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31.決戦前

「っ……」


ヒナノは身体が揺れるのを感じながら、目を開けた。視界が揺れているが、目に入るのは見覚えのある場所。

いつも起きて一番に見る景色と同じである。ベッドの真上の天井だ。


「ヒナノ!」

「セイリュウ様!」


ヒナノは体を起こし、声のした方に視線を移す。


「ルミエラ様……」

「ヒナノ!」


 ヒナノの声に反応し、ルミエラ様はヒナノに抱き着いた。


「よかった、よかったわ!」


 と少し震える声で呟くルミエラ様。涙を拭いながら、ルミエラ様がヒナノに微笑む。


「あの二人とも感動しているところ悪いのだけれど」


 と間に入って声をかけてきたのは……誰だろう。


「えっと」


 白髪の伸びたきれいな女性。肌の状態から言って、髪が白いのは加齢のせいではなさそうだ。


「お初にお目にかかります、セイリュウ様。私、セツリュウと申します。こちらが私の守護者のリアです」

「リアと申します」


 白髪がセツリュウで、その隣に立つヒナノと同い年くらいの女の子がセツリュウの守護者、リアと。


「これはどうもご丁寧に」


 とヒナノも頭下げる。しかし、セイリュウ様と呼ばれることに対する違和感が半端ない。


「セイリュウ様、お目覚め直後にこんなこと言うのもなんですが。コクリュウが解放されました」


 え? いまなんて?


「コクリュウが解放された……?」

「はい、おそらくセイリュウ様を襲ったものが、解放したのかと」

「ということはあの男?」

「おそらくは。しかし、誰が解放したかが問題というよりは、解放されたこと自体が問題なのですが」


 もしかして、さっきの揺れってコクリュウが解放された影響なのだろうか。


「コクリュウが解放されるとどうなるのでしょうか」


 とルナが不安そうな顔で呟く。

 正直、コクリュウがこれから何をするつもりなのは見当がつかない。


「セツリュウさん、これからどうすればいいのでしょう?」

「黒竜を倒さねばならないかと」

「あの私、アンヌ王女と、コクリュウについて話したことがあるんです。彼女曰く、コクリュウは人間に騙された、可哀そうな竜なのだとか」

「私はコクリュウが封印された後に生まれた竜ですので、他の竜から聞いた話でしかコクリュウのことを知りません。ただ、他人を呪うほど、人間に恨みを持ってるのは確かです」


 そうだ、そんなコクリュウに同情するような話、ルミエラ様の前でするべきじゃないんだけど。


「会ってみないとわからないか」


 ヒナノはベッドから出て立ち上がる。


「ちょっとヒナノ、まだ起きては……」


 とルミエラ様が止めようとするが、それを振り払う。


「今は状況の把握が優先です。コクリュウが何を考えているかわからない以上、それを解明しに行かないと」

「でも」

「大丈夫ですよ、もう傷も治っていますし」


 ポンポンとお腹を軽くたたく。というかいつの間に治ったんだろう……やっぱ竜の力?


「では私もご同行します」


 とセツリュウが胸を叩く。


「セツリュウ様がいくなら私も」


 とリアが申し出るが、セツリュウはリアの頭をなでながら、


「いえ、リアは竜の住処の戻り、他の竜たちと連携をとって頂戴」


 と言った。


「だからセイリュウ様と私で……いえクレプスキュールの娘、あなたも来なさい」

「ル、ルミエラ様もですか!?」


 ちょっと、そんな危険な場所に行かせられるわけ……。

 さっきあんな目に遭ったっていうのに……。


「わかりました」


 しかしルミエラ様はヒナノの戸惑いをよそにあっさりと了承する。


「ちょっと待ってください、危なすぎますよ!」


 とヒナノは抗議する。


「しかし、ルミエラさんにも来ていただいた方がいいと思います」


 とリアまでそんなことを言い出す。


「だってこの方は――」

「リア黙りなさい」


 セツリュウの一トーン低い声に、リアは押し黙った。

 リアは一体何を言いかけたのだろうか。


「ヒナノ、もう二度と私を置いていかないで」

「ルミエラ様……。でも危険すぎます!」

「私を信じて」


 とルミエラ様は譲らない。


「ちょっと!こんなところで言い合いしている場合じゃないでしょう」


 見かねたセツリュウさんが二人の間に割って入る。


「でも」

「ルミエラは一緒に来るの」


 ヒナノ以外の全員がルミエラ様が同行することに賛成している。


「わかりました。ルミエラ様、一緒に来てもらいますけど、絶対に安全な所にいてください」

「安心してください、お嬢様の安全は私が確保します」


 とルナさんが、ルミエラ様の手を握る。ってルナさんまで来るつもりなの?


「わかりました。では早速行きましょう」


 とヒナノは廊下に出ようとする。


「ちょっとセイリュウ様……」


 セツリュウさんは腰に手を当て前髪をかきあげながら、ため息をついた。


「まさかここから徒歩で行くつもりですか」

「え?」


 セツリュウは小瓶をとりだし、床に何かを書き始める。赤い絵の具かな。


「セツリュウさんそれは」

「わたくしの血です」

「え……」

「コクリュウの竜の気は追えています。転移術で移動した方が早いでしょう」

「やっぱり本当にあるんだ、転移術」


 セツリュウが手早く、円陣の中に線と文字をかいていく。


「さあ、ここに乗りなさい」



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