。」
「商人の護衛です?」
「あぁ。今日もここには魔物は湧いていないようだからな。ここを出て別の場所に移動する。そのついでに護送だ。」
そして冒険者ギルドへ行き、依頼を見る。
「ヴィッセンシャフト行きの馬車がたくさんあるです。」
「ダンジョンから出たアーティファクトを買い取って国に戻る商人達なんだろう。しかも、今はダンジョン内に魔物が湧かなくてアーティファクトの供給が増加しているから、それを嗅ぎつけて商人の数も増えている。」
「ふむ。このラント村行きの馬車にしようか。」
「共和国に戻るです?」
「あぁ。最終的な目的地は後ほど伝えるが、今日は徹底的に移動だ。基礎体力がもっと必要そうだからな。」
そうして依頼人との集合場所へ向かう。
「あなたがラント村行きの護送依頼の方ですか?」
「はい。わたくしは、ヴィッセンシャフト技術公国技術調達部門東方課のオスト・ヘンドラーです。今回の護衛、よろしくお願いします。」
「ギジュツチョウタツ・・・?」
「分かりやすく言い換えると、ヴィッセンシャフト公認の商人ですね。わたくしどもは国の指示の元で活動しています。」
「ヴィッセンシャフトの商人は個人の利益ではなく、国家の利益の為に動く。故に、普通の商人と違って金銭的利益だけが目的じゃない。だからこそ時として行動が読めない。と商人の間では噂だとか。」
「噂はあくまで噂。わたくしどもであっても赤字を出すようなことはできないですとも。」
「素人意見ではあるけど、ヴィッセンシャフトの商人は魔導具を直接仕入れる事ができる。それだけで赤字の幅が狭まり、ライバルが赤字になるような値段であっても売れる。普通の商人からしたらたまったものじゃないんじゃないか?」
安く売って儲けて、アーティファクトを高値で買い占めて、本国で魔導具の研究開発。
技術調達部門は国の財源として儲けるというよりも、アーティファクトを手に入れて技術を分析することが至上命題。
だからこその技術『調達』部門であり、このループこそが、ヴィッセンシャフト技術公国を魔導具市場の絶対的な頂点たらしめた要因だ。
「いえいえ、魔導具の市場価格と製造価格にはそこまで大きな差はありませんよ。」
にしても上手く口が回るな。
さすがは貴族でありながらも商人をしている理由であろう話術Lv.10スキルだ。
「ずっとここで話すのもあれですし、出発して進みながら話しましょうか。」
「?、馬がいないです。」
「えぇ。わたくしどもの馬車は魔導具が組み込まれていますので、馬が要らないんです。」
そう言ってオストは操縦席を操作して魔導具を起動すると、馬車が進み始めた。
「車輪が勝手に動いてるです。」
「なんか後ろからモクモクしてる。」
「エンジン?」
火属性と風属性、水属性が使われているか。
魔導具版蒸気機関だな。
「凄いでしょう。これは魔導回転機構と言って、最近では国内の生活に普及し始まってるんですよ。と言っても、まだ国外輸出まではいっていないんですが。」
「これほどの力を出すにはそれなりの魔力が必要なんじゃないですか?」
「よくぞ聞いてくれました!そうなんですよ。本来の魔石であれば、岩石くらいの大きさがないとこれは運用できませんが、わたくしどもの扱う魔石はほとんどが高純度魔石なので、通常のと比べて非常にコンパクトにできるんです。」
「希少な高純度魔石がそんなに?」
魔石とは、地上の魔力が地中に流れ、それが地中の岩石などに圧縮されて溜まって魔力が宿ることで生成されるが、魔力が宿るにはそれなりの時間がいる。
イメージは地球でいうところの化石燃料だな。
普通の魔石は1%程度の魔力しか宿っていないから生成されるのに大した時間はかからず、そこら中で採掘できるが、50%くらいの魔力が宿って高純度魔石になるにはかなりの時間地中で圧縮されなければならない。
つまりかなり希少だ。
それを国の組織とは言え、一介の商人が使えるということは何らかの量産手段があるとみて間違い無いだろう。
「えぇ。具体的な方法までは存じ上げませんが、勇者殿のおかげだと聞いています。高純度魔石に魔導回転機構、その他にも最近の発明のほとんどは勇者殿によるものだそうでして、わたくしどもといたしましては、有り難い限りでございますよ。」
「魔道具の事には詳しくありませんが、すごいですね。」
従来の魔石は宿っている魔力が少量ゆえに、術式で魔法発動を手助けする程度のものだが、高純度となるとそうではなくなる。
普通の魔石で魔術紙に術式を書いて発動すると少しは魔力使用量が減るが、その量は0に等しい。一方の高純度魔石は魔石に宿っている魔力量によって魔力使用量が大きく減る。
しかも、初級魔法ほど術式が単純で魔力消費が小さいと、魔石の魔力だけで魔法を発動できるようになる。
その特性を使って、火・水・風の初級魔法『ファイア』『ウォーター』『ウィンド』で蒸気機関にしているのが、この魔導回転機構だろう。
