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32.エピローグ


「だからなりませんと言っておりますでしょう!」


コクリュウを討伐してから数日後、ヒナノはセツリュウさんに連れられ、竜の住処に来ていた。洞穴かなんかかと思ってきてみれば。普通のお城だった。意外である。


そして、ヘキリュウさんとコウリュウさんを紹介された。ヘキリュウさん見た目がおじいちゃんって感じで、コウリュウさんは脱力系OLみたいな雰囲気である。

で紹介された直後、ヘキリュウさんが言い出したのだ。


「セイリュウ様、守護者についてなのですが」


と。竜には一人の守護者をあてがう。それは本で読んだから知ってるんだけど。一体どういう関係性なのかはわからなかった。なのでそのことを聞いてみると。


「信頼のおける人間ということです」


とヘキリュウさんが言ったので、


「ではルミエラ様で」


と答えたところ大反対を受けているところなのである。


「セイリュウ様のお相手がクレプスキュールの子孫というのは絶対になりません」


と憤るヘキリュウさん。ヘキリュウさん曰く、竜たちにとってクレプスキュール家の人間は、竜を裏切った者、つまり何がなんでも信用できない一族という立ち位置らしい。

そんなこといわれてもな……。


「クレプスキュールはコクリュウを裏切ったのですぞ」

「でもそのクレプスキュール……コクリュウの守護者って人とルミエラ様は同じ一族ですけど、違う人間なわけで……」

「しかし、それでは示しがつかんのです」


一体どこに示すのさ……。


「ああ、あなたは絶対に譲る気はないのですな!」

「はい、ありません」


とヒナノは微笑む。


「しかし、ルミエラ嬢はどう思うでしょう?」


え……。ルミエラ様が守護者になりたくないって言う姿想像したことなかった……。


「守護者になるということは、寿命を延ばし竜と共にいるということ。人間にとって何百年も生きるのは辛いでしょう……」

「あの、でも。私が一番信頼しているのが、ルミエラ様なので」

「……ほんとうにわからず屋ですね」


とヘキリュウさんは天を仰ぐ。


「ヒナノ、久しぶり」

「え、ルミエラ様」

「な、なぜ部外者がここに!」

「ヘキリュウがさっきからうるさいから転移術で連れてきたぁ」


とコウリュウさん。


「あのルミエラ様、今私の守護者を誰にするかを話していまして――」

「ええい、おぬし、よく聞くがよい」


とヘキリュウはヒナノの話を遮り、守護者の役割と、コクリュウとクレプスキュールの先祖と、それから寿命のことを手早く説明した。


「それで、私はヒナノの守護者になるっていう話かしら」

「あのルミエラ様が大丈夫ならぜひ、お願いしたいんですけど……」


とヒナノは頬を掻く。


「裏切りのクレプスキュールを守護者になんて」


とヘキリュウが猛反発する。


「ヘキリュウ様、私がヒナノのことを裏切ることは絶対にありえません。それはヒナノから話を聞いてもらえれば、わかると思います」

「あのルミエラさん、守護者になると何百年も生きなきゃいけなくなるらしいですけど」


それってどうなのかな。メリットと思う人もいれば嫌だと思う人もきっといるよね?


「それだけヒナノと長く一緒にいられるということでしょ。大歓迎よ」

「る、ルミエラ様」


ああ、なんだか泣きそう。


「むむむ! このヘキリュウ絶対に反対ですぞこの――」

「あのヘキリュウ様、あなたにとってはとても残念なお知らせなのだけれど」


いつの間にか聖竜の間に戻ってきたセツリュウさんが口を開く。


「その二人とっくに竜と守護者の間柄よ」

「え?」


今、なんて。

ヒナノとルミエラ様は顔を見合わせる。ルミエラ様はもうすでにヒナノの守護者? どうして?

その横で、ヘキリュウが頭を抱えている。


「な、儀式を終えている……」

「セイリュウ様、クレプスキュールの娘と口づけを交わしたのですか……?」

「えっと、はい」


3回ほど……。


「あなたの大切なものを彼女に送ったのですか」

「えっと多分」


もしかしてルミエラ様がなくしてしまったというネックレス?


「しかも満月の夜に?」


というのは死にかけた夜のこと?


