表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

教室の片隅で、僕は世界を救うんだ。

作者: あっさん。

たとえ魔王と呼ばれても。という作者が書いている小説に呼ばれた勇者の一つの話。

ざわめく教室は今昼休みの時間。

手に持った小説を広げれば、退屈な休み時間が一気に異世界へと変質していく。

つまらないざわめきは異世界の街のざわめきへ。

退屈な時間は世界を救うための尊い時間。

意識をこの下らない世界から異世界に繋いでいく。

響く愚民共の笑い声などもう耳に届かない。


僕はどこまでも自由で。

右手に剣を。

左手に魔法を。

世界を救う旅を歩む。

右を向けば引っ込み思案の可愛い聖女がいて。

左を向けばいつも小言を言いながらも背後を守ってくれる剣士がいて。

そうそう、忘れてはいけない格闘家と無口な魔法使い。

皆僕の大事な旅の仲間達がこんなにいるんだ。


勇者である僕は世界を救うためにこの世界に呼び出された。

何が何だか分からない僕を第三姫が優しく教えてくれて。

それでも戸惑う僕は世界を救う覚悟何て出来ていないまま、歩き出し、色んな仲間に出会って成長していく。

勇者という肩書で押されていた僕自身が、人を守るのが勇者だからと立ち上がり人々を救っていく。


今日の続きは確か、僕の仲間の魔法使いが最大魔法を敵の四天王の1人にぶつけるところからだったっけな。


ページをめくる。


「っ…!」


苦鳴をあげそうになった口を袖で塞ぐ。


まさか僕の仲間の魔法使いの魔法が四天王に効かず、逆にその魔法を逆手にとってやられるとは。

勇者の剣で斬りかかりたいところを堪える。

僕の仲間なら負けない、死なない!

そんな気持ちが僕の心を守る。


視線は文字を追う。


思った通り魔法使いは裏の裏を読んで更なる魔法を駆使した。

それに伴い、心強い剣士が走り出し。聖女は回復魔法を紡ぎだす。

ここまで来れば勝ち確だ!


高鳴る鼓動を搔き消すように鐘の音が鳴る。


「…ちっ」


隣の席の奴にも聞こえない様な小さな舌打ちをして、世界を救う勇者家業は終わりを告げた。


脳内で先程の先頭の復習を行う。

どの動きが良かったか、悪かったか。

僕自身が作者だったら…と思考は行きかけた時に、当てられた。


「はい、では、次の行の文を読んでみろー」


たくっ、つまらないことをさせる。

僕が勇者ならお前は絶対に救わない。

勇者である僕の足にしがみ付くお前(現国教師)程度踏みつけてやる。

歯噛みしつつ、示された行の文を読み上げていく。


「お前の様な勇者は====があってよいな」


脳の奥で暗い暗い声が聞こえた。

ハッと気づいて周りを見当たすと、自分以外の空席が目立つ教室が広がっていた。

教壇と黒板の間には白い少年が立っていた。


「ねぇ、世界を救ってよ」


無邪気に紡がれた言葉。

異世界を夢想する少年は自分自身で無双する世界を夢見た。

そんな平凡な青年は震える唇で言葉を紡ぐ。

やっと小説で読んでいた主人公に自分はなれるのかと歓喜に振るえた。


「あ…ぁ、世界を救ってやるよ」


その言葉に白い少年は邪悪な笑みを浮かべた。


「勇者希望がご入場でーす♪}


ページは捲られた。

また一つの物語を作られる為に。


ーーーーーーー


彼が消えた教室での異変はない。

存在感のない彼が消えたとて、その世界の歯車は変わらない。

その世界の神が歯車が変わることを許さない。


消えても問題ない、小さな小さな歯車。

その小さな歯車を我等は奪い構築していこう。

そしていつかその歯車で―――――を再構築してみせよう、


仮面の男はほくそ笑む。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