表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ホリゾント・ヘル  作者: 神無時雨
第二章   未来を拓く剣
7/7

二章1話 supernova

時刻はすでに夜。人通りも少なくなって来た。車が停車し、女性が朔たちに促す。


「ん、ここだよー。降りて降りて…おーい!そこの子!!よだれは拭いてね!この車高いのよ!」


目覚めたマリンは朔がポケットから取り出したティッシュで渋々拭いている。


「ここは…」


来たことはないがよくテレビなどでも放映される有名な場所。朔たちは大きな鳥居の前に立っている。そう、ここは三重県。伊勢神宮だ。


「なんつーところまで連れてこられたんだ…また関西圏までとんぼ返りかいな…」


「はーい、みんないくよー!着いてこないとたぶん迷っちゃうよー?」


慌てて朔たちは女性に連れられ、伊勢神宮内宮に入っていく。ここで朔は元来のビビりを発動し、密かに怖がる。周囲には明かりもない。


「なんか幽霊でそう…」


自分がもう霊を倒しているのをすっかり忘れている。

途中で女性が立ち入り禁止のロープを持ち上げ、誘導する。朔たちはそのおそらく一般公開されていないところを十分ほど歩いた。そして不意に女性が立ち止まる。二本のかがり火があり、大きな石階段がある、しかも下に続く。


「ようこそ、われらが『退霊師団(たいれいしだん)』本部へ。」


芝居がかった口調で女性は話し、朔たちを招き入れる。朔たちは長い階段を下っていくのだった。


◆ ◆ ◆

広いところに出た。こんなに下に位置するのでさぞかしじめじめしてたり暗いと思っていたのだが通気性はよく、あたりの物が十分わかるくらいには明るい。

この部屋はまあ小学校の体育館くらいの大きさがあり、この部屋の三方から更に通路が伸びている。

コツ、コツと靴の音を響かせ、右通路から誰かが出てきた。明治時代くらいの軍服だが灰色で統一されていてシックな印象を受ける。


「ようこそ。私たちはあなたたちを歓迎します。」


「あ、あなたは…!大阪府警のおじさん!簪キープできました!ありがとうございます!」


何を隠そう大阪城の時にお世話になった風野その人であった。


「役に立てて何より。この一か月ほどいろいろあったと思うけれど、そこを説明させてくれないか?」


そのとき正面の通路から小走りにやって来たジャージ姿の男の人が気さくに話しかける。


「ちょっとちょっと~。そういう説明は師団長であるボクがしたほうがええんちゃうか~?」


それに対しずっと朔らの前にいた女性も言う。


「私が連れてきたんだし、一応副師団長だし、私が報告する義務があると思うんだけど?どう思う?」


ちょっと情報が多すぎる。少し整理したい…


「あ!急すぎて鳩が豆鉄砲食らってるやん!ちゃーんと説明したるさかいにな!

まずはボク、師団長の星宮凱羅(ほしみやがいら)といいます!口調の通り京都出身やねん!よろしゅー」


無造作に撫でつけられた、黒ベースで緑のメッシュが入った髪。太眉で感情豊かに見え、大きめの瞳は黄色。自前だろうか?右頬に絆創膏がある。中背中肉で、失礼だがぱっと見師団長には見えない。何か特殊技能を持っているのかもしれないが。


「じゃあ私行くね!私は副師団長の椎陽葉(しいようは)!出身は千葉で、好きな食べ物はお好み焼きです!よろしくね!」


紫と紺色の間のような長髪をハーフアップにしている。右腕だけ指先まで包帯が巻かれている。弓を扱うのだろうか?瞳は黒くまつ毛が長い。金縁で緑色のジェルが入った大きな葉っぱのイヤリングを両耳にしている。身長は朔よりも高い。そして胸は小さ


「今失礼なこと考えたよね?」


「え?いやまさかぁ…」


「いいもん!胸なんて空気抵抗食らうだけだし!ああもう!君たち2人とも何食べたらそんなになるの!?いやべっつにー?羨ましくなんかないけどぉ!?」


つばさとマリンは反応に困っている。2人とも割と立派なモノをお持ちである。


「とにかく!話を進めよう。私は表の顔は大阪府警所属だが裏ではこの師団の特殊後方支援部隊長を務めさせてもらっている。この師団は3つの部隊で構成されるんだ。1つは主力攻撃部隊『朱花(しゅか)()龍爪(りゅうそう)』。近接武器を用いて前線で戦うんだ。1つは砲兵部隊『幻暈(げんうん)()(つの)』。主力攻撃部隊を巻き込まないように大型、小型の銃火器を使い分けて攻撃する。そしてもう1つが特殊後方支援部隊『光耀(こうよう)』。私のように表の顔を有名人に持つ者も多い。霊は見えるが戦う力のない者たちが集まる。情報の仕入れ、哨戒から現場での補給、師団員の武器の開発など重要任務を担うんだ。そして天原君。大阪城の件は何とかうまく収めたから気にしなくてもいいよ。」


