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12.再び学園図書館へ

――数時間前。


「ガリバーさん。頼まれた本ですが、ないと言われました」


ヒナノは、研究室の作業机に向かっているガリバーさんに声をかける。

王立図書館の本館に本を取りに行ってほしいと頼まれたのだが、司書に聞いたところ該当する本はないと言われてしまった。

ガリバーさんの助手として働き始めて数週間。だんだんと本を探すのにも慣れてきた。

ちなみに部屋の掃除も任されているが、ヒナノが片づけたそばからガリバーさんが散らかすので部屋はごちゃごちゃしたままだ。

ガリバーさんは作業をいったん中止し、ヒナノの方を振り返る。


「あれ? じゃあ学園図書館のほうかな」

「それって私、無駄足だったてことですか?」

「あー、ごめん。じゃあ、悪いけれど学園図書館まで行って本とってきてくれる? 多分図書館の職員専用エリアにあると思うから。職業証明書、忘れずにね。あと時間も時間だし、向こうでお昼ご飯食べてきたら?」


職業証明書というのは、ヒナノがこの国でどういう職に就いているかを表すIDカードのようなものだ。職業は王立図書館員の助手で、推薦人および、身元保証人の欄にガリバー・タントルと書かれている。


(ガリバーさんには頭が上がらないな)


「わかりました。じゃあ向こうで食事も取ってきますね」

「うん、それと」


研究室を後にしようとするヒナノにガリバーさんは背後から声をかける。


「ちゃんと馬車に乗って行きなよ」


 ガリバーさんのアドバイス通りヒナノは馬車で学園へ向かった。学園に着いたらそのまま学園図書館に直行する。久しぶりの図書館、すでに懐かしい感じがする。

 ルミエラ様と過ごした二週間は正直楽しかった。元いた世界、まあ日本の話だけれど、そのときは特別仲がいい友人はいなかったし。決まった人のそばに長い時間いるって家族とか恋人じゃなきゃなかなかないよね。

 

「すいません、この本を探してるんですけど」


 とヒナノは図書館入り口にいた司書に、本のタイトルが書かれた紙切れを見せる。


「おや、あなたクレプスキュール家の……最近いらっしゃらないので、どうされたかと思っていましたよ。しかし、この本は学生の立ち入りが禁止されているエリアにある本ですね」


 そう言われ、ヒナノは慌てて職業証明書を司書に見せた。


「王立図書館の研究員の助手に転職したんですか……。なら、どうぞ。職員専用エリア右手奥からいける地下一階にあると思います」

「ありがとうございます」


 ヒナノはペコリ、とお辞儀をして教えてもらったエリアへ向かう。

 ちなみにとって来いと言われた本は、幻の生き物目撃者インタビュー、というものだ。なんか日本にもUMAとかの雑誌ってあった気がするけれど、それと似たようなものだろうか。

 ヒナノは職員専用エリアに入り、言われた本を探す。

 職員専用エリアには赤色の照明が薄く灯っているが、大変本が探しにくい状況である。

 こんな字が読みにくい状況で特定の本を探せってか……。


「えーっと、幻の生き物目撃者インタビュー……」


 いや、これ見つからないよね?

 地下の広さはおよそ、テニスコート十面分。床から天井までそびえる本棚に、ぎっしり詰まっている本。本棚と本棚の間は二メートルくらい。


「一体何冊あるんだ……」


 これはやみくもに探しても仕方ない。

 とりあえず、このフロアの地図を探さなければ。ヒナノが辺りを探すと、入り口の左手奥の壁に大きな紙が貼ってるのを見つけた。照明が暗いためここからでは何と書いてあるかはわからない。


「あれが、地図かな……」


 ヒナノが壁に貼ってあるポスターに向おうと数歩ほど歩いたころで、壁際に設置されていたガラスケースがあるのを見つける。そこには一冊の本が展示してあった。


「わざわざディスプレイしてある……」


 ただ、こんな暗い部屋でこのように飾っても誰も目にとめないのではないだろうか。

 ヒナノはその本のタイトルを見て、絶句する。

 そこに置かれていた本のタイトルは「竜と守護者」であった。またなにかおとぎ話の類だろうか。


「竜か……」


 竜と呪い。直接関係があるのかはわからない。でも、ルミエラ様が竜の存在を信じているのなら、それは呪いが関係してるんじゃないかなとなんとなく思っている。ルミエラ様にかかった呪いを解きたい。大それた考えだということはわかっている。ガリバーさんだって無理だろうって思っているし。でも、二十代前半で死んじゃうなんて。もっとやりたいことかあるだろうに、悲しいではないか。


「でも私じゃ無理だよね」


 現実を見ればそうだ。ヒナノは元の世界の帰れない。ルミエラ様の呪いは解けない。これが現実なのだ。ヒナノたちがいる世界はおとぎ話の世界ではないのだから。

 ヒナノはガラスケースの上ぶたを開き、本を手にとった。結構重い。どうやら、パピルスの本ではなく羊皮紙のようだ。表紙は傷だらけで、ところどころ茶色が剥げて薄くなっている。ヒナノは表紙を開いた。


 『竜と守護者』と再びタイトル書かれているが、著者の名前は書かれていない。

 ヒナノはページをめくる。目次もなくいきなり本文から始まった。


――この世界の竜について。この世界には六体の竜がいると言われている。リオワノンには破壊の力を司る黒竜コクリュウが、レトヴィオには地を司る紫竜シリュウ、レジドラには火を司る紅竜コウリュウ、エルワスには水を司る碧竜ヘキリュウ、ナウネには風を司る雪竜セツリュウ。そしてこの五体の竜を束ねる、守護の力を司る聖竜セイリュウ。竜の寿命はいまだ定かではないが、そこらの地上の生物と比べると大変長いことだけが分かっている。そしてそれぞれの竜には対となる存在、守護者なるものがいる。元は人間、竜と契約と交わしたときに、竜の力により、外見の成長は止まり、不老となる。しかし不死というわけではなく、次世代の竜の成長を見届けたとき、その命は尽きる……


「……これも架空の話?」


 続きが気になるところだが、ガリバーさんの本も探さなければならない。ヒナノは壁に貼ってある、フロアマップを確認し、幻の生物の本棚を探すことにした。

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