「あ、はい。満月の夜にキスして、大事なネックレスをお預けしました」

「でも私それを紛失してしまって」


とルミエラ様が顔を伏せる。


「ルミエラさん、それ失くしてないわ。あなたのここにあるのよ」


とセツリュウさんがルミエラ様の手の甲の模様をさす。


「まさか、全くの偶然で守護者契約の儀式を……」


ヘキリュウさん足元とんでもなくふらついているけど大丈夫かな……。


「ああ、せっかくセイリュウ様の儀式は竜全員が集まって、お祝いしながら執り行おうと思っていたのに……」

「ああ、ヘキリュウさんそれが最近の生きがいだったもんね」


とコウリュウさんがヘキリュウさんの背中をなでる。なんだろう、ものすごく気力を失ってるし、なんだか可哀そうになってきたな。それに、無意識に儀式を執り行ってしまっていたのも残念な気持ちになる。

あ、そうだ


「ヘキリュウさん、こういうのどうですか?」





1か月後


「ああ、ヘキリュウ。セイリュウ様の儀式が見れるとは感無量ですぞ」

「いえ、こちらこそクレプスキュール家の皆さんを竜の住処に招待していただいてありがとうございます」

「ふん、セイリュウ様の頼みとあれば断れますまい」


竜の住処、聖竜の間にて。

適当に椅子を部屋の両側に並べ、真ん中に白いじゅうたんを敷く。

テレビで見たうろ覚えの教会をイメージして、みんなに協力してもらってセッティングした。

というわけで、ヒナノは白いドレスを着てルミエラ様と公爵が現れるのを待っている。


「しかし、セイリュウ様が『学者の夜』という石をご所望されたときは、世界中を駆け回りました」

「おかげで一か月で見つかってよかったです」


無意識に行った守護者の儀式の際に、ヒナノのネックレスはルミエラ様の体内に吸い込まれ、守護者の模様が刻まれた。せっかく頂いたネックレスだったのに少しだけ残念だ。ルミエラ様に同じ石が欲しいと相談したところ、やはり手に入りにくいものらしい。当初ルミエラ様は、自身が公爵にもらった、ネックレスをくれようとしたのだが、それはお断りした。そしてヘキリュウにヒナノが元居た世界流の儀式が見たければ、「学者の夜」を手に入れてほしいと丁重にお願いしたところ、全力で探し回ってくれたのである。まあ、ルミエラ様がヒナノの守護者になるのを猛反対していたので、これくらいしてもらわないと。と思ったり、思わなかったり……。


「セツリュウ様、そろそろお時間ですぞ」


ヘキリュウの言葉に、ヒナノは唾を飲み込む。緊張しすぎて、喉がカラカラだ。今日この場にいるのは、竜の三人。ルミエラ様のご両親、アリシア様にレンディさん、そしてガリバーさん。ちなみに、みんなヒナノが竜であることを認識しているし、各国の竜が集合していることもわかっている。アリシア様とレンディさんはものすごく動揺していたけれど、これからのことを考えると、まあ正体を明かしても問題ないだろうと、三人の竜も言っているのでいいことにしよう。


白いドレスを着たルミエラ様が、公爵に連れられ白いじゅうたんの真ん中を歩く。

ルミエラ様は少し顔を俯けながら、ヒナノに向かって歩いてくる。ちなみに隣の公爵は緊張してるのか、全身に力が入っていて、歩き方が不自然になっていた。

そして、ルミエラ様が隣にやってきた。


「なんだか、緊張するわね」


とルミエラ様が囁く。その頬は少し赤みを帯びていた。


「ちょっと、やりすぎでした?」

「いえ、とても嬉しいわ」

「では二人とも誓いの言葉を、セイ……ヒナノ様」

「私、セイリュウもといヒナノはルミエラ様を一生をかけ、愛し守り抜くことを誓います」

「ではルミエラ様」

「私ルミエラ・クレプスキュールはヒナノ……セイリュウ様を一生愛し、守ることを誓います」


そう言いながら見つめてくる、ルミエラ様の瞳は少し潤んでいる。


「では、指輪の交換を」


ヒナノは「学者の夜」が輝く指を取り出しルミエラ様の左手薬指にはめる。そして、ルミエラ様もヒナノの左手薬指に指輪をはめた。


「おそろいね」

「はい、おそろいです」


そう言いながら二人で、見つめあう。

ああ、人前じゃなきゃここでルミエラ様にキスするんだけどな……。このあとのヘキリュウさんが式の終わりを告げて、解散となる。


「うぉっほん、それではこれにてセイリュウ様とルミエラ様の竜と守護者の儀式を終わり――」

「っ――」


ヘキリュウさんが式を閉めようとしたさなか、ルミエラ様の唇がヒナノの唇と重なる。

る、ルミエラ様!? 見られてる、見られてますけど。ヒナノは体温が急上昇するのを感じる。もう耳まで真っ赤じゃないかな。


周りからは「あらあら」という声や口笛やらが聞こえてきた。

そしてキスのあと、ルミエラ様に抱きしめられる。耳元で


「我慢できなかったの」


と囁かれながら。

え、可愛い。ルミエラ様超かわいい。


「これからよろしくお願いしますね、ルミエラ様」

「ええ、末永くよろしく、ヒナノ」


これから先、ヒナノは竜として生きていかなければならない。それに対して不安に思うこともある。でもきっと隣にルミエラ様がいるから大丈夫だ。ヒナノはそう信じている





遅くなって本当に申し訳ないです……。


最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。

感謝申し上げます。

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― 新着の感想 ―
[一言] ストーリーがとても気に入りました。途中で少し削られているように感じましたが、エンディングはとてもクールでした
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