「!!ありがとうございました!必ず持ち主まで簪届けます!」


「話進めるで。で、さっきこの風野が歓迎すると言っていたんやけどけど、厳密にはまだ君たちは入団でけへんねん。この師団は基本スカウトで成り立ってるんやけど、本性ってもんは土壇場で出るもんでなぁ。ほんまにこの師団員として適してるかを確かめる入団選抜試験っちゅーもんがあるんよ。あんさんら3人プラス同期の2人でこの試験を受けてもらうわ。」


「同期ってどういうことですか?」


「2日前ぐらいにスカウトされた子がおんねんけど、またその子らもちょっといわくつきでな。聞くところによると、朔君、マリンちゃんはなーんかけっこう胡散臭い立場やし、つばさちゃんもイタコの祖母がいはるんやってね。まとめてテストしよーっていう感じやねん。そういうの副師団長がうるさくてな。」


「?陽葉さんが副師団長じゃないんですか?」


「ああ、副師団長は私のほかにももう一人いるの。ん、噂をすれば。向かってくる足音が聞こえるよ。」


コツ、コツとまた靴の音が響き、一人の男性が現れた。この人も白の白衣と水色の袴を着用している。


「随分と騒がしいですね。」


「あなたのお名前はなんていうんですか…うわ!」


聞き終わる前にいつの間にか名刺が手元にあった。動き早すぎだろ!?


『大迫力樹』


「…大迫力樹(だいはくりょくいつき)?」 「大迫力樹(おおさこりき)です。そんな間違いをしたのは君が初めてですよ。」


彼はジト目でこちらをにらむ。半端ないって。橙色の長い髪を後ろでまとめている。四角の銀縁眼鏡をかけており、前髪は丁寧に分けられている。そして黒いたすきをかけている。


「私はあなたたちを認めていませんし、あなたたちのことは苦手です。霊の力を使って霊を倒すなどもっての外です。」


なんだかすごーく悪印象。しかもこの男性から流れ出る鬼気はすごく肌を刺してくる。


「はいはい!そこまででええやろ?さっさと始めよーやー!…の前に、もう2人を合流させなあかんなぁ。」


風野さんが1人の女の子とガタイのいい男を連れて来た。女の子は小学6年生くらいだろうか?男は朔と同年代っぽい。


「じゃー、うまい具合にアイスブレイクしてもらって、30分後には選抜始めるわー!内容は追って通達する!!」


朔たちはとりあえず集まる。男のほうがしゃべりだす。黒髪で、ところどころに独特の跳ねがあり、目は青い。


「僕の名前は暈嶽輝登(うんごくきらと)っていいます。高1で、出身地は埼玉です。僕は幼いころから少しずれてたんです。なんか、ぼんやりとした色の人魂らしきものが物心ついた時から見えてたんです。その言葉がある程度聞き取れたので、周りのみんなが自分と違う世界を見ているって知ったときは衝撃でした。親からは疎ましがられました。それで小学生の時はいじめられて、中学に入ってからは私立に入って逃げました。でも、小学校でうまくやっていけなかった僕が中学生になって急になじめるわけがなかったんです。結局陰キャの極みで友達もなくやり過ごしました。高校に入って、心機一転、おちゃらけたキャラでやりました。イタいとこまではいかなかったし割と楽しく過ごしていたんですけど、いじられキャラのせいで、本心や悩みを共有できる親友はいませんでした。うわべだけの付き合いだったんです。そんな時、ある事件が起こりました。まあ僕は人との距離感というものがわかっていなくて、一部の人から相当ウザがられてたらしいんです。まあ人魂を無視しきることができず見てしまう時もあったのも原因でしょうかね。高1の終わり、担任の女の先生が出産するために休職することになったんです。それでみんなで色紙やらを買ってプレゼントするため、お金を集めたんです。みんなでそれを買いに行く前日、僕は教室で一人で勉強していました。高2になるにあたって頑張ろうと思って。そして僕は自分の机以外触らずに帰ったんですけど、次の日お金がなくなったんです。当然僕は疑われました。必死で否定しましたが、まあ無理でした。僕が結局全額払うことになって、親には相談できませんでした。切羽詰まって、半ば衝動的に近くの古アパートから身を投げました。でもたまたま通りかかった星宮さんにキャッチされたんです。事情を聞いて、全額払ってくれたばかりか僕の面倒も見てくれるとのことで。僕は生まれ変わったような気がしました。初めて人魂の話を真剣に聞いてくれたんです。あの人は言ってくれたんです。僕は生まれ変わった。新しい人生を生きろと。だから僕はこの人についていくって決めたんです。僕は世界でいちばん幸せになります!!!」


