一
突然だが剣と魔法、それに勇者と魔王が居るファンタジーな世界にヒトとして転生した。
チート?んなもん知るか。
こっちが知りたいくらいだ。
とりあえず、判る範囲で置かれてる状況を把握しよう。
身体、五体満足あるヨシ。
家庭環境、両親はいるな。村暮らしだが多少裕福よりぽい。ヨシ。
能力、一般人レベル普通だヨシ。
これは運がいい。チートなんて畑に置いてきたから身体や環境は何より重要だ。ファンタジー世界なせいでちょっとしたことでもここでは命取り。
これなら生き残る可能性を見出だすことが出来そうだ。
……と言うわけで生まれてから三年、俺は羞恥に耐えながらが魔力を鍛えた。
やってることは、魔力枯渇になるまで魔法を使う→休む→魔力枯渇になるまで魔法を使うの繰り返し。
魔法は魔力と呪文を覚えていれば誰でも使える便利なものだ。
ヒトの大半はおおよそ5歳くらいの年齢になると理由は解らないが魔力の成長が止まる。
だから、それまでになるべく鍛えないといけない。
鍛えてる途中、何度か死に掛けたが死ななきゃ安い。
つまらないことを繰り返してようやく三年が経過し、走れる身体になったので次は闘気を開花させるために日中走り続けた。
闘気は闘う者なら誰しもが持っており主にデメリットなしで身体能力を伸ばすことに長けている。
しかし、知覚して扱うのは一握りだけ。大半は無意識に使っていることが多い。
欲しいもので魔力か闘気かと聴かれれば間違いなく闘気と答えるだろう。
しかし魔力と違い、自力で鍛えることは出来ない。闘い続けることによる経験の蓄積、実力の向上に伴って成長するのでいつか来る時が来るまで、身体を鍛えるしかない。
……ああ、早くこの地獄のような生活から抜け出したい。
***
アークは自慢の息子になるはずだった。
生まれた時は祝福した。自分たちの初めての子供だ、俺たちのようにきっと大物になるに違いないと。
けれど、その夢はすぐに打ち砕かれることになった。
生まれた時から身体は弱く、少し走っただけで倒れる。
頑張ってるところを努力を見せて欲しい。それだけでいい。
けれど、身体を鍛えようと思ってもやる気を出さない。叱ろうとしても妻のアイシャが庇う。
「クルス大丈夫よ、アークはこれからだわ」
「これからって、それはいつになるんだ?」
「?これからはこれからよ」
何を能天気に言うんだ。怒鳴りそうになるが抑える。
妻は諦め