第4話 人には人の事情があんの!!
第4話です。読んで頂けたら嬉しいです。
「失礼しまーす───。」
反応は無い。出払っているのだろうか。
「俺がやるか。」
手当てと言っても、氷の枕を用意してベッドに横にさせる位しか思いつかないが───。
その時不意に、制服の裾を握られる感触があった。またあの馬鹿力だ。
「お、起きたのか。大丈夫か?」
平静を装い彼女に聞いてみる。
「その。───さい。」
「何だって?」
「ごめんなさい───。」
消えそうな声で、彼女は俺に謝罪してきた。
「あの、急に抱きついたりして、ごめんなさい。」
彼女なりに悪気はあったのだろう。
「ああ、もう気にしてないよ。」
彼女はパッと明るい顔になった。
「あの、わ、私の事。覚えてない───?」
ん?何の事だろう。俺は昔この子とあった事が?
「ごめん、誰だっけ?」
やはり思い出す事は出来なかった。
「いや、覚えてないならいいの───。」
そう言う彼女はとても悲しそうだった。悪い事をしたかな?
「そうか、すまんな。」
だが、思い出せない物は仕方ない。とりあえず謝罪しておく。
「ところで何で俺に抱きついてきたりしたんだ?」
さあ、どんな答えが返ってくるのか。ずっとこれだけが不思議だった。
「私───。」
ゴクリッ。唾を飲む。
「あなたの匂いが好きなの。」
俺はあまりの想定外な返事に固まってしまった。俺の匂いが好き?え?は?何だって?
「に、匂い?それはどういう───?」
「言葉の通り、あなた特化型の匂いフェチなの。」
そう言って彼女は顔を赤らめた。
何だよ特化型って。随分と限られたフェチだなおい!!
色々と訳が分からん。
「だから、あなたに折り入って相談があるの。」
相談だって?
「何だよ相談って?」
「須藤君。私にあなたの匂いを定期的に吸わせて欲しいの。」
「え、無理。」
いや、無いわ。流石に無いわ。
「お願い!1日5回までで良いから!」
「おいコラ、俺の匂いをタバコみたいに言うな。」
「お願い、私あの匂いが無いと生きていけない!!」
何故そこまで俺の匂いにこだわるのか。全く理由が分からない。だが、周りに変な目で見られるのだけは避けたい。
「はぁ、無理なものは無理だ。諦めてくれ。」
「ウッ───。分かった、今日は本当にごめんなさい。教室に戻って良いよ。」
「あ、ああ。お大事に。」
まあ良いなら良いか。教室に戻るか。
俺は不思議な罪悪感と共に教室へ向かった。
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