問題は高純度魔石の量産方法だが、勇者ならユニークスキルの可能性もある。
直接鑑定する必要があるな。
「私は勇者というと、戦闘職のとても強い方ばかりだと思っていました。」
「わたくしも以前まではそう思っていましたよ。ですが、わたくしどもの元に召喚された勇者殿のユニークスキル『ゲームプレイヤー』は、戦闘力を犠牲に技術系スキルを強めるものらしく、まさにヴィッセンシャフトらしいものなのだそうなんですよ。」
「あのぉ、」
「何だプラハト。」
「門はもう通り過ぎたけど、私達は歩くの?」
「回復ポーションなら十分に用意しているぞ。」
「ずっと歩くの、、、」
「諦めるです。体力が無いプラハトが悪いです。」
「はっはっはっ、冒険者は大変ですね。ところで、そちらの腰に着けているベルトポーチ、アーティファクトとお見受けしました。」
「あぁ、これですか。アイテムボックスですね。」
「やはりそうでしたか。アーティファクトの中でも数が多く、世に出回っていますよね。ちなみに、中には何を入れてらっしゃるんですか?」
「硬貨と小瓶のポーション、魔術紙ですね。アイテムボックスに入れないとかさばるので。」
「魔術紙ですか。冒険者らしい持ち物ですね。いやはや、商人といたしましては、見た目以上の容量を持つアイテムボックス。これをどうにか輸送に使えるようにできないかと、アイテムボックスの大型化を研究部門に依頼しているのですが、中々難しいそうなんです。」
「なるほど。今の大きさじゃポケットに入るくらいの物じゃないと入れられないですからね。魔導具などの商品を運ぶにはもっと入り口が大きくないとならないと。」
「はい。それでも、わたくしどもはアイテムボックスを活用した魔導具を開発することには成功したんです。」
どうやら既に話術スキルが発動していたか。
まぁ、情報が得られる分には良い。このままで行くとしよう。
「それがこちらの半自動魔法発射器です。」
「普通の魔法の杖みたいな見た目ですね。」
「運用部門でのみ使っていた時はもう少し違う見た目だったそうなのですが、輸出が決定した際に、量産性の面からこのような見た目になったとのことです。」
魔法の杖を元に、魔力の通るミスリル部分をいじってアイテムボックスと引き金をつけただけの単純な設計。
確かに量産性はあるだろうな。
「アイテムボックスと杖が組み合わさっているのは分かりますが、どのように使うのでしょうか。」
「これはですね、まずアイテムボックスに何らかの術式の入った魔術紙を入れておきます。そして、魔法を打ちたい時にここのスイッチを握るだけで、魔法がすぐに打てるんです。」
「なるほど。魔術紙をアイテムボックスから取り出さずにすぐ打てるというのは便利ですね。」
アイテムボックス内部の回路が分かれば後は作れるな。
ただ、今のままでは使い勝手に欠ける。
拳銃サイズまで小型化して片手で打てるようにすれば実用性はあるだろう。
「良ければ試しに使ってみますか?」
「試しに使うのは無料ですか?」
「えぇ。壊さない分には。」
手に取って構えてみるが、明らかに銃口側が重い。
アイテムボックス分の重さだな。
「今は何の魔術紙が入っていますか?」
「ファイアバレット10発分です。1発打ったらアイテムボックスに付いているレバーを右にカチッとしてから離して下さい。それで次の魔術紙に切り替わって打てるようになります。」
ちょうど良いところにゴブリンが居るな。的にするとしよう。
照準は付いていないが、普通の魔法の杖と考えて向きを調整し、あえて外す位置に向けて引き金を引いた。
そして、火の弾はゴブリンへ向かって飛んでいき、5歩手前くらいの位置に着弾した。
それによってこちらに気づいたゴブリンがこちらへ走ってくる。
着弾位置は予想通り。続けて二射目で当てるとしよう。
一度持ち替えてレバーを引いてから再度構える。
先ほどと同じ向きへ向けて引き金を弾き、同じ場所へ向かって火の弾が飛んでいき、こちらに走ってきていたゴブリンの胴体にちょうど命中した。
「お見事です。」
量産品だからそうなっているのかは分からないが、扱いづらいな。
まぁ、形状はいくらでも改造できる。問題は回路だ。
ちょうどさっきとは別のゴブリンの群れが見えてきた。
念の為打っている様子を外から見ておくか。
「プラハト、あそこにいるゴブリンの群れに打ってみろ。」
「えぇ、、、!?」
「精度に意識を向けて打て。どのみち素早くは打てない。」
回路が特殊な分、魔力を込めてから放たれるまでのタイムラグが通常よりやや大きい。
魔力操作が速い代わりに精度の悪い癖があるプラハトで軍などでの有用性を測るとしよう。
プラハトが魔法を打つ為に前に出て、立ち止まって狙いを定める。
やがて狙いが定まって打つが、見当違いの場所に着弾した。
ふむ。
狙い自体を外してはいたが、魔法は向けた場所に真っ直ぐ飛んだな。
