表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/11

初恋

 私の初恋だった。

 いや、現在進行系で初恋だ。


 最初は何となくで始めた地下アイドル。

 ファンなんてものはいなかったし、モチベーションも続かなかったから辞めそうになっていた。


 そんな時に現れたのが伊織くん。

 どんな時でも私たちのライブを見に来てくれる。


 このときから私は伊織くんのことが気になり始めたのかもしれない。


 でも、好きになった時のことは今でも鮮明に思い出せる。



◇◆◇◆



 私たちにもファンが増えてきたな。

 今日のライブも楽しかったぁ。


 家に帰宅中、私は今日のライブを振り返っていた。

 今日もあの人来てたな。髪の長い男の子。

 男の子といってもたぶん同い年くらいだろうけど。


 私たちのライブに毎回来ているからというのもあるし、とても顔が美形だったから覚えている。


 私の第一号のファンだ……って自分で言うと照れくさいな……。


 すた、すた……


 あれ?後ろから誰かが。


 少し薄暗く人通りが少ない道。


 ちょっと怖いなぁ。


 でも一般人かもしれないし、走って逃げるのも……。


 あ、次で曲がろう。


 ……うそ、着いてきた。

 いやでもたまたまっていう可能性も……。


 少しスピードを上げよう。


 すたすた……


 こ、これってストーカー?!


 確実に追われてる。


 心臓が暴れ、暑くもないのに変な汗が止まらない。


「ね、ねぇ」


 後ろから低い声がする。


「……」


「無視しないでよぉ」


「……」


 怖い!逃げないと!


「逃げないでぇ」


 ガシッ


「キャッ」


 腕を掴まれ無理やり後ろに振り返らされる。


 そこには、鼻息荒く笑う小太りの中年男性がいた。


「きみぃ、星奈ちゃんだよねぇ。ぼ、僕お金いっぱい持ってるんだぁ。だから僕と良いことしなぁい?」


「ひぃ」


 私の身体をなぞる嫌な視線に身体が竦む。


 どうして私ってバレたの?!今サングラスとマスクをつけているのに!


「じゃあ行こっかぁ」


 無理やり腕を引かれる。


「た、助けてください!!」


 私は思いきり声を出す。


「こ、ここは人通りがないから。へへ、誰も来ないよぉ。星奈ちゃんがここまで誘導したんじゃないかぁ。

 僕誘ってるんだと思ったよぉ」


 冷静を欠いていてわざわざ自分から人通りのないとこに来たんだ……。


 もう、ダメだ……。


「その手を離せよ。嫌がってんだろ」


「え?」


 中年男性の後ろから声がした。


「誰かなぁ?僕たちは同意の上でしてるんだよぉ?」


 ち、違う!

 そう言いたかったけど恐怖で声が出ない。


「絶対違うだろ」


 中年男性の後ろから男の子が歩いてくる。


 背丈はそこまで高くない。170cmくらいかな。

 そして、特徴的なのは目元が隠れる程の長い前髪。

 たぶん高校生だと思う。


「えへ、僕の邪魔をすると痛い目見るぞぉ?」


 明らかに喧嘩慣れしていなさそうな風格をした男の子を見て中年男性が脅しにかかる。


「はぁ……」


 男の子はため息を吐いて前髪をかき上げ、ゴムで……え?


 あまりにも見覚えのある顔で注視してしまう。


「もう一度言うぞ。その手を離せ。痛い目見るぞ」


 その男の子が私の第一号のファンだったからだ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