朔はもはや感動して言葉が出ない。なんていいやつなんだ。朔も自分の経歴を軽く話した。場が和んだ時、その空気を破るように、


「わ…私はそんな感動的な話じゃないよ…?」


そう言い訳して、この大きなみつあみを二つ後ろに垂らした、桃色の髪と黒い目の女の子は少し後、話し出した。


「私は有栖川澪(ありすがわみお)…。小学6年生で、愛知県出身なの。私も輝登さんと同じで小さい頃から霊感があったんだと思うの…それもずっと強い。私の場合…幼児くらいの小さな手がの膝から先が見えたし、それと触れ合うこともできたの。幼い頃はやっぱりそれが普通だと思っていたんだけど…人とは違うってことがすぐにわかった。どんどん手は大きくなっていって…今は私の身長と同じくらいの大きさなの…。手はなぜか私の意思に従ってくれる。親からはさんざん虐待されて、家を放り出されて…あてもなくさまよっていて、おなかがすいたのかな?私は倒れて、目覚めたらここにいたの…。連れてきてくれたのは椎さんらしいの…。私はそこで初めて愛情というものを知ったわ…。私もあんな女性になりたいと思ったの。でも、こんな私じゃダメかな…?」


そういって澪はさみしげに微笑む。小6にこんな顔をさせてよいだろうか?そんなわけがない。絶対にこの子が心から笑えるようにしなくては。


「大丈夫だよ澪ちゃん。あたしがんばるから!!」


「まずはこの試験、全員で合格しよう!!」


「そうだな、つばさ!みんなで入団しよう!!」


「せやな、そろそろええか?始めんで。」


「「「「「はい!大丈夫です!」」」」」


「試験内容は、団員との鬼ごっこ兼、手合わせにするわ。まさか本物の霊呼んでくるわけにも行かんしなぁ。いっちょ気張ってやー。ニ十分後に始まるからそれまで逃げてな。団員は君らの能力知らんから、うまーく意趣をつくんやでー。見つかったら対戦開始。武器は訓練所で取ってや。ボクらも本物のやつ使うから。気絶したら負け。あ、朔くんにはこの剣返しておくね。じゃあ、カウントスタート!!」



朔たちはかたまって走る。訓練所だろうか?パルクールができそうな広場に出た。


「追い込まれそうになったらここまで来よう。地形を生かしやすいし、俺こういうの得意だから。」


「私も陰ながら呼び出した手で応戦するから…。」


ここにくるまでに相談した通り、朔たちは近くの部屋から廃材をかき集め、罠の設置にかかる。

鋭い笛の音が鳴る。スタートということだろうか?

つばさたちはめいめい手に馴染んだ武器を取って駆け出した。

◆ ◆ ◆

朔と輝登とつばさで逃げる。マリンと澪は開始直後に散開。生存率を上げる。開始から10分。奇妙な静けさである。まるで嵐の前の、である。朔たちが少し歩を緩めた瞬間。左の壁が反転、女が出てきた。上からも男が降ってきた。