量産型でこの精度であれば、正規品も同様に精度が高いだろう。
とすれば、正規品なら照準くらいはついていると考えられる。
そうすると、魔力操作の上手い下手に関わらず、照準での精度が魔法の精度になる。
魔法にも武術にも才のないミリテールからのあぶれ者が多いヴィッセンシャフト人にはうってつけだろう。
そして、プラハトが発射器をもう一度構えて打つが、今度はゴブリンの逆側に着弾した。
そろそろゴブリンが馬車に近づいてきたので、剣を構えてクイックボルトの魔術紙を用意する。
その次のプラハトの第3射は、ゴブリンとの近さもあって流石に命中した。
「そこまでで良い。」
そして、魔術紙を使用して残ったゴブリンの群れへと素早く斬りかかり、一気に倒す。
「ところで、魔術紙を補充する方法は?」
「アイテムボックスの口が左右2つに分かれているのは分かりますか?」
「はい。」
「まず左側の方に手を入れると、5本ほど棒のような物があると思います。」
「ありました。」
「それを取り出してください。」
「取り出すと凹型のものが見えると思いますが、その中に魔術紙を1枚ずつ挟んで穴の空いてる方を下にしてアイテムボックスの右側から入れる事で補充できます。」
なるほどな。そこまで分かれば後は作れる。
このくらいで情報は十分だな。
「私達としてはなかなか扱いづらそうですね。魔術紙はアイテムボックスから取り出して直接使うのに慣れていますし。ちなみにいくらですか?」
「大金貨1枚分、ちょうど10万ゲルトになります。」
「装備品としては高額な部類ですね。」
「えぇ。量産品と言っても杖の値段がかなりはりますので。」
杖本体の回路の精密さ的には妥当な金額か。
しばらくして、日が暮れる頃にはラント村に辿り着き、ギルドで依頼完了の処理をして商人と別れた。
「さて。次はダンジョンに行くぞ。」
「うぇ〜、疲れた〜。」
「ずっと歩きで疲れたです。」
「ワタシも。」
「ダンジョンに着けば少し休みの時間は取れる。」
そうこうしつつも、ダンジョンについた。
「ダンジョンというより、遺跡です?」
「マモノも全然居ない。」
「ふむ。ここだな。」
そう言って壁の一部を押すと、幻影の魔法などが解除され、壁だった所に隠し通路が現れた。
「行くぞ。」
隠し通路を進んでいくと、1つの部屋にたどり着き、その部屋の中央には現代のとは違う大きな魔法陣があった。
そして、小型のアーティファクトを取り出して起動し、魔法陣の中心へと投げる。
それと同時に魔法陣へ魔力を流し込んで起動すると、投げたアーティファクトが消えた。
「消えたです!?」
「不用意に触れるなよ?数分はこの部屋で待機だ。」
「やっと休める〜」
すると、突如魔法陣が起動し、そこから男が現れた。
「お頭、お戻りですかい?」
その男がそう言うと同時に、こちらへさっきのアーティファクトを投げる。
「あぁ。」
それを受け取り、先ほどのアーティファクトと同じものであることを確認し、しまう。
「休憩は終わりだ。行くぞ。」
「えぇ〜、まだ全然休めてない〜」
「誰です?」
「そちらはダレなんです?」
「着いてから説明した方が速い。まずは魔法陣の中に入れ。」
そして、5人とも魔法陣の中に入り、起動すると、先程と似ているが違う場所が視界に入った。
「お頭、よくお戻りで。宿は手配済みでっせ。」
「手際が良いな。場所は?」
「フェルファル町8番区画3丁目っす。宿の主人もわいらの息がかかっとんで、宿1つ丸ごと借りてありやす。」
「エレンズシュタットから程近い8番区画なら、団体客にはちょうど良いだろう。組織の者を何人かカモフラージュに泊まらせておけ。」
「分かりやした。」
8番区画は戦火に巻き込まれた訳ではないが、戦後のエレンズシュタットの治安悪化につれて人が離れていった。
そうして空き家も多く建ち並ぶようになったが、闇ギルド本部が近過ぎる為に闇ギルドの人間が活動することは少ない。
絶妙なバランスの上に成り立った廃墟と言えるだろう。
一時的な滞在にはちょうど良い。
「あの人達は誰です?」
「その説明は馬車の中でするとしよう。」
そうしてその遺跡から出ると、目の前に旅客馬車が用意されていた。
それに乗り込み、組織の者が手綱を握って宿へと向かい始める。
「さて。以前、俺が奴隷制などの様々な問題を抱えるフライハイト国家連邦を破壊すべくマハト神聖皇国から派遣されたと言うことについては説明したな。」
「はいです。」
「うん。」
「はい。」
「彼らはその仲間達、組織『連邦ノ崩壊』のメンバーであり、俺がそのボスだ。何か聞きたいことはあるか?」
「どのくらい大きいです?」
「まだ東ポーチュラント共和国内程度の大きさだ。とは言え、信用はできるメンバーが集まっている。」
この組織は連邦との戦争によって損害を負った者を集めた分、連邦への工作面では信用できると言えるだろう。
負の感情に身を任せる者たちだからな。




