解決
どうしてここに?とか、そんな疑問より、安心感の方が強かった。
「ぷ……ふふ、あははははっ」
「キャハハハハッ」
どうしてか、二人が笑い始めた。嘲りが混ざった嫌な笑い声だ。
「なに、こいつ。超ブサイクじゃんっ」
「ザ・陰キャって感じぃ」
酷い!どうして無関係の人にもそんなこと言えるの?!
「止めて……止めてッ!!」
自分が出したとは思えない程、大きな声が出た。
「なに?」
「は?」
二人に睨まれる。怖い……だけど、逃げたらダメだ!
「伊織さんを悪く言わないでッ!」
「はあ?」
「何口答えしてんの?ムカつくんだけど?」
二人が私に近寄り腕を振る。
殴られる!
「っ……」
目を瞑っているけどいつまで経っても衝撃は来ない。恐る恐る目を開くとそこには掌を受け止める伊織さんの姿があった。
「伊織さん……っ」
「これ持っててくれる?」
そう言って渡されたのは伊織さんのメガネだった。
「え、うそ?」
「い、イケメンじゃん」
二人が急に静まる。
「二人は花音ちゃんの何が気に入らないんだ?」
「だってぇ、ブサイクだし、いっつも勉強してるしぃ、面白くないんだよね」
「そうそう。何言ってるか分かんないから会話にならない」
そんなこと分かってるよ。でも仕方ないじゃん。
「そうか」
「ねえねえ、それより連絡先交換しない?」
「ずるい、私も私も!」
二人はもう私に興味を失ったようだった。
何とかして伊織さんと繋がりたいみたいな感じだ。
「触んな」
低い声が響く。
「「え?」」
「自分の欲求を満たすために他人をいじめるような奴に連絡先なんて死んでも教えん。
いいか?次萌香ちゃんや他の人に手を出したら潰すからな」
伊織さんの背中しか見えない私には分からなかったけど、この時の伊織さんはどんな表情をしていたんだろう。
二人が涙目になっていた。
二人は走って去って行った。
「だいじょ――」
伊織さんが振り返り、私に声を掛けてくれているけど無視して私は伊織さんに抱きついた。
「……怖かったよな。ごめん、遅くなって」
「そんなことないです。ありがとうございます。本当に助けてくれてありがとうございます」
涙が溢れた。
伊織さんはシャツが濡れるのも無視して、私の頭を撫でてくれた。
私、伊織さんのこと好きだな。
優しいところ。かっこいいところ。不安な時励ましてくれるところ。いつも一緒にいてくれるところ。助けてくれるところ。
過ごした時間は短いけど、この気持ちはきっと本物。
この容姿も性格も全部仕方ないと思っていた。
でも、変えよう。そして、変えることができたらその時に告白しよう。