「忍者屋敷かここは!!」


ツッコむ朔に、出てきた女のほうが答える。


「んんー。まあ、そんな感じの理解でいっか☆」


白いツインテールの髪の毛にいろいろな飾りのヘアピンをつけまくった、くりっとした大きな茶色い目の少女。上は山吹色の白衣、下は白の袴だ。


「私は海杖万里亜(かいじょうまりあ)。キミたちの一つ上の世代だね。キミたちを逃がさないように言われてまーす!ってわけで、追っかけちゃうぞ☆」


「俺は坂井田伐(さかいだばつ)。こいつに同じく。」


赤髪で、きれいなセンター分け。切れ長の目は紫。そして服の上からでもわかる筋肉。いわゆる細マッチョか。白衣は小豆色、袴は灰色である。


それはともかくとしてテンションの差よ。どうなってんの?だが今は。朔は輝登とつばさと目を見合わせ、


「あ!逃げた!!」


脇目も振らず一目散に。打ち合わせ通り、訓練所へ向かって。左右に曲がりながら追っ手との差を開けようとする。が。


「なんですかこの動き!?人間業じゃないですよ!」


追跡者は床・壁の区別なく蹴って距離を詰めてくる。

どういう風な訓練をすればこんな風に動けるのか?


「秘められた力があれば今のうちにいっとくべきだぜ、輝登。」


「そうですね…何が起こっても振り返っちゃダメですよ?」


輝登は右手を挙げ、指を鳴らす。


とたん、おびただしい数の霊魂が朔たちと伐たちの間に出現する。


「わお⭐︎派手な事すんねー!色とりどりじゃん!」


「今はそこじゃないだろ。逃げられたじゃないか。」


伐は焦って周りを見回すが朔たちはいない。


「…一旦報告に戻るか?」


「いや待って!まだ壁が振動してる。訓練所の方へ向かってるのかな?」


手を壁に当てた万里亜が目を閉じて言う。


「お前がそう言うならそうなんだろ。向かうぞ。」


「あいあいさー⭐︎」


▲ ▲ ▲

判断を間違えた。バラけるのは悪手だったかもしれない。これは本当にまずい。マリンは冷や汗をかきながら四方を見回す。澪とマリンの周り、交差した通路には四方向からの刺客がいる。


「明らかに多勢に無勢…どうしよう…?」


「任せて!あたしがなんとか…」


できないかもなぁ、とは言えない。


「むこうは武装してるんだし、ちょっとくらいちくっとしてもいいかな?」


「後で謝ったら…いいんじゃないかな…?」


そんな会話が行われているとはつゆ知らず、マリンたちを包囲した4人は悠々と自己紹介を始める。

まずは正面。日によく焼けた背の高いムキムキの男。短く刈り込んだ髪と目は金色。白衣は竜胆色、袴は真紅。


「私は御影昂岩(みかげこうがん)。君たちの一つ上の世代だ。おとなしく降参してくれるとよいのだが。」


右。肩までの長さのブロンドの髪と青い目の少女。右サイドで編み込みをしている。白衣は白色で袴は山吹色。背は低めである。右目には泣きぼくろ。


「私は櫻田雛(さくらだひな)。」


左。ブロンドのマッシュヘアーに青い目の少年。白衣は白色で袴は檜皮色。こちらも背は低めだ。仲良くなれそうだ。


「僕は櫻田弥次郎(さくらだやじろう)。雛とは双子で、僕が弟だよ。」


後ろ。黒髪黒瞳のソフトモヒカンの青年。目つきは三白眼でかなり怖い。白衣は灰色で袴は松葉色。


辻一仁(つじかずひと)だ。めんどくせぇから早く捕まってくんねえかなぁ…」


なかなか濃いメンツだ。とりあえず訓練所へとつながる道は左なので、そこを突破するしかない。


「澪ちゃん、つかまっててね。」


澪がマリンの背中に飛び乗るが早いか、マリンは雷に乗って走り出した。勢いのまま弥次郎を突破、訓練所へ向かう。


「あれ、速くない?」


「それは思ったが追うぞお前ら…想定外なんて戦場では日常茶飯事なのだから。」


「へぇへぇ…サクッと捕まえてやるか…」



◆ ◆ ◆

朔たちもマリンたちも訓練所へ集まった。追手は順調に集合しつつある。

罠の準備は万全だ。勝ちに行くビジョンも見えた。

朔は、マリンは、つばさは、輝登は、澪は、円陣を組み、叫ぶ。


「「「「「作戦、開始!!!!!」」」」」



すみません、なんかバグってました。同じ部分をペーストしまくってたみたいです。修正しました。一話あたりの文字数はあまり変わらないので更新速度も変わりません。お騒がせしました。


記号の説明


◆ ◆ ◆  時間が経過していることを表します。


◇ ◇ ◇  過去のことや回想を表します。


▲ ▲ ▲  同時刻に別の場所で起こっていることを表します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
最初からめっちゃ文字数減ってる笑 次の更新待ってまーす
更新ありがとう!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