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告白2

 伊織先輩が助けてくれてから、それからいじめはなくなった。


 そして、花音に相談して二人で伊織先輩を落とすことにした。

 花音はよく私と伊織先輩が二人きりになれるようにセッティングしてくれた。


 まず、自分の容姿を磨いた。メガネを外し、髪のケア、肌もきれいにして、適度な運動で身体を絞る。

 そして、コミュ力も磨いた。苦労したけれど今では普通に会話できるようになった。


 効果は実感している。同学年の男子に告白されるようになった。一週間に一回程度に。


 だから告白しようと思った。

 思ったんだけど、肝心な勇気が出なかった。


 断られると思うとそれだけで身体が竦んだ。


 幸い、伊織先輩は高校入ってから前髪で顔が隠れているためたぶん周りの女子は気づいていない。伊織先輩がイケメンだということに。

 だから、ひとまず誰かに先を越される心配はないと思っていた。


 でも違った。誰かが伊織先輩に告白したらしい。

 今の立ち位置は全然安全なんかじゃなかった。いつ先輩の顔がバレるか、いつ先輩の優しさに女子が惚れるのか分からない。


 怖かった。

 伊織先輩が他の人のものになると思ったら。

 嫌だ。先輩は私だけの先輩でいてほしい。


「萌香ちゃん、そろそろ離れてくれない?」


「伊織先輩」


「ん?」


 伊織先輩の前髪を上げる。


 伊織先輩の整った顔があらわになる。


 私が惚れたのは性格。だけど、伊織先輩の顔も好きだ。


 伊織先輩の存在が麻薬のように私を狂わせる。

 性格も顔も声も全てが愛おしい。


 だけどこんなにも胸の動悸が苦しい。


「好きです。付き合ってください」


 私はどうしようもなく伊織先輩に惚れてしまっている。


「……え?それは、異性の意味で?」


 伊織先輩が驚いた表情を見せる。


「はい。助けられた時から伊織先輩のことが好きでした」


「……助けたのは花音の親友だったからだよ。違ったら助けてないと思う」


「それでいいです。それでも、助けてくれてありがとうございました。大好きです」


 手が震える。

 伊織先輩の顔がまともに見れない。


「……ごめん。付き合えない。

 俺は萌香ちゃんを異性として見ていなかったから」


 部屋が沈黙に包まれる。


「……あ」


 ダメ、止まって!溢れないで!


「本当にごめんな」


 苦しそうな表情をする伊織先輩。


 違う。こんな表情をさせたかったんじゃない。

 でも両目から溢れる涙が止まらない。


 これで、私と伊織先輩の関係は終わってしまうの?

 私も伊織先輩も忘れて普通通りの関係とはならないだろう。


 嫌だ。ずっと伊織先輩の傍にいたいよ。


「……私、諦めませんから。今は異性として見れなくてもいいです。でもいつか必ず振り向かせます。その時は私と付き合ってください」


「分かったよ。萌香ちゃんを花音の親友じゃなくて一人の女性として見るよ」


 覚悟しててくださいね伊織先輩。すぐに振り向かせてみせますから。


 私の初恋は(にが)くて(くる)しいものだ。

 でも、最悪なんかじゃない。最高の初恋だ。



 